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植物の町

「次ぎの町はね、植物の町。

 キミ達の世界だと、精霊に属する種族なのかな。

 確かドリアードって呼ばれていた気がするんだ。

 記憶がちょっと曖昧でね、確定できないけど。

 でもそんなに間違ったものでもないと思うよ。

 そんな彼女たちが住む町を訪れたんだ。


 その町は巨大な木を中心に栄えていたよね。

 どのくらい巨大かといえば、大人が両手を広げて十人以上でぐるっと囲むぐらいなんだ。

 ボクやキミだと、何人ぐらいで囲めるんだろうね?

 青々と茂った葉は、通年を通して枯れる事がなくてね。

 花と実が同時に実ってるんだ。


 その町の住民たちは、みんな、緑の髪をしていてね。

 髪で光合成をしているんだ。

 だからボクたちみたいに食事を取る必要性もなくてね。

 毎日、歌を歌って過ごしていたよ。

 ボクも何曲か歌を教えてもらってね。

 滞在中はいつも一緒に歌って過ごしてたんだ。

 

 彼女達が歌うと、植物が大喜びしてね。

 雑草でも森でも、成長が一気に早まるんだ。

 でも枯れたりはしなくてね。

 丁度よい大きさで成長を止めて、歌にあわせて揺れるんだ。

 風にゆられるようにね。

 ボクだけが歌っても何も起こらなかったから、彼女達の歌が持つ不思議な力なんだろうね。


 そうそう、植物の町の空気はとても澄んでいてね。

 彼女達の側に行くと身体が軽くなるんだ。

 疲れがすぅっと取れていくんだよ。

 

 そんな彼女達は、他の町に町の象徴である大樹の実を譲っていてね。

 ボクも何個か貰ったよ。

 とても小さい実なんだけどね。

 あの木は、育つと空気を浄化する性質を持っているんだ。

 どんな世界の土にでも根を生やして、その世界に合った空気を作り出すんだよ。


 彼女達の歌があれば成長も早くてね。

 ほら、これ。

 このガラス玉の中に、彼女達の歌声が保存されているんだ。

 覗いてみて?

 歌が視えるでしょう。

 聞いてみる?

 うん、いいよ、一緒に聞こうか。

 あぁ、でも窓はきっちり閉めないとね。

 彼女達の歌声が外に漏れると、外の木々が育ってしまうからね。



 この歌の保存されたガラス玉もボク何個か貰ってね。

 ボクばかり貰ってるから、ボクはお礼に本の町で手に入れた数冊の本を彼女達に贈ったんだ。

 彼女達の世界にはあまり本がないらしくてね。

 とても喜んでもらえたよ」

 

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