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鳥族の街

「そうだ、次は鳥族の町の事について話そうか。

 街というより、世界についてまず語ったほうがいいかな。


 彼らのいた世界は、空に大陸が浮かんでいたんだ。

 ほら、海に島が浮かぶみたいにさ。

 空に島や大陸が浮かんで点在してるんだ。

 空中浮遊大陸。


 ボクが訪れたのはその空中大陸のうちの一つでね。

 最初は、大地の下に空が広がって、そのさらに下にボクたちが思うような地上が広がってるなんてわからなかったよ。

 空中浮遊大陸もボクらの思う大地と変わりなかったからね。

 土があって岩もあって、その上に森や川や湖、そして家々が建っていたからね。


 ボクが転移して降り立ったのは街のすぐ側だったから、大陸の端まで行かないとぱっと見は浮いていることがわからなかったんだ。

 小さな浮遊小島だと、大地の端っこがすぐに見えて気づいたかもしれないね。


 鳥族はその浮遊大陸の一つに住んでいてね。

 ボクが訪れた時、その町の商人であるファオリエっていう女性が街を案内してくれたんだ。

 鳥族はキミたちの世界でいう天使に近い容姿をしていてね。

 ファオリエさんは六枚の翼を背に持った女性だったよ。

 とても背が高くてね。

 その世界の鳥族は長身の一族なんだって。

 ファオリエさんは鳥族の中では平均的な身長だったけれど、ボクやキミが一緒に並ぶと、大人と子供ぐらいの身長差になると思うよ。


 彼女は、絶対に落ちないように透明な蓋をされた大地の穴を覗かせてくれてね。

 その穴から真下に広がる空を見た時は、思わず息を飲んだよ。

 青い空に、白い雲が風に乗って流れていくんだ。

 下の空には、魚が泳いでいてね。

 空魚っていうらしい。

 鰭の代わりに翼がついていたんだ。

 ボクが見たのは白い翼のついた空魚だったけれど、他の地域に行けば別の色の魚も見れたみたい。


 そして上を見上げたんだ。

 上にも、もちろん空が広がってた。

 小鳥が舞う青い空だよ。

 ボクは上と下で空に包まれていたんだ。

 感動したよ。

 キミも見てみたい?

 もし鳥族の街に寄る事があったら、お願いしてみるといいよ。

 きっと、一生の思い出になるからね。


 そして鳥族の街では、織物が盛んでね。

 彼女達は自分の翼の一部を加工して糸にして、それを織るんだ。

 織りあがった布はそれはそれは美しくてね。

 刺繍も何もしなくとも、布自体に模様がちりばめられていて、淡い光沢があるんだ。

 手触りも最高だったよ。

 絹のような手触りを持ちながら丈夫でね、魔法や物理攻撃を防ぐ効果もついているんだ。

 ん?

 鳥が織物をすると『鶴の恩返し』みたいだって?

 それはキミたちの世界の昔話だよね。

 もしかしたら、過去にあの世界の鳥族の少女がキミたちの世界に渡ったのかもね。

 

 鳥族の街では、女性がトリニワっていうころんと太った鳥を飼っていてね。

 キミたちの世界の鶏に似てるかな?

 鶏の鶏冠を取って、代わりに尻尾を長くふわふわとさせるとイメージに近いんじゃないかな。

 大きさは、鶏よりも少し大きくて、太らせてまぁるくするとさらにいい感じ。


 トリニワは、毎日何個も卵を産む鳥でね。

 てくてく歩きながらぽこぽこ卵を産むんだよ。

 太っちょでまぁるいから、地面とお尻までの距離が近いせいか、地面に産み落とされた卵は割れずに済むんだよね。

 でも卵はまん丸でね、そのままだところころ転り出してしまうんだ。

 だから、トリニワを飼っている庭には何箇所かまぁるい穴を掘ってあるんだ。

 穴の中にはクッションが敷き詰められていてね。

 そこにコロンと転がった卵が落ちて溜まるっていう寸法さ。

 卵同士が重なってぶつかっても、何故か割れなくてね。

 最初の一個がクッションに守られれば、あとから落ちてきた卵は割れないんだって。

 不思議だよね。


 不思議といえば、卵の中にたまに淡い銀色の卵があるんだ。

 それだけは、決して盗ってはいけない卵でね。

 親鳥が暖めて羽化させてあげる卵なんだよ。

 他の白い卵は何個とってもいいけれど、その淡い銀の卵だけは親鳥にかえしてあげることになっていたよね。

 卵を返された親鳥は、山ほどのクッションで巣を作って、そこで大事に銀の卵を温めていたよ。

 ボクの滞在期間中に羽化した雛鳥にも会えてね。

 生まれたてのトリニワは、淡い銀色をしているんだ。

 大人になると真っ白になるんだね」

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