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もふもふの街

「さて、次はキミが今腰掛けている椅子の上に乗っているクッションについて話そうか。

 クッションというより、手に入れた町についてだね。


 その町はね、もふもふな町だったよ。

 羊?

 いいや、違うよ。

 羊もいたけれどね。

 メインはアルパカなんだ。

 アルパカはキミたちの世界にもいたでしょう。

 あのアルパカなんだ。

 

 あぁ、もちろん、アルパカが人語を解するわけでもアルパカが世界を治めているわけでもなくってね。

 でもあの街はもふもふの町っていったほうがいいと思うんだ。

 町全体がアルパカ牧場でね。

 所狭しとアルパカが闊歩しているんだ。

 ぱカランぱカランってね。

 そんな足音なんだよ、あの街のアルパカは。


 でね、アルパカたちはなにをしているかっていうと、羊を飼ってるんだ。

 うん、この羊もキミたちの世界にもいる羊だね。

 

 アルパカがどうやって飼っているかって?

 それはね、羊たちが逃げ出さないように、街の周囲を交代でぐるっと囲っているの。

 アルパカたちが円を作ってるんだ。

 アルパカたちは賢くてね。

 羊が逃げ出さないのと同時に、外敵からきっちり守ってるんだよ。

 あの町にも狼がいてね。

 狼は、羊を常に狙ってるