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4 追う者

ゆーくり更新(*^_^*)

「レイン。わたしはー」


ドゴーンッッ


突然、大きな爆発音が街に響き、二人の世界をぶち壊した。

煙が立ち上る方向を見るとどうやら、ゼロと別れた酒場の方向だ。

エリウスとレインは嫌な予感がして、急いで煙の元に向かうと、酒場は崩壊して、傷を負った人々と助ける人々でごった返していた。


「ゼロは…」


エリウスとレインは辺りを見回し、ゼロの姿を探すが見当たらなかった。

きっとこの騒動は何らかのかたちでゼロが関係しているのだろうと警戒していると、エリウスが魔力の痕跡を見つけた。


「レイン、こっちだ!」


エリウスが魔力の痕跡を追うと、街外れの古びた祈り場の建物にたどり着いた。

警戒しつつ、エリウスとレインは建物の中に入ろうと近づくと女の甘い声が聞こえてきた。


「あ、ぁあ、魔王ぁ~、もっとぉ」


その声にエリウスが建物の中に入るの躊躇っていると、レインは目を細めてエリウスを押し退け、勢いよく扉を蹴り開けた。

問答無用に建物に入っていくレインを追いかける形でエリウスも建物に入ると祈り台に黒い翼を生やした黒髪に色白の半裸で魅惑的な女性とその女を組敷いているゼロが目に入る。

