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運命の約束は  作者: 篠川 霖雨
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太陽の翼

この世界には昔から伝わるおとぎ話がある。それは「太陽と天使」という話だ。


昔々、ある娘が太陽を間近で見ようと白く大きな翼を広げて飛んで行きました。しかし、それをよく思わなかった神々がその娘の翼を奪ってしまいました。娘は翼を奪われ地上へ真っ逆さまに落ちていきました。


よく聞かされる物語はここで終わり。だがこの物語には続きがある。

これはそんな物語の続きである。


「ふぅ、今日の分はこれくらいかな」


目の前で出来上がったクッキーを見ながら私は自慢げに笑った。窓から外を見てみると遠くの方で今日も子供たちが空を飛び回っていた。

この世界は皆、背中に翼が生えており色は様々だ。生まれてきた時から皆翼を持っているのに、私には生えていない。外の少年たちを羨んでいても仕方がないので私はクッキーの包装用の袋を取りに行った。

袋に数個クッキーを詰めて可愛らしいリボンで口を閉じていく。その作業を黙々とやっていると突然玄関のベルが鳴った。扉の前まで来ると私は警戒気味に声を出す。


「はい、どちらさまですか」


「私、マルサだよ」


私はマルサと聞いてすぐさま扉を開けた。そこには黄色い翼を折りたたんでにっこりと笑うたった一人の友人が立っていた。私は思わずマルサに抱き着きマルサも動じず、むしろ私以上の力で抱きしめ返してくる。


「久しぶり!マルサ!」


「ミーナも元気そうね!よかったわ」


軽い挨拶を済ませた後私はマルサを小屋の中へ招き入れた。

テーブルの上にティーセットと先程焼きあがったクッキーを並べていく。マルサはクッキーを目の前にして目を輝かせている。ブレンドした紅茶をティーカップへと注いでいく。コトンとカップをマルサの前に置いた。マルサは紅茶を一口飲んだ後クッキーに手を伸ばす。


「相変わらずミーナの紅茶とお菓子は格別ね~おまけに可愛いし~」


マルサはほっこりとした顔で呟く。また冗談言ってと私は言うがマルサは突然目がカッと開き私の目の前まで身を乗り出してきた。


「冗談なんて言ってないわよ!こんなに綺麗な白い髪と太陽のような赤い瞳!羨ましい!そしてあなたの紅茶とお菓子はこの世界で一番美味しいわ!あーあミーナも町でお菓子屋を開けばいいのに……」


マルサは乗り出していた身を戻し、がっくしと椅子に凭れ掛かりながらティーカップに再び口をつけた。マルサが何か悩んだ後、はっと思い出したかのように目を見開いた。


「いっけない!店番頼まれてるんだった!ごめんミーナ、私帰るねっ」


「あ、マルサ。忘れ物」


私は先程ラッピングしていたクッキーをマルサに渡した。マルサは笑顔で抱き着いてきてありがとうというと、玄関を出て飛び立ってしまった。私はマルサを見送ると小屋の中へ戻り、ため息をつく。マルサの家の方はとても優しい。きっと私が町へ行っても笑顔で迎えてくれるだろう。でも、それはマルサの家族だけだ。私の存在は町の人達なら知っている。でもそれは「気味が悪い羽無し」が居るということを知っているだけ。そんな私が町へ行った日にはマルサやマルサの家族にまで迷惑がかかる。だから、私は町へは行かない。私の事はどうなったっていいけれど、せめて友人のマルサやその家族くらいは私の事で迷惑をかけたくない。だから、私はこの小屋があってお菓子作りができれば満足なのだ。


「さて、片づけて本でも読もうかな」


私はマルサが飲んでいたティーカップを片付け自身のカップに新しく紅茶を注いだ。そして本棚から一冊の本を取り出し静かにページを捲っていく。しばらく読みふけっていると一羽の鳥が窓に止まっているのに気付いた。その鳥はとても綺麗な青色の鳥でこの近くではあまり見かけない鳥だった。読みかけの本を置き、その鳥に近づき鳥の目線にまで腰を落とす。


