パンデム・魔族に関する設定
□パンデム
アースが次元開発の中で最初に遭遇した文明。ヒト族に近い形状に、アースでも見られる動植物が混ざったような容姿をしている”魔族”の領域。魔族は更に多数の種族に分けられ、その総数は100を超える。アースが3つの次元(現リレイク)を切り離したため、パンデムが最も連結次元が多い領域となっている。
□魔族
魔族の最大の特徴として、『肉体寿命が存在しないこと』が挙げられる。時間の感覚がヒト族と比べると10倍ほど遅い上に、肉体の年齢は精神の在り方によって変化する。例えば子どものような思考のままであれば子どもの姿、老練した精神であれば年老いた姿になる。しかし一方で『欲望が潰えた時に命も潰える』という性質も持っており、欲望が消えてしまえばどれだけ若くても死を迎えることになる。また生物ではあるので肉体が破壊されても死亡する。
(ただしスライム種やゴーレム種のように核が破壊されない限りは再生が可能であったり、アルラウネ種のように自身の記憶などを種の形で保存したり、ゴースト種のようにそもそも肉体が無かったり、一概にそうとも言えない種族もいる)。
魔族は全体として好戦的な者が非常に多い。魔族世界では戦いにおける力が強い個体が上に立って権力を行使することが是とされているためである。つまり肉体と欲望のある限り続く生の中で、自身の欲望のために生きることが魔族の本質であり、それを体現する唯一にして絶対の方法が戦闘行為で己の力を示すことなのである。このため戦闘を行うこと自体が魔族らしさと言える。
ただし現在は400年前から300年前に掛けて起きた長期間の戦争(パンデム事変)に辟易して安定した生活を求める傾向が強くなっており、また次元開発による資源や土地の充実もあって300年前のアースとの接続した時ほど”己の力を示すこと”を求めない者が多くなってきている。
とは言え”力が強い者が権力を持つ”というルールを変えようという気は全くなく、例えばパンデムの支配構造の頂点である7つの魔神の座は、現在も「魔神足り得るだけの力を持つ者」に限られている。更にアースの先進文明の技術により自身の能力をシミュレータ上に再現して数千回に及ぶ1対1の戦闘を行わせることで序列付けを行うなど、以前よりも強化された部分さえもある。
□魔王,魔神,魔将
前項でも触れた通りパンデムの権力の頂点は魔神と呼ばれる者達である。魔神となるには「魔神足り得るだけの力を持つ者」と認められることが必要なので、席は7つあるが空位となることもある。魔王は魔神の代表として法の制定などは行うが、基本的には他の魔神達とは対等な立場にある。このため魔王という位を求める者は少なく、むしろ対等な立場でありながら一癖も二癖もある他の魔神達をまとめなくてはならないため、嫌厭する者さえいる。300年前に終結した魔神達の争いも魔王の座が狙いではなく、空位だった2つの席の魔神が治めるべき領土を巡る問題からであった。
ただし魔王は"魔族の在り方に対して強い影響を持つ"という権能を有する。当代の魔王はサキュバス族という女性のみの種族で、種族の特徴として女性が男性を組み敷くことを是としている。このためその理念に沿うように、現在のパンデムでは女性が男性より強い戦闘力を持つ傾向がある。
魔将は魔神の配下として大きな権限を持つ者達で、前述のシミュレータで算出された序列の上位100名のうち魔神を除く93名が任命される。ただし魔神達と違ってその立ち位置は常に入れ替わる可能性があり、下位10名ほどは数年単位で変わってしまうため顔ぶれは安定しない。
また魔将の中でも魔神から領地(領海)を与えられている者とそうで無い者に分かれる。魔将の中でも上位にいる者ほど領地を得ていることが多いが、あくまで「すぐには魔将の座から落ちない」という理由だけである。魔神が領土を任せるかどうかは強さとは別の要因も関わってくるため、強ければ与えられるというわけではない。ただし領土を持たない者は最低でも魔神直属あるいは領土を持つ魔将の副官の地位を保証されている。