エリウスは慌ててレインの目を手で覆い隠し視界を遮った。


「ゼロ!!!なに、やってるんだ!」


顔を赤くしてエリウスはゼロに怒鳴るとゼロは顔だけエリウス達の方に向けた。


「あー、このサキュパスが魔力が欲しいというから、注ぎ込んでるだけさ」

「っ、ゼロ!そんな事をしたら魔王が生きているとバレてしまうだろ!!」

「大丈夫、ほら、こいつもう正気を保てないぜ?」


ゼロに過度の快楽(上質な魔力)を与えられ、サキュパスの女は快楽に浸り放心状態となっている。

魔王の魔力を直接当てられ、サキュパスの許容範囲を越えてしまったらしい。


「あぁ…、ま…おぅさまぉ…」

「仕掛けてきたのはお前の方からだからなっ」


そう言うとゼロは無表情でサキュパスの黒い翼を両手に掴み、思いっきり左右に引っ張り背中から翼を引きちぎった。

サキュパスから絶叫が響き、レインは目隠ししていたエリウスの手を払いのけ、背中から血を流しているサキュパスを見てゼロを睨んだ。


「なんだ、女。お前もして欲しいか?」

「な!ふざけるな!!」

「レイン落ち着いて。この騒ぎで誰か来るかもしれない、一旦ここを離れよう。ゼロも!行くぞ」

「ちょっと待て、あの魔物どうするんだ?このまま此所に置いていくのか?」


レインは血まみれで倒れているサキュパスを心配そうに眺めた。

ゼロはレインの発言に理解出来ないと首を傾げてエリウスとレインのもとに歩み寄った。


「我の存在を知ってしまった以上、生かしてはおけぬ。このまま、ここに捨てて置いても人間が見つけ処分するだろう」


その言葉にレインは怒りの表情を浮かべてゼロを睨んだ。


「お前、魔王だろ!?仲間じゃないのかよ!」

「仲間?なんで?下等な魔物と一緒にされてもなぁ~お前たち人間もゴキブリと一緒にされても困るだろう?」


ゼロはレインを小馬鹿にして薄ら笑い、建物から出て行った。

エリウスは怒り心頭のレインをなだめるように、レインの左肩に手をぽんっと置いてサキュパスを見た。


「あの様子だと、死ぬまでは時間の問題だし、仮に生き延びたとしてもまともな精神を保てないだろう。行こうレイン」

「お前まで…」

「魔物に情けをかけても、その後のリスクを考えれなければならない。わたしは今まで散々魔物と戦ってきた。情けをかけて正解だった事など…」


エリウスは一瞬少し悲しい顔をして、レインに小さく微笑みかけた。


「さあ、行こう」

「…」


まだ納得がいかないという顔のレインの背中を押してエリウスたちは一旦宿に戻った。

宿の部屋の中の雰囲気は暗くピリピリとしていた。


「明日朝早くに街を出よう。他の魔物たちがゼロを探している可能性も高い」


買った大量の荷物も手際よく整理しながら、エリウスはゼロとレインに言った。

ゼロは窓際に座り、エリウスが買ってきた酒ボトルを口に着けて飲み夜の街を眺めていた。

椅子に座り不機嫌にしていたレインはゼロの様子をチラリと見て、エリウスが魔王といることが本当に良いのか疑問を抱いていた。

こんな最低な奴と隠れて暮らすよりも、城に帰った方がエリウスは幸せなのでは?

モヤモヤとした気持ちがレインの中にあった。


「レイン、寝るときは隣の部屋を使ってくれ。俺たちはここで寝るから」


そういうとエリウスは毛布をレインに手渡した。

レインは考えても答えが出てこないと諦め渋々寝る事にした。

真夜中、フっと言い知れぬ心のざわつきを感じ、レインは目を覚ました。


「…なんだ?この感じは…」


今まで感じたことがないザワザワとする感じ。

隣の部屋でエリウスとゼロが寝ているはずなので、気になってゆっくりと扉を開けると真っ暗な部屋の中心に大きく白く輝く卵のようなモノが音もなく静かに光っている。

部屋を見回しても二人の姿は何処にもない。

レインは恐る恐るその卵のようなモノに近づき中を覗き込むとぼんやりとふたつの人影が見えた。

その人影は光の中で近づき唇を重ねると一つに溶け合い…

ひとりの人影?になった。


「え…どういうことだ?」


その人影?がレインの方を見た瞬間強い光を放ちレインは眩しく目を閉じた。


チュン、チュン

鳥の声がする…

レインは目を開けると宿のベットの天井景色が視界に入る。

あれ?ベットで寝ている。

ムクッと起き上がり辺りを見回しても宿の部屋でなんの異変もない。

あれは…夢?

トントンと扉をノックする音がした。


「レイン、起きてる?朝ごはん食べに行こう」


エリウスの声が聞こえ、レインは扉を開けた。

そこには白く光る卵のようなモノなんてなく、椅子には眠たそうにしているゼロといそいそと出かける準備をしているエリウスの姿があった。


「おはよう、レイン」


ニコリと微笑むエリウスは朝から上機嫌らしい。


「ああ、おはよう…」

「レインどうした?ちゃんと眠れなかったのか?」

「ん?んーいや、まぁ」

「大丈夫?」

「お前がベットをとったから、我らは床で寝る事になったんだぞ。ありがたく思え」

「ゼロ!」


ゼロの嫌味にも多少なれてきて、レインはあまりムカつきはないが何か違和感を感じていた。

何だろう…あれは夢だったのか?