「君、見かけない子だね。どこから来たの?」


私はその鳥に話しかける。青い鳥はその言葉を理解したのかピピっと鳴きバサバサとその場で翼を羽ばたかせる。その様子を見て私が笑っているとその小鳥は突然私の髪を引っ張り始める。


「ちょ、ちょっと待って、どこに連れて行くの?」


質問をしてみるが青い鳥はそんなの構いなしに私の髪を引っ張っていく。私は仕方なくフードを深く被って外へ出た。青い鳥にされるがまま付いていくと、家の裏手にある森の中に入っていく。慣れた森の中なのになんだか初めて来たときの様にワクワクしていた。普段はこんなに深く入らない森の奥まで入って来ているが、青い鳥はなおも私の髪を引っ張り奥へ奥へと連れていく。連れていかれた先には私も初めて見る湖が目の前に現れた。青い鳥は私の髪から口を話、湖の方へ飛んでいく。私は反射的に青い鳥を追いかけていた。すると湖の畔に誰かが倒れているのに気がついた。私は近寄って見てみると十代後半だろうかその位の年の男の子が倒れていた。髪は青く、羽も綺麗な青色をしており先程の青い鳥にとても似ていた。青い鳥はその男の子の上を飛び回って居るとふいに私の方に乗りピピっと鳴いた。恐らく助けてほしいらしく、肩に乗ったまま髪を引っ張りピピっと鳴きながら首を傾げている。


「……わかったよ、助けるよ」


少しため息を吐きながら私がそういうと、青い鳥はまた男の子の上で飛び回り始めた。私は男の子を改めてみてみると、少しの切り傷のみで大きな怪我はしていなさそうだ。私は男の子を引っ張り木陰の方へと運び、持っていたハンカチを湖の水で濡らし男の子の顔を拭いてやる。すると、男の子が気がついたようでうっすらと目を開けていく。青い瞳が光反射して、それはまるで宝石箱が開くようなそんな光景のように思えるほどその男の子はとても美しかった。その光景を見惚れていると、男の子が怪訝そうな顔をしながら睨みつけているのに気がついた。


「あ、ああ、すみません、貴方倒れていましたが大丈夫ですか?」


「倒れて……?」


男の子が少し考えた後納得がいったように柔らかい表情に変わった。


「助けていただき感謝いたします。僕はブラウ。貴女は?」


「わ、私は、ミーナと言います」


「ミーナさん、お礼がしたいのですが……」


「お礼なんて、いらないです」


ですが、と言いブラウも引いてはくれなさそうに見え、私はため息を付きつつブラウに向けて小指を出した。ブラウがよくわからず首を傾げると私は一つのお願いを言った。


「また私とここでお話をしてくれますか?」


ブラウはきょとんとした後、ふわっと笑い私の小指にブラウの小指を絡ませて「約束します」と言った。私が「約束ですよ」というと青い鳥も小指の上に乗りピピピと鳴き、お互いに笑いあっていた。

「来週の今日、この時間にここでまたお会いしましょう」といいブラウは青い翼を羽ばたかせ飛んでいってしまった。

なんで、私あんな約束したんだろう。私の正体が明るみになると危険なのに。今更後悔が胸の中を締め付けてくる。もやもやと悩んでいても仕方がないので私も戻ろう。



ブラウが森から飛んで出てくると一人の男がブラウに向かって飛んでくる。その男はブラウの前で止まり一礼をした。その後に正装に服に身を包んだ人々がブラウの前で頭下げ、その中の一人が見るからに高級そうな上着をブラウにかけた。年老いた執事姿の男が話し始める。


「ブラウ王子、どこに行かれておられたのですか。城の者が心配しておりましたぞ」


「うん。ごめん、じぃや」


「お怪我をされているではありませんか。ささ、城へ帰りましょう」


そう言われいつの間に用意されたのかブラウの目の前には馬車が用意されていた。ブラウはそのまま馬車の中へ入り、扉がバタンと閉まる。白い羽が生えた大きな馬が馬車を引いていく。ブラウは馬車の中から外を眺めながら誰にも聞こえない独り言を呟いた。


「……また来週、ね。ミーナ」


その顔は誰もが恋に落ちてしましそうな程の笑顔だった。



お読みいただきありがとうございます。

続き物ですので次も見ていただけると幸いです。

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