ただ魔神同士の争いも無い今の時代において、与えられた領土の運営やその補佐こそあれど魔将の仕事はそれほど多くはない。大概は自由気ままに過ごしているが、中にはより上位の者の身の回りの世話係をしている者もいる。
□魔法
魔法は魔族における最上位のルールであり「魔族の法」である。その実態は超大規模法術であり、魔族に制約と恩恵を与えるための「世界との契約」とも言える。これに背くことは魔族である限り許されないが、例外として魔法の制定や管理を行う立場にある魔神や魔神から任命された魔将については、法を犯した者に刑罰を執行する場合において適用されない。
魔法の例としては「徒党を組んで個を攻撃してはならない」「強い者が略奪自体を目的として弱い者を攻撃してはならない」などがあり、あくまでも”魔族の今後”を見据えて魔王が制定していくものである。
□真名
魔族は生まれると同時に真名を得る。これは魔法で定められたシステムであるため、世界から本人に与えられるものである。真名は持ち主への絶対命令権であり、忠誠を誓った相手にのみ伝えることができるが、この関係が解消されると相手の記憶から抹消されるため、基本的には忠誠の証として伝えるという使われ方をされる。また真名は持ち主本人の口からのみ伝達され、いかなる方法でも他人から伝えることはできない。更に個の優劣を決める決闘では真名による命令権は効力を持たない。
これらの規定により真名は普段遣いできないので、魔族は真名とは別に普段遣い用の呼び名を持つ。このため魔族は自身の名前(呼び名)に対する拘りが薄く、一生のうちに平均して3回ほどは呼び名を変えるとされている。
また魔神となった者達には就いた座に応じた呼び名を持ち、魔将となった者は仕える魔神から呼び名を与えられる仕組みになっている。なお魔神の地位名や魔将の呼び名はアースの物語に由来したもので、制定されたのはアースと繋がって少し経ってからと歴史が浅いが、元々呼び名に対する拘りが薄い魔族は広く受け入れられている。
□魔王軍
元々はエデンとの戦争の際に編成されていた組織で、総帥は魔王である。なおギルドとしての魔王軍はその正式名を「魔王軍第一魔界セードル師団レンジャー統括大隊」といい、魔族以外が入ることができる唯一の魔王軍部隊であるなど極めて特殊な存在ではあるが、あくまで魔王軍の一大隊に過ぎない。また指揮系統を明確にするため魔王がいる第一魔界の所属で統一されているが、当然ながら第一魔界以外にも支部が存在しており各地から上がってくる依頼に対応している。
□魔族の分類
魔族はヒト族や天使族などと同列の区分で、前述の通りヒト族と比べると成長速度が遅く肉体寿命を持たないという特徴がある。魔族はこの区分の中で、肉体的特徴によってエルフ種やマーフォーク種のように分類される。また同じ種の中でも生活環境などによって肉体的な違いが出ている場合がある。このような種族では肉体的特徴ごとに更に小分けされて「○○種△△」と種名の後に付け足されている。ただし同じ生活圏にいながら突発的に肉体面に差異が出る者もおり、このような者は「変異体」として分けられる。魔族が強さを求める故か、変異体は総じて種族の中でも極めて強力な個体となることが多い。
また魔族の婚姻は異種間で行うと子ができないことがあるなどの問題が生じるため同種族間で行われることが多いが、例外的にサキュバス種とインキュバス種はどの種族とも子を作ることができることから、女性のみの種ではインキュバス種を夫を迎えるのが一般的……というのが以前の常識であった。現在はアースから持ち込まれた技術でどのような異種間同士でも、更には同性同士ですらも子を為せるようになっているため、この風習はなくなりつつある。
魔族は種族ごとに生活圏を分けているが、元々街を形成して種族を超えて一緒に暮らすことが多かった獣人系の魔族を中心に、種族の別け隔ての無い都市の構築が進んでいる。またヒト族と婚姻した魔族はヒト族の生活に合わせて街に移住する場合が多く、300年前と比べると確実に種族間の境目が薄れてきてはいる。
魔王もこの流れを推奨しており、それに合わせた魔法の整備が成されていることもあって、特にここ数百年ほどは種族の繁栄は勿論のことながら、魔族としての繁栄を考える者が増えてきている。




