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「……私は、どこで間違えたのだろうか?」
目の前で、落ち込む男の姿を見て、息子であるレナードは、ため息をついた。
男は、この国の現王である。
学生時代に熱烈な恋愛を繰り広げ、周囲の反対を推しきり、貴妃として後宮に迎え入れた。
そして、その貴妃との間にできた第二皇子(第一皇子は、レナード)が、指名もされていないのに、皇太子を名乗り、揚げ句平民の娘と恋愛騒動を起こし、婚約者であった貴族の娘と婚約破棄をした。
父が父なら子も子、と言うことだ。
レナードは、常々と亡き母に似て良かったと安堵した。
父も、恋愛騒動を起こしたが、相手はまだ男爵令嬢で貴族位を持っていたから許された。
この国では、自由恋愛は許されてはいるが、王族は別である。
特に、王位継承権を持つものに関してはさらに厳しくなる。
王は、必ず公爵位から王妃をとること。
公爵位に娘が居なかったら、王妃の座は空席となる。
皇太子もそれに準じ、公爵位から婚約者をとることが義務付けられている。
公爵位と、固定されているのは、この国が創立された時以来の契約であるため。
この公爵家は、色々と重大な立ち位置にあり、王族はまず先に、公爵家だけは怒らせるなと学ぶ。レナードも、学んだ。
また、王族は平民を娶ることは禁じられている。
貴族や平民は、特に縛りはなく、平民は貴族に望まれれば、貴に仲間入りすることは可能だ。
現に、何組も貴族と平民のカップルは出来ている。
王族は、この事も学園にはいる前の、王族教育で学ぶはずなのだが……
「……ウィリアム様は、それを拒んだと言うところですか……」
ビクリと、肩を震わせる父を見下ろしながら、レナードはまたため息をついた。