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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

さようなら、旦那様シリーズ

ほれたのは、御嬢様

作者: 小宮 海

今回は、書きたかった旦那さん視点!冒頭から、残酷描写があります。


さようなら、旦那様をお読みいただいた後に読むことをお勧めします。

※あいしてる、貴方を投稿しましたそちらもよろしくお願いします。

※あいしあう、二人を投稿しましたそちらもよろしくお願いします。

 嫁との出会いは、谷だった。


 その頃の俺は、谷の周辺に住む村長に人喰い熊が現れて、既に被害も出ているので助けて欲しいと遠くのギルドの俺達に依頼をした。


 熊は、村人や近くのギルドで対策や討伐をしようとしたが、逃げられ、時には返り討ちにされたとの事だった。


 その谷の下には、猛獣や魔物が住んでいて谷の周辺の村人はめったに夜には近付く事はしないが、ある日、その谷の下にその熊がいたらしい。


 その日は昼頃だというのに出ていて、その熊は、どうやら食事をしていたらしいが…


 食事をしていた物が、問題だった。



 熊の周りには、夥しい血…そして、食べていたものが人だった。


 

 そして、その人物だった物が辺りに散らばっていていた。


 夜ならまだしも昼にもいることは完全に想定外だった村人は、音を立てずに刺激をさせないように後ずさるように、ゆっくり離れて、熊が見えなくなったことを見計らい、その場で一目散に逃げ出した。


 幸いにも、谷の近くに住む村人には被害はないようだが、その谷の下に行く人を襲ったりしているらしく、何とかしようとしたが…



 結果は惨敗、それどころかどうやらかなり手強いらしく、手に負えない事を悟り、ちょうど空いてた俺がそこの国にある谷に、ギルド経由で向かった。



 村長や谷の周辺の村人から情報を得て、夜に熊が住処にしている所に行けば、熊は何かを見つけたのか距離的には近い俺ではなく、別の方向に向かっていた。



 其処は、川が流れていて、更に大きな木がある。よく見てみれば……



  其処には、人がいた。しかも、眼を閉じているのか、川の中に倒れているようだった。其処で、俺は思い出した。



 熊が、村人が見つけていた時に喰っていたのは、女だったと言っていたことを。



 つまり、あの熊は 男の俺よりも川にいる女を狙っていることになる。


 女は、目を開けることがないのかずっと川の中にいる。


 熊は、それに気が付いているのかゆっくりと歩いて女の方に向かっている。


 その光景に、このまま黙って喰われるのを見るのも後味が悪いし、気分も悪い…そう思った俺は


「仕方ねぇな…本当に…」


 自分の武器を取りだして、熊に攻撃を仕掛けた。


 熊は、俺に攻撃されるとは思わなかったのか、振り向いて怒りの咆哮をあげるが、俺はその様子にニヤリと笑い


「威勢のいい奴じゃねぇか…それでこそ……倒しがいが、ある!!」


 そういって、此方に来る熊を向かい撃った。


 

 熊は、手強いだけあってなかなか楽しめたが、散々傷付けトドメを刺せば、その場で叫びをあげて倒れた。


 そして、絶命したことを確認して、川の中の女を見た。貴族なのか、ドレスを着ていた。


 薄紅色の長い髪が、川の流れに沿うように動いていた。


 顔には、俺が倒した熊の血が付いていたから、その水で洗い流した。


 もしかして、死んでいるのかとも思っていたが、川の水の影響で冷えてはいたけれど、僅かに暖かさを感じて、生きていることを確認できた。


「このままってワケにもいかねぇしな…とりあえず、川から出すか」


 なんで、こんな所にいるのかは分からんが、大方谷から落ちたんだろうな。


 そう思って、女を横抱きにして川から出した。



 自分の来ていたコートの上に、寝かせ、しばらく少し離れて様子を見た。


 そして、目が覚めた途端に女はぼんやりとした後、


 泣き出した。


 その様子に、俺は近付いた。俺に気付いたのか涙を流したまま此方を見る女は、随分と知らない男の前で泣くなんて無防備だと思って、少し呆れ、声を掛けた。



「目が覚めた途端に、泣き出して…そんなに怖かったのか?」



 落ちたことを今更実感して、涙を流したのかと思い頭を撫でた。見たところ、貴族の令嬢のようだったから、無礼者とか言われて振り払われると思ったが、頭を撫でられたまま首を振った。そして、俺に言った。



