エーテルと法術
□エーテル・法術の一般知識
体内から空気中まで汎ゆるところに存在する仮想物質。実体として存在しているわけでは無いが、エネルギー源として利用することが出来る。その性質から水・火・土・木・光・闇の6種類の元素(属性)に分けられるが、あくまでも性質から判断した仮称に過ぎない。
空気中などに存在しているエーテルは、ほとんどが全ての元素が等しく混ざり合って不活性化した状態になっているが、周囲の環境(森、火山など)によっては若干ながら一部の元素が多く存在している場合もある。
使用の際は大半の不活性化状態のエーテルを、元素ごとに分解して用いる。エーテルから取り出したエネルギー源を用いて体外に何かしらの現象を引き起こすことを法術と呼ぶ。なお体内のエーテル分解経路は循環器に沿って存在しているとされるが、解明には至っていない。
法術やエーテルは次元開発が始まる前のアースでは未知の存在であったが、パンデムと繋がり魔族と交流を持つ中でレンジャー達に存在が知られるようになり、法術使いの領域であるイルゲイトと繋がったタイミングで広く一般化されることとなった。
ターレントのモンク族の間ではエーテルは法術という形では使われていなかったが、身体からエーテルを放出して周囲の空気を擬似的に固化し、それを身体と共に動かすことでパワードスーツのように用いるという方法で使われていた。
近年ではアースのヒト族の間でも法術は広まってきており、発熱などの非常に簡易で危険の少ない法術であれば、講座に通う程度で習得することが可能である。
□元素 (属性)
6つの元素(属性)には下記の性質がある。
・水 : 流動 冷却
・火 : 破壊 加熱
・土 : 凝集 沈滞
・木 : 結合 賦活
・光 : 分離 理性
・闇 : 同化 本能
また、これらの性質から図のような分類も可能である。
□制約と機械制御
厳密に言えば異なるが、基本的にはエーテル=エネルギーと考えても問題はない。このためエーテルを大量に使えば、その分だけ強力な法術を使うことができる。ただしエネルギーである以上は一度に過度に用いようとすると制御不能に陥ったり、暴発する恐れも高くなる。
このため大出力が必要な場合は、効果の一部に制約を掛けることで真に欲しい効果を高め、出力を抑えつつ強力な法術を用いるという方法が取られている。
また生体が限界を超えた出力を行おうとすると、体内の分解を行う器官に支障をきたす(この際の症状から、エーテル分解経路が循環器に沿って存在していると考えられた)ため、エーテルの分解から法術の発動までの流れを機械で行う技術も発明されている。
近年は機械技術の発展もあって安定的に制御出来るようになっているため、産業分野だけでなく一般家庭向けの汎用機器にも取り入れられるようになってきており、エーテルや法術を利用した様々な製品で溢れかえっている。
最もメジャーな産物と言える収納端末は、空間を拡張する法術と収納した物を取り出す操作を機械制御で行えるようにしたものである。
また最初に登場したビームサーベルは、取り込んだ空気分子を法術で超振動させて刃とする仕組みになっている。
材質面では鉄や銅など金属は全般的にエーテル伝導率が高いことが知られているが、その中でも(次元開発以前からアースに存在していたものでは)銀は特に高い。このため一時は、銀の値段が金を上回ったこともあった。
なお次元開発以降にアースにもたらされた金属では、銀以上に高いものとしてミスリル、更にミスリルよりも高いものとしてオリハルコンが存在している。
なおミスリルは貴重ではあるものの、特にパンデムやイルゲイトでは採掘場が幾つもある程度には採れる。しかしオリハルコンは極稀に拳程度の大きさの塊が見つかる程度であり、発見場所の脈絡も無いため、需要も相まって極めて高価な代物となっている。
□エーテル体
大規模な機械による制御に加えて、非常に強い制約を加えることで実現した、レンジャーを中心に用いられている仮の身体。
場所は勿論のことながら次元を超えた転送が可能であり、転送先でエーテルを用いて作成した完全なコピーの身体に対して、機械で遊離させた意識を移して運用されている。
