8 ゼロとエリウスの秘密
ゼロの体温が感じるほど強く身体を寄せられているレインはゼロが自分を殺そうとするのか少し不安があった。
なぜなら、自分がゼロにとって邪魔者でしかないと思っていたからだ。
「ふ、我がそれに従うと思っているのか?」
「あなたさまにはエリウスは必要でも、その女は必要ない。そうでしょう?」
「そうだなーだが」
ゼロは一気に魔力を放出させて一瞬で魔王の姿になり結界を吹き飛ばして元の洞窟前に空間が戻った。
「悪くはない女だ。エリウスが気に入るのもわかる」
元の空間に戻ると同時に宿に残してきたはずのゴンがパタパタと飛んできてレインの肩にとまった。
シルバーは苦虫を潰したような顔をしてレインを睨んでいる。
「ははは、わかりました!その人間の女を抱いたのですね。エリウスがその事を知ればさぞ傷つくでしょうね。きっとあなた様との融合も拒むに違いない」
融合?
レインは意味がわからず首を傾げていたが、ゼロの空気が変わった。
「そいつは知らないようですね。あなた様とエリウスはお互いの存在を中和するために一緒に居ることを」
「中和って?」
レインがゼロに問いかけるとゼロは静かに答えた。
「…魔王と英雄、それぞれの存在を終わらせて自由になることだ。その為に融合する必要がある」
「魔王様、どうかお考え直し下さいませ。あなた様はすでに絶対的な力をもっています。世界を支配すれば、そんな女いくらでも自由に出来ます。エリウスを殺し世界を我ら魔族のものに!」
地面が割れ、そこから禍々しいオーラと鎖に縛られたたエリウスがゆっくりと現れた。
意識がないのか瞳を閉じて傷だらけになってぐったりしている。
「さあ、魔王様、エリウスを殺して下さい。あなた様が英雄を殺すことで魔力は更に増します」
「…」
ゼロは動こうとはしなかった。
ずっとレインを守るように抱き寄せてじっとエリウスを見ていた。
「ならば、わたくしめが処分して差し上げましよう!」
「ダメ!ゼロ離して!」
レインは慌ててエリウスを助けに行こうとしたが、ゼロは力を込めて離さなかった。
シルバーの攻撃がエリウスを貫く直前、レインの肩に停まっていたゴンがエリウスのもとに飛び立ち光の玉となってエリウスのなかに入った。
そして、エリウスの魔力が勢い良く放出され、シルバーは一瞬にして消し飛んだ。
光に包まれ鎖も弾き飛びゆっくりとエリウスは目を覚ました。
これが真の英雄の力
魔王と互角に戦える力なのだとレインは思った。
「ゼロ、レインを離せ」
「嫌だと言ったら?」
目覚めたエリウスはレインを抱き寄せているゼロを敵視して睨んでいた。
レインは完全にフォールドされて逃げることが出来ずもがいている。
「っ、融合の条件を今なら満たしている。そうだろ?」
「…ああ」
「ちょっとふたりとも、何をしようとしているんだ!?」
レインはゼロとエリウスを交互に見て話がわからないといった感じた。
そんなレインにエリウスは近づき優しく微笑み左頬を撫でた。
「レイン、頼みがあるんだ」
「エリウス?」
「わたしとゼロは生まれ変わる。レイン、キミに育てて欲しい」
「何を言ってるの?」
「我らは魔王でも英雄でもない、自由になる。悔しいがお前に任せる」
レインを抱き寄せていたゼロが手を緩めて離すとこれまでにない安らぎの微笑みをレインに向けた。
そして、エリウスとゼロはお互いに魔力を集め絡むように口づけをすると光輝き卵形の物が現れたふたりは消えた。
レインは突然の出来事になにも出来ずただ、見守ることしか出来なかった。
それから十数年が経とうとしていた。
魔王と英雄が消滅すると同時に世界から魔力が消えた。
それと同時に魔族も滅び、人間たちは人間同士での争いは所々で続いている。
そんな中、小さな田舎町で赤茶色の髪の女性が男の子と暮らしていた。
「レイン!あと5年だからな!あと5年たったら俺と結婚しろよ!」
黒髪にグリーンの綺麗な瞳をしている男の子にレインは苦笑いを浮かべた。
「ゼウス、前も言ったでしょ?私と年が離れすぎてるから無理だって。あと私より強くならないと。」
13才ゼウスはあの卵から生まれた。
まず間違いなくゼロとエリウスの生まれ変わりだろう。
魔力もなく、ただの子供としてレインはひとりで育てたのだ。
母親として育てることも考えたが、悩んだ末に育ての親として育てることにした。
俺様なところがあるが、根は優しいいい子だ。
ゼロとエリウスの記憶はまったくないが、レインへの好意だけは残っていたようだ。
「レインより強くなる!絶対惚れさせてみせる!」
「ふふ。頑張れよ」
この5年後、レインはゼウスと結婚することになった。
おしまい
☆☆
おまけ
男の子を育てるとは、なかなか大変である。
私、レインは最近少し悩んでいた。
「ゼウス、私の下着しらない?」
17才になったゼウスを疑うのはどうだろうと思ってはいたが、確実にここ半年私の下着が消えている。
最初は洗濯して干したときに風で飛んでいったことも考えたが…
「知らない」
私の目を見ようしないゼウスを疑いたくなる。
「私の目を見て答えて。私の下着本当にしらない?」
「う…」
なんとわかりやすい反応だろう。
目を泳がせ顔が赤くなっている。
年頃の息子は下着泥棒するものだろうか…将来が心配だ。
「ゼウス、何度もいうけど私たちはー」
「俺は諦めてない!」
「はぁーもう、わかったから。とりあえず下着返して!」
「う…」
渋々と下着を返してもらったがこのやり取りは男女の関係で付き合うまで続いた…
最後まで読んで頂きありがとうございました!