「いいえ…私は死のうと思っていたんです、死んで、楽になりたかった…こんな私なら死んでも誰も困らないから…」


 どうやら自殺しようとしたらしく、それが失敗したと分かって悲しんでいたみたいだった。とりあえず、俺はコイツに説明した。


「俺が、アンタを見つけたとき、谷の底にある大きな木の葉から落ちて、そのままその葉からも落ちて川に落ちたんだ」



 熊に襲われ掛けた事は、伏せた。あまり、いい気分にはならないだろうと思った。


 その言葉に女は、そうなんですかと言って声に出さないで静かに涙を流して、俺が撫でるのをやめるまでそうしていた。



 全てに絶望して悲しんだ、眼をしていた。



 その後、気絶したかのように眠ってしまい、近くの村に寄ることにした。


 村長は、女を見ると事情を察したのか、俺とともに泊めてくれた。


 村長の妻に女を任せて、俺は休みがてら結果的に助けたアイツをどうするか考えて、寝た。



 起きた後、俺は村長の所で食事をした後、目が覚めたばかりの女とあった。女は俺に向かって、


「助けて下さって、ありがとうございました」


 と、頭を下げた。俺は気にするなと言った。


 女の顔は、作り笑いのそれ、完璧な人形のようだった。



 村長達に暫く女を任せ、俺は街に出掛けてある物を買いに行った。そして、その日の晩、


「これからどうしたい?行くところはあるのか?」


 と、何気なしに聞く振りをした。


「…行くところは、ないですね…違います、戻れません…」


 そう、言った。予想通りだと思った。 だから、選択をして貰った。 


「もし、行くところがないなら、村長達が此処で暮らして良いと言っていた…後一つは、オレはアンタを助けた手前、面倒をみる気でいる……だから、遠くなるが…俺のいるギルドに行くか…どちらにする?」


 俺の言葉に、驚いたように目を開けた。


「え……?」


「つまり、残るか行くか…どっちにするんだ?」


 簡潔に今度は分かりやすく言うと、女はどうやら躊躇していた。そして、


「……どちらにしても、私がいたら御迷惑になります…だから、私は一人で大丈夫です、助けて頂いたのに何も返せなくてすみません」


 そして、笑った。無理して笑っている顔だった。…多分、本気でそう思っているようだ。


 一人にしたところで女は確実に死ぬことは分かった。結果的とはいえ助けた俺としてそれは、流石に避けて欲しい。助けた意味がない。だから、


「どっちにしろ迷惑だと思うなら、俺と来い。拠点まで一緒に行ってやる」


 そう言うと、明らかに動揺してでも…とか言い出した。だから、仕方ないので最終手段に出た。



「お前、助けて貰ったのになにも返せないからって言ったよな?なら、お前の事は俺が拠点まで預かる…それで、野宿の時は俺の手伝いをしろ。それでお前を助けた俺の借りを返せ…いいな?」


「ですが…私、野宿のやり方とか分かりません…そんな、何も出来ない私がいたら、返って迷惑に…」


「分からないなら教えてやる、出来ないなら一緒にやってやる…知らないんだから迷惑以前の問題だ。とりあえず、明日出発する…いいな」


 どうやら、まだ戸惑っているようだったが、自分の用件を言ってその場から離れた。



 そして、次の日俺は、女に渡すものを渡した。昨日村には無かったから、町に行って買ってきたものだ。また、なにか言う前にさっさと渡して部屋を出た。その前に、


「その中に入ってるもんを身に付けてから来い」


 と言った。


 そして、女はしっかり身に付けてきた事に、俺は満足した。


ー…思ったより、服の丈や大きさは合ってたみたいだな…ー


 昨日適当に買った服だが、どうやら女の体に合っていたみたいだった。女は、服を着て戸惑っていた。


 服は、白い長袖のブラウスにその上から着るワンピース、そして茶色の旅用のマントとブーツを渡した。


「あの、私…本当に頂いてしまって良いんですか?ワザワザ、買って下さって…」


 遠慮がちに言うそいつに、俺は


「ドレスじゃ目立つから嫌だって言う俺の都合だ。気にすんな」


 実際、ドレスは旅に不向きだし、靴もそんな踵の高いもんじゃ、長く歩けない。そう言うと、


「あの、何から何まで、ありがとうございます」


 と言った。


 そして、村から出るときに村長達に見送られる時に、そいつは村長達にお礼を言っていた。


「あの、本当にありがとうございました…お世話までして頂いたのに、何も返せなくて…」


 そう言うと村長の妻が、朗らかに笑いながら言った。


「気にしなくてもいいのよ?……でも、そうね、それなら貴方のドレスと靴を貰えるかしら?」


「それは、構いませんが…ドレスも靴も、破れていたり汚れていますよ?」


 