考えてもわからないのでとりあえず3人で宿の食堂に朝食を食べに行くことにした。


食堂に着くと部屋の中心に白いマントとフードを深く被った人が一人座ってコーヒーを飲んでいる人以外、誰もいなかった。

朝食で忙しい時間のはずなのに誰もいない、そう、調理している人も宿に泊まっている人の存在も感じない。

おかしい…エリウスとレインは一気に緊張状態になった。


「空間が違うな、ココは」


ゼロがめんどくさいとため息交じりに言うとエリウスが顔を少し歪めた。


「いつの間に…全然気が付かなかった。相当高度な魔術だ」


ゼロとエリウスの視線の先は部屋の中心でコーヒーを優雅に飲んでいる白いマントを被った人だった。

レインは魔力がわからないから状況をいまいち把握出来てなかったが異常な状況だという事は何となく察しがついた。


「ゼロ様、ご無事で何よりです」


コーヒーを飲んでいた人は立ち上がりフードを脱いだ。

フードの、中から現れた顔は美しく整っており、表情は妖艶にニコリと笑顔をゼロに向けていた。

色白で瞳が蒼く、灰色の艶やかな美しい長い髪の男?は明らかに普通の人間ではないオーラを纏っている。


「シルバー…」


ゼロは小さくその男の名前を呟くとエリウスは更に懸念な表情を浮かべた。


「なぜ、魔族長がここに…」

「私の張っていた罠に昨日やっとかかって頂いたので、魔王様をお迎えに参りました」


昨日ということは、あのサキュバスか…

レインとエリウスは目を細めゼロを睨んだが本人は知らんな、といったとぼけた表情だ。


「どれだけ魔力を消しても、小さな痕跡は残っておりますよ?貴方様がその雑魚(エリウス)にやられるとも思っておりませんでしたし。私が人間世界の征服を終わらせるまで待ってられないのですか?」


やれやれと呆れた表情でゼロを見るシルバーにゼロはめんどくさいといった感じだ。


「人間世界の征服なんて、微塵も興味ないね。お前が好きにやればいい。ただ…我テリトリーを侵す事は許さぬがな」

「ここ(この大陸)ですか?ふっ、実につまらないですねーその雑魚のどこを気に入ったのですか?」


ゼロとシルバーの会話を黙って聞いていたエリウスは自分の事を貶されているようで不愉快になったが冷静に状況を把握しようと黙って観察をしていた。


「ゼロ様、さあ、魔王城に戻りましょう?」

「我が言う通りにすると思っているのか?バレてしまった以上消える覚悟があるのだろう?」


ゼロはニヤリと笑い禍々しい魔力を解放した。

宿の壁や屋根が吹き飛んだが、辺りは薄暗い空間が広がっていた。

レインは空間を操る魔法がある事を思い出した。

現実と別の空間に宿ごと閉じ込められていたのだ。


「ここ(空間)は私のテリトリーです。」

「ふん。こんなもの、お前を殺せば消滅する」

「そうですが、」


シルバーが左手をひと振りすると、空間の中から複数の蔓が飛び出しレインとエリウスを襲った。

エリウスは魔力の歪みですぐにその蔓をかわすことが出来たが、レインは蔓の攻撃に手足が捕まれた。


「な!」


バタバタと蔓を外そうとしても更に強く締め付けられ、どんどんと力が抜けていく。

エリウスは鋭い刃のような攻撃魔法を蔓に放ち、レインを掴んでいた蔓を切った。


「大丈夫か!?」

「う、ん」


蔓に捕まれた所は青あざになっていた。


「あー惜しい。いらない者から排除しようと思ったのに」

「…まぁ、そいつは確かにいらないが」


次の瞬間ゼロは黒い竜巻を生み出し、シルバーに放った。

シルバーは瞬時に空間の歪みを作り中に姿を消した。


「ち、厄介だな。エリウス、これ(空間)を壊すぞ。力を貸せ」

「わかった。レイン、ここで待ってて。」


レインはこくりと頷き魔力を高めるゼロとエリウスを見ていた。

恐らく、膨大な魔力の塊で空間魔法を消し去ろうとしているのだろうと察した。

次の瞬間、レインの足元に大きな黒い穴がぽっかりと空き、レインは体がすっぽりと落ちて行く感覚が襲う。


し、しまった!


レインは声を出すことも出来ず体が吸い込まれる最後の瞬間、伸びていたレインの手をエリウスが飛び込みギリギリ掴み、身体を反転させてレインを引きずり出すと、エリウスが代わりに穴に吸い込まれた。


「エリウス!!」

「!!」


黒い穴は閉じ、薄暗い空間に声が響く。


『ゼロ様、コレを預かります。また近い内に伺いますので、よい返事を期待しておりますよ』


パンっ!弾ける音と共に薄暗い空間はガラスのように壊れ、元の宿の食堂へと変わった。

ガヤガヤと人が行き来し、美味しい朝食の匂いがする。

レインはへたりこみ、ゼロはその場に立ち尽くした。

エリウスが捕まった…


最後まで読んで頂きまして、ありがとうございます!

恋愛要素が少ない…ので、そろそろ増やしたいです(>_<)

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