3 街に行く
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明るい緑色の髪で小綺麗な格好をした優しげな青年と真っ赤な髪色で重厚間のあるマントを羽織った少し気の強そうな少女が賑やかな街市場を並んで歩いている。その少し後ろに黒いフードを深くかぶった大男がいた。
色々な国の商人が行き交う市場の中でも、頭ひとつデカイ大男の存在は浮いており、すれ違う人がたまに振り向いて見てしまう位だった。
「ゼロ…宿で待ってた方がいいんじゃないか?」
エリウスは少し心配そうにゼロに言うと、ゼロは口を尖らせた。
「せっかく街に来たんだ。ウマイ酒があるのに飲まない訳にはいかぬ!」
「いやいや、買ってくるし…」
「お前が買ってくる酒は不味いし少ない!」
エリウスは呆れて、ため息をついた。
エリウスと魔王ゼロがひっそりと暮らしていた場所は崩壊し、更に魔王の魔力を放出したことで魔王の特殊な魔力を求めて魔物が集まって来るようになってしまった。
テントで過ごした一晩は、最初小物魔物がちょこちょこ現れ、明け方には大型がちらほらやって来てゼロの餌食となったので、エリウスとゼロは住みかを別の所に移すことにした。
エリウスは金に変えれそうな物だけを集めて、一番近い大きな街に次の住みかを作るにあたって必要な物を買いに来たのだ。
レインは自分のせいで二人の隠れ家をなくしてしまったと負い目を感じて手伝う事にした。
ゼロはただお酒を飲みに来たらしい。
「じゃ、我はそこの酒場にいるから、買い物終わったら迎えに来いよ」
ゼロは昼間から開いている酒場を見つけたので、さっそく店に入った。
「~たく、騒ぎを起こすなよ!」
エリウスはゼロと街に来たら毎度の事なので、諦めて買い物に向かうことにした。
「…なぁ、エリウス、大丈夫なのか?あれ(魔王)」
「言っても言うこと聞かないし、騒ぎが起きてもゼロは記憶操作魔法使うから、まぁ大丈夫だろう。」
記憶操作魔法は一般市民には効果があるが、精神の強い者や魔力が高い者には効かないので、レインは少し心配になった。
まあ、魔王が街の酒場で昼間っから酒飲んでるなんて、誰も想像しないだろうけど。
「さて、まずは服屋に行こう。レインの服買わないと…」
エリウスは少し顔を赤くしてレインから視線を外すと、レインも重厚間あるマントの内側の自分の服がビリビリに破れた旅人の服だったことを思い出して恥ずかしくなり、赤面しうつむいた。
エリウスとレインは一番近くの服屋に向かい店に入った。
「いらっしゃい~」
若い女性の店員が店の奥から声をかけ、何か作業をしていた。
エリウスとレインは店員を気にせず、あまり広くない店の中で売られている服を見て回る。
「どれでもレインの好きな服選んで、何枚でもいいよ」
「破れた服は1セットだから、これでいい。」
そう言うとレインは適当に地味な旅人の服セットを指差した。
エリウスはその服を手に取り広げると茶色でなんの特徴もない地味でサイズも大きめな旅人の服に少し目を細めて不服そうな表情を浮かべてレインを見た。
「…なんだよ?」
「ごめん、前言撤回する。私が選ぶ」
エリウスは地味な服を綺麗にたたみ元あった棚に置いて、店内をぐるりと見回しサクラ色や明るい山吹色の旅人の服を手に取り広げ、レインに合わせる。
「それ、両方最新作の服だよ。彼女にプレゼント?」
店員さんがエリウスに近づき話しかけると、エリウスはにこりと微笑み
「はい。他にオススメありますか?」
「ふふ。ならーこれかなー」
エリウスと店員さんの会話に「彼女じゃないです」とツッコミたかったレインだが、二人の会話がどんどん進み間に入る隙がなくかやの外になってしまった。
結局エリウスは服と小物を7点買い、その中のサクラ色の最新作の旅人の服にレインは着替えることになった。
旅人の服なのにウエストがしっかりあり膝丈スカートワンピース調となっており、スカートの下に足のラインを強調したズボンを履く、最先端のお洒落な服だ。
「うん。似合うね」
「…」
エリウスは満足そうにしているが、レインは不満げに鏡で自分の姿を見た。
レインはこんなフリフリした可愛い服を今まで着たことがなかったから違和感ありまくりだ。
「じゃ、買い物の続きに行こう。」
服代を全額エリウスが支払い、荷物を受け取りご機嫌に服屋を出た。
そのあと、生活必需品や工具的な物などを買い、露店で美味しそうなファストフードが売っていたのでそれもかって二人で公園の隅で花壇に腰を掛け食べた。
「まだ、買う物あるのか?」
エリウスが買い物した品々が沢山あり、もうふたりの手では持ちきれない量になりつつあった。
「んーまぁ、こんなものかな?また必要な物は別の日に買いに来るよ」
「そうか…なぉ、エリウス。もう、村には戻らないのか?」
「レイン…」
レインはエリウスを見ないで足元に咲いていた小さな花を見ながら話だした。
「エリウスが…そんなに辛い思いをしていたなんて、思ってなかった。村から離れて、お前はどんどん凄い奴になって。私は友達として、自慢してたんだ。だから、村に帰ってきた時、エリウスの何かの役に立ちたいと思って王都護衛騎士団に私は入ったんだ」
王都騎士団は王都や王族を守る専門機関で、平民でも稀に入隊が許されるものだ。
エリウスはレインの体術が優れているので、入隊出来て当然だと思った。
「そこで、私はユラ姫の護衛任務に就いたんだ」
「姫の…」
「姫はエリウスとの婚約を喜び、お前が魔王戦から無事に帰ってくるのを毎日祈っていたんだ。そんなにある日、お前が魔王と死んだと知らせが届いた…」
レインは悲しげに小さく微笑み少し目に涙を溜めていた。
「…レイン、本当にすまないと思っている。わたしは…」
姫を愛せない…なぜなら…
エリウスは自分の横に座っている、女性らしくなったレインをいとおしそうに見つめていた。
レインの視線を感じて、エリウスが足元と花からエリウスを見た。。
「…エリウス」
エリウスとレインは見つめ合い、町の雑音が消えて二人の世界に引き込まれる。
レインはエリウスの優しくいとおしそうな瞳に吸い込まれて、これまでに感じたことのない胸の苦しさを感じた。
今まで見たことがない、レインの女らしい表情にエリウスはほぼ無意識にレインほ頬に手を添えていた。
「レイン。私はー」
かなり間があきましたが投稿です~最後まで読んで頂きありがとうございます!