 それに、村長の妻は


「えぇ、構わないわ…私ね、お裁縫が趣味なの…だから、そのドレスの生地を貰えたら、素敵な物を作りたいの。後、靴は汚れているだけで洗えば綺麗になるわ」


 との事だった。女は、


「御礼の物としては、不足かもしれませんが…宜しければ貰って下さい」


「ふふ…素敵な物を貰ったわ…本当にありがとうね、お嬢さん…」


 その、村長の妻と話しているとき、少しだけ柔らかく笑っていた。


ー…なんだ、笑えるじゃねぇか……ー


 その事に、少し俺は安堵した。 



 そして、村から出て夕方まで歩いた後、俺達は野宿をするための準備をした。


 女……彼女は、やはり慣れてないのか、悪戦苦闘していた。


 火の起こし方やテントの張り方やら…兎に角、仕方ないが何も出来なかった。


 その事に落ち込んでいた。そして、とりあえず俺と一緒に料理を作らせたが、


 料理は形は保っている物の、どれもどこか焦げていた。


「…ごめんなさい…」


 そう言って、悲しそうに落ち込んだ。泣きそうな顔で、俯いていた。俺は、とりあえず彼女の作った方の料理を食べた。その様子に顔を上げて驚いていたが、俺は感想を言った。


「食えない事はねーが、今度は俺がもうちっと上手くなるように教えてやる」



 正直、上手くはないが普通に食える。それに初めてにしたら上手く作れた方だと思った。知り合いには微妙な創作料理を作ったり、美味しくなさそうとか言って入れすぎというレベルを超えた味付けをする奴等がいる。そいつ等に比べたら、焦げただけで形も殆ど整っているこの料理は、充分食べれる。


 そう言っただけだったのに、


 彼女は、目を見張って俺を見た。そして、


「でも、私…何も出来なかったんです…火の起こし方も、テントも…料理も…失敗ばかりで、結局迷惑に」


「ならない」


 はっきりと言った。そして、何か言う前にこう言った。


「どれも、やったことは無いのに失敗するのは当たり前だ。しかも、一回で覚えられるワケがない。アンタはそのどれもが慣れないのに必死に覚えようとしていた。時間が掛かったが、それだって仕方ないだろ。なんせ、初めてだ。なのに、そのどれもは最初なのになかなか上手く出来た。ありがとうな。」


 そう言って、頭をまた撫でた。


 彼女は俯いたが、


「ありがとう、ございます…」


 と、泣きそうな声で言った。



 その日から、やはり思った通りに段々と上達していった。


 火の起こし方も、テントも、一人でやれるようになっていた。


 

 料理は二人で作ったりしたが、それでも美味くなった。そうして、暫くの間、旅をしながら上達していた。


 初めのうちは、暗い表情が多かったがそれも、少しずつ無くなり、今では良く、朗らかに笑っていた。


 その様子に、少しずつ同じくらいに嬉しくなる自分がいたが、敢えてそのままにした。


 そして、それが彼女を好きだと自覚したのは、あの日だった。


 その日は、全ての支度が終わり、後は寝るだけだったが、


「あの、お話があります。」


 真剣な、何かを決意した表情で話した。俺は、頷いて聞いた。


 話の内容は、彼女の身の内の話だった。

 

「私は、お分かりかと思いますが…貴族です…いいえ、今は貴族ではないですね…」


 思っていた通り、貴族だった。そして、その後に話を始めた。話の内容は、家族がとても優秀で、自分はいつも家族に認められる為に頑張っていた、だけど認められなかった事、そして、二人の先生が自分の事を褒めてくれいたこと…最後に、自分は夫がいたこと…これは、当時の俺からしたら苦くて胸が痛かった。


「私は、逃げたんです…辛くて悲しいことから逃げ出したんです…こんな事に逃げ出すような…死を選ぶような人間だったから、家族も、旦那様にも…愛されなくて、当然ですよね…」