エーテル体が破損して維持が困難になると意識が強制的に肉体へと帰還させられるが、これを行うとしばらく肉体の制御ができなくなる。またただのコピーなので痛覚などのシャットアウトは出来ていないため、怪我をすると普通に痛い。
ただしエーテル体の場合、エーテル保有量の多い植物であるエーテル草から作られるエーテル修復薬を用いることで傷の回復を行うことが出来る他、法術による回復も可能である。なお肉体でこれらを用いても、痺れが取れる程度の効果しか得られない。
□法術における3要素
・出力
最も重要な要素。体内で分解してエネルギーとした後、それを一度にどれだけ放出できるかの水準。つまりこれが高ければ高いほど、強力な法術を用いれることになる。これが高くなければ、下記2つがどれだけ高くても法術使いになることは不可能である。
個体差が大きい他、種族によって極めて大きな差がある。平均的にはメイガス族が断トツに高く、次点で魔族と天使族、次にヒト族とドロイド族、モンク族はこれが非常に低いため法術を用いることは殆ど無い。
また魔族は種によっても大きく異なり、最上位の妖狐種はメイガス族をも凌ぐ程であるが、ゴブリン種やオーク種などはモンク族などと同じレベルである。
レンジャーのように戦闘などで用いる場合には、体内の出力だけでは足りない場合がほとんどであるため、ロッドやオーブなどを増幅器として用いる。
・保有量
体内にどれだけのエーテルを抱えているかという要素。後述の回復力との兼ね合いもあるが、連続してどれだけ法術を用いることが出来るかというところに結びつく。基本的には身体のサイズに依存する。
なお身体の中では特に毛に多く含まれやすいことが知られており、メイガス族の男がヒゲを生やしていることが多いのはこのためである。
・回復力
使用した体内のエーテルをどれだけの速度で回復できるかという要素。回復力が高ければ、保有量が少なくてもどうにかなる場合が多い。基本的には呼吸によって回復していく。また空気に触れている肌の他、飲食による吸収も回復に繋がる。
□エーテル・法術に関する学問
イルゲイトのメイガス族を中心に、エーテルや法術については学問として熱心に取り組んでいる者が多い。この学問は大きく3つに分けられている。
・基礎法術学
使える法術の種類を増やしたり、より強力な制約を編み出して目的の効果に集中させる方法を考えたりと、純粋に法術を研究する学問。イルゲイトの各地に散らばる工房で日々研究が行われている。
・応用法術学
法術をどのように用いるかを研究する学問。イルゲイトの最重要都市であるレントールを中心に、ギルド『法術会』などが組織だって取り組んでいる。
現在はアースやメルカドルの科学・機械技術を取り入れた”機械法術”が最も活発であるが、パンデムで発展している”戦闘学”の一部もこれに含まれている。
・エーテル学
法術を研究対象とする他の2つと違い、エーテルそのものを研究する学問。イルゲイトではあまり発展はしておらず、中心はアースやパンデムにある。
”戦闘学”のうち装術による身体強化はこちらに含まれている他、レンジャーが用いるエーテル修復薬などはこの学術の産物である。
□装術
体外に何かしらの現象を引き起こす法術に対して、エーテルを体内に通して身体能力の底上げをしたり、体や物の表面に展開して身体強度を向上させたりする手法を”装術”と呼ぶ。
この装術のおかげでレンジャーの間では、エーテルが広まる前までは過去の遺物とされていた剣やランスなどの近接武器が銃などの近代的な遠距離武器と並んで使われている。
装術は現時点で機械による制御は実現しておらず、生物が自身の身体に対して使うことのみが可能である。適正は種族によって大きく違い、戦闘を生き甲斐としてきた魔族や狩猟生活を送ってきたモンク族は生まれたばかりでもある程度使える程、ヒト族などは特別な訓練を経て使えるようになる。エーテル分解器官が発達しているメイガス族は、訓練しても身体を守る最低限しか使えない。
危険と隣合わせのレンジャーは装術による防御を無意識下でも使えるようになることが最低条件であり、レンジャー養成所の1年目の科目は半分以上が装術の訓練となっている。




