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6 魔女ネルシャと海

「やっと来たわね」


妖艶で美しい魔女は自室の片隅で手に持っていた小さな瓶の液体をクックッと煮ている釜戸に入れて、二、三回かき混ぜ蓋をして部屋の入り口にいるゼロに歩み寄った。


「エリウスの場所を教えろ」

「あら?いつものようにベッドの上でお話じゃないの?」


ゼロは少し目を細めて不機嫌そうな表情を浮かべると魔女はゼロの左頬を優しく右手でなぞり、誘惑をする。


「ふふ。私には全てが見えてるわ。ゼロ、エリウスは貴方じゃなくあの子を選ぶわ。それでも、助けに行くの?」

「…全て見えているのなら、愚問だろう大魔女ネルシャよ。我はエリウスがいないと何も終わらないし、始まらない」

「…可愛そうな魔王様…」


そう呟くと魔女ネルシャはゼロに深く口づけをして、ベッドの横に置いていた水晶玉を取りに行った。

両手で大事そうに持ち上げた水晶玉をジッと見つめて小さく呪文を唱え深く深く集中する。

水晶玉の中に流れる情報にネルシャは目を細めた。


「どうだ?」

「…エリウスは生きてるわ。そうね…東南の洞窟辺りね」

「東南か。わかった。」

「必ず、あの子を連れて行きなさい。そうしないと大変な事になるわよ」


真剣な表情のネルシャにゼロは黙って、部屋を出た。



それからまる1日経ち、やっとレインが目を覚ました。

麻痺の毒が体から抜けきれるまで、まだ時間がかかるらしく、ベッドから起き上がると体がフラフラする。

見たことがない部屋に誰かいないのかと、ベットから降りて部屋を出た瞬間、倒れそうになった。


「うゎ」


太く逞しい腕がレインを支えて、誰かと顔を見るとゼロだった。

ただ、レインの知っているゼロとは違いボサボサで長かった黒髪が短く切られており、前のゼロと比べて瞳がハッキリと見えた。


「ったく、軟弱だな」

「う…」


見下され、横柄な態度は相変わらずだ。


「あら?目が覚めたの?以外と早かったわね~やっぱり私の薬がよく効くからかしら」


妖艶であまりに美人な女性にレインは視線が釘付けになった。


「ふふ、私はこの屋敷の主、大魔女ネルシャよ。よろしくねレインちゃん」

「え、あ、はい。ご迷惑おかけしました」


レインはゼロから離れてお辞儀をして挨拶をした。


「いいのよ。ゆっくりしていってね。まだ毒は残ってるだろうから、ちゃんとお薬飲んでね。ゼロに預けてあるから」

「はい。ありがとうございます」


ネルシャは食事の準備をしてくれるとのことで、レインとゼロは一旦部屋に戻り薬を飲むことにした。

ゼロがレインの解毒薬を手に取り自分の口に運ぶのを見て、レインは慌てて止めた。


「ちょ!それ、私の薬だってネルシャさん言ってた!」

「あ?…あーそうだった。」


ゼロは少しバツの悪そうな顔をして薬の瓶をレインに手渡した。

「?」

レインは薬を一気に飲み、とても苦かった。


ゼロとしては、すぐにでもエリウスを助けに旅立ちたい所だったから、レインの完全回復をするにはあと5日はかかるとネルシャに言われた。


「私、大丈夫です!明日にでも行けます!」

「駄目よフラフラじゃない」

「行けます!!」


レインの必死の訴えにネルシャは呆れて仕方がないと、次の日の出発時に栄養薬を特別に準備をしてくれた。

赤い粒の錠剤で、臭いがとてもきつく体に効きそうな臭いだ。


「1日一粒だけよ。それ以上は副作用が出るからダメ」

「おい、大丈夫なのか?、これ…」


不安な様子でゼロはネルシャを睨むとネルシャはクスリと笑い


「高揚興奮効果があるから、する時に飲むのもいいかもねぇ」

「…え…」

「ふふ、レインちゃん冗談よ」


顔を赤くしているレインに微笑んだ後、ネルシャはゼロに近づきまるで恋人のように、首に手をまわしてゼロに口づけをした。

レインは見てはいけないものを見てしまったと更に顔を赤くして視線を反らす。


「ゼロさま、またいつでもいらしてください」

「…」


ネルシャが平然としているゼロから離れて、ゼロとレインはネルシャの館をあとにした。

あんな光景を見せられて、レインは少し気まずくなりながら、ゼロの後をついていく。


「あ、あのどこに行くの?」

「…東南の洞窟だ」


半日かけて南東の大陸に向かう一番近い湊町にたどり着いた。

南東の洞窟がある大陸に行くには船で行かなくてはいけない。

連絡船乗り場に向かうと、どうも様子がおかしかった。

レインは近くを通りかかった男に話しかけた。