 無理をして、笑ったその表情に俺は、いつものように自然に頭を撫でた。その事に、また、驚いた表情をしていた。


「そうか、話してくれてありがとさん」


 そう言った。目からは、涙が溢れ出していたが、構わず続けた。


「お前なりに、必死に頑張ってたのは分かった。けど、誰かが少し休めたり、もう頑張るなって言えば良かったかもな」


 一滴、頬に零れた。だけど、気にしない振りをした。


「自分から、死ぬほど頑張らなくて良かったんだよ、お前は。どこかでお前も休むことを覚えれば良かったな……けど、頑張ったな。お疲れさん、だから、ちっと休んでそれからまた、頑張ろうと思った時に頑張れ」


 俺の、正に本心を言った。そして、労いの言葉を込めたと同時に、彼女の先生以外のそいつ等に正直苛ついた。


 死を選ばせる事が逃げることだと思わせたことに、腹が立った。


 俺と彼女は住む世界が違った。俺は傭兵であり、平民だ。命を失い掛けたり、殺され掛けたりしたことも多かった。だからこそ、それなりに苦労したが認めてくれたヤツらもいた。


 貴族にも、貴族なりの苦労がある。彼女は、それでも必死にあの時まで頑張り、認めてくれた二人以外の味方がいなかったんだろうに、やってきた。だけど、結果的には一番傍にいたはずの夫が追い詰めたんだろう。


 その夫に、心の底から罵倒した。


ー…嫁が、自殺を図るくらい追い詰めやがって…何やってやがったんだよ?旦那様ってヤツは…ー



 その時、急に彼女が泣きじゃくりながら、俺に抱きついた。


 そして、今まで溜め込んでいた全てを吐き出した。


「私っ…私…認めて欲しかった!ただ、一度でも良いから、頑張ったって言って欲しかったっ!!…」


「愛されたかった!愛して欲しかった!!お父様にも、お母様にもっ…兄様達にもっ…旦那様にも、愛して、欲しかったっ…!」


「旦那様の事、好きだったっ!本当に、本当にっ…愛していました!!小さい頃からずっと見ていたのに…アナタに、認められてっ…愛してくれるまで、頑張ったんですっ…だけど、だけど!!あの人は、別の人をっ…美しくて、綺麗な方が…好きだったんです…」


「私は、結局…いらなかった…邪魔だった…家族にも、愛していた…旦那様にもっ!必要と、されなかったっ…」


「私はっ…私はもう、どうして、いいのか分からない…分からないんですっ…誰も、いらない私なんか、捨てても、何にも思わないから…」


「旦那様…私は、どうしたらっ…アナタに、愛されましたか…」


 

 その言葉の数々は、彼女が本当に欲しかった物…そして、悲しみややるせなさ…そして、何よりもどんな事よりも愛されたかった、彼女の心からの叫びそのものだった。


 その後は、ずっと泣き声だけが、聞こえた。


 何も言わないで、ただ静かに彼女を抱き締めた。

 

 その叫びに、耳を傾けて…彼女に労いや優しさを込め、そして此処まで溜め込ませた奴等に、心から憎く思った。


ー…ふざけやがって…ー


 声に出さないで、その言葉を飲み込んで、彼女の気が済むまで泣かせた。



 暫くして、泣き疲れたのか涙を流し終えてなかった雫が、頬を伝い、それを拭った。


 寝息が聞こえ、眠りに入ったことに俺は、改めて抱き締めたまま、彼女の顔を見た。


 寝入っているが、どことなく悲しげな顔をした彼女を見た。そして、抱き寄せ、耳元で聞こえないが、言った。



「どいつもこいつもいらねえなら、俺がアンタを…お前を、貰ってやる。お前の家族もお前の旦那からも、必要とされないなら、捨てられたと言うなら、俺が拾ってお前を必要としてやる…」 


 


 旦那様…宣戦布告だ。俺は、お前から…彼女を奪う。お前を愛していたという気持ちを俺に塗り替えて、俺のモノにする。



 

 そう思って、彼女の瞼に口を寄せた。


「汚い男で、悪いな…」


 そう言っているのに、多分今の俺は、不敵に笑っていることは分かった。


 こうして、この出来事で俺は、彼女が好きだと自覚した。



 その後は、拠点に着くまで俺は彼女に積極的に、だけどさり気なく迫った。


 野宿の時は、気付かれずに傍によって話をした。


 魔物と戦闘した後、少し腕を怪我をした時は、彼女に包帯を巻いて貰うように頼んだ。


 街に寄れば、広いという理由で手を繋ぎ、人混みがあれば肩を寄せてはぐれないようにした。


 彼女の、あの時から昔の話も偶にしてくれ、どうやらスミレの砂糖漬けが好きだといったので、敢えて東の国のサクラという名の花の砂糖漬けを渡した。これも気に入ったらしい。


 そして、俺のギルドの話をすれば楽しそうに聞いたり、驚いたりした。



 日に日に、彼女から俺を見る目が良い意味で変わっていることに気づいたが、それは口にはしない。


 俺に話しかけるときや、一緒にいるときに初めの頃の視線や表情にも、変化があるのも分かりやすい。


 その、紅くなったり、嬉しそうにはにかむ笑顔、そして明らかに意識していますと言う態度に、可愛いとらしくなく思ったり、嬉しく思った。


 だけど、まだ、告白はしない。


 勝負は、拠点に着いてからだと決めていた。


 

 

 「俺は、おまえが好きだ」


 拠点に着き、宿に泊まった時に口にした。そして、もう一押しするために続けた。


「お前の事情も、教えて貰ったしお前の立場も知っている。だけど、それも分かった上で言わせて貰う。俺は、お前のことが好きだ…もし、ふられてもお前が安心する場所が見つかるまで守ってやるから、安心しろ」


 俺は、彼女を真っ直ぐに見つめて言った。向こうは、明らかに戸惑い、赤くなっていた。此処で、俺は少しひいた。余り、押しすぎれば逃げられるからだ。


「返事は、いつでも待ってる」


 そして、そう言って部屋から出て行こうとすれば…


「待って、お願い…」


 彼女の細い腕に、抱き止められた。少し、驚いたがされるがままに彼女の言葉を待つ。


「…私も、貴方が……貴方のことが、好き」


 分かっていたが、口にされれば嬉しい。多分、今俺は笑っていた。


「貴方と過ごして、貴方の傍にいられて…私、貴方を知る日々の中で貴方が好きになったの…だけど、貴方は私の恩人だから、そんな事言って困らせたくなかった…だけど、貴方も同じ気持ちなら迷惑じゃないなら、貴方の傍に、」


 想像以上の、告白にたまらず抱き締めてやりたくなり、腕を外して、逃がさないように捕まえて、長く、口付けた。


 彼女は、されるがままだったが、少し苦しそうにしていたから名残惜しかったが、一度離した。


 息を切らして、赤くなる彼女に目を細めて、耳元で言った。


「もう、離さねぇぞ?良いんだな?」


 耳元で言われたせいなのか、更に赤くしながらそれでも必死に頷く彼女を愛おしく思った。


「離さないで下さい…ずっと、一緒に…愛しています」


 必死に、俺に伝える思いに答えるために、言葉の代わりに先程よりも長い口付けをした後、体が傾いた彼女の耳元に言った。



「愛している」



 らしくもない、初めて口にした言葉に彼女も、



「愛して…います…」



 小さな声で、言った。



 俺が拾い、助けた女は、貴族だったが誰よりも努力家で愛されることを望んだ女だった。



 惚れたのは、お嬢様、だけど、この先はずっと俺だけの大切な嫁になる、彼女。



 誰よりも、何よりも俺は、彼女を生涯愛することを誰にでもない俺自身に誓った。



 月の光が、暗い宿の窓を照らしている中もう一度だけ口付けを、俺は、彼女にしたのだった。





 


 



人喰い熊「解せぬ」

神「アンリミテッドハピネスワークス!!」

女神「約束された勝利の夫婦!!」

月「ゲートラブバビロン!!」



というわけで、旦那視点でした!

今回は、ちょっとラブ度を上げましたが…旦那さんが計算高い感じに。そして、かなり肉食系でした。これから、嫁さんは愛されながらも幸せになります。旦那さんは、旦那様に宣戦布告しましたが、勝負にもならなかったという。(辛辣)最後に…


行くぞ、旦那様…心の余裕は充分か?


それでは

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― 新着の感想 ―
[一言] この夫婦は御覧の方々が応援しておりますw 神「アンリミテッドハピネスワークス!!」 女神「約束された勝利の夫婦!!」 月「ゲートラブバビロン!!」 てかw
[良い点] 一番面白いところをあとがきの神様たちが持ってくってどういうことなの!←褒め言葉(笑)
[一言] 続き楽しみです! 旦那さまザマァが待ち遠しいっす! (。-∀-)ニヤリ
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