「すみません、、何かありましたか?」

「ああ、デカイ魔物が海に出て連絡船が動けないらしい。全く困ったもんだよ、商品が運べやしない。」


教えてくれた男は商人らしくブツブツと文句を言いながら、大きな荷物も持って船着き場を出て行った。


「デカイ魔物…」


レインはどうしたものかと考えていると、ゼロはめんどくさそうな表情を浮かべた


「お前、ここで待ってろ。ちょっと片付けてくる」

「え!いや、ダメだろ!海にいる魔物だよ、泳いで行く気?」

「はぁ?魔力使えば」

「魔力使ったら、わらわらと魔物がやって来るでしょ!それにシルバーにバレてしまうかも」

「…」

「誰か船を出してくれないか探してみる。ゼロこそ、ここで大人しく待ってろ!」


レインの気迫に押される形になったゼロは呆気にとられ、大人しく船着き場のベンチに腰をかけた。

レインは船を出してくれる人を探しに港を中心に聞きまわったが、やはり魔物が出るとわかっている時に船を出してくれる漁師はいなかった。

このままでは南東の大陸には行けない。

困りトボトボと歩いていると横路から少年が飛び出してきて、レインとぶつかり、少年は派手に道に転んだ。


「だ、大丈夫?」


よほど焦っているのか、持っていたカゴを拾い急いで立ち上がろうとしたが、足首を痛めたのが体制を崩し立ち上がれなかった。

レインは少年に近づき手を貸そうとすると少年の目には涙がたまっていた。


「お願いです。こいつを助けて」


少年は持っていたカゴをレインにつき出した。

その時、少年が走ってきた方向から数名の騎士が走って来た。


「いたぞ!!」


凄い剣幕で迫ってくる騎士たちに明らかに少年は怯えていた。

レインは騎士たちと少年の間に立ち少年を庇うかたちで、騎士たちの方を向いた。


「きさま、どけ!邪魔すると容赦しないぞ!」

「子供が怯えているじゃないか。いったい何があったんだ」

「そいつが魔物を庇っていると情報が入った。そのカゴの中の生き物を渡してもらおうか」

「魔物…」


私が持っているカゴの中を覗くと確かに小さな生き物が入っており、背中に小さな羽がはえていた。

しかし、魔物というにはほぼ遠く、可愛らしい子供の生き物で、首をひねったりしてレインを見ている。


「さあ!よこせ!」


強引に奪い取ろうとする騎手達をなんなくかわしてレインはかごを開けて見せた。

しかし、かごの中は空っぽだ。


「何も入ってないけど?」

「そんなバカな?!」


再び、カゴを奪い取ろうとしたので、レインは今度はかわさずにカゴを渡した。


「勘違いだよね?」


レインはわざとらしく座っている少年に話かけると、少年は戸惑いながらも頷いた。

念入りにカゴを調べあげた騎士たちはバツの悪い顔を浮かべて謝罪もせず帰って行った。

騎士たちの姿が完全に消えるのを待って少年はレインに話しかけた。


「あ、あの…」

「もう大丈夫だよ」


レインは服の胸元から子供の魔獣をひょっこり出した。

騎士がカゴ奪う時、素早く隠したのだ。

小さなドラゴン?のような魔獣はぎゅぎゅと鳴き声をあげてレインの頬に顔をスリスリとして慣ついていた。


「こいつ、偶然拾ったんです。でも、俺じゃとても面倒みれそうになくて…お姉さん面倒見てくれませんか?」

「え!」


可愛く首を傾ける魔物に旅の身のレインは面倒を見れるのか悩んでいると、少年は深く頭を下げた。


「お願いします!!俺ん家、船乗りだけど今船出せないからお金とかなくて…」

「君の家、船乗りなの?じゃ、お願いがあるんだけど!」


レインは少年の親に船を出してもらえる様に説得してもらうことを条件に小さな魔獣を引き受ける事にした。

魔物が出る海に船を出すことを案の定拒否されたが、レインは港から見える範囲だけでいいとお願いすると了承してくれた。

レインの読み通り、その位海に出れば魔物の気配をゼロはわかり、あとはゼロがサクッと魔物を倒した事でもとの海に戻る事ができ、少年親子にも感謝された。


南東の大陸に向かう船の中、ゼロがレインの肩に乗っている魔獣を見て目を細める。


「なんだ、こいつは?」

「訳あって面倒みることになったんだ。ゴンって名前」

「ギュギュ!」


ゴンはゼロに威嚇の体制をするとゼロは指先でつついた。


「なんだか、目が気に入らねー」

「苛めるなよ…」

最後まて読んで頂き、ありがとうございます!

ゴンは小さなドラゴンのような魔獣です。私も飼ってみたいです~(*^_^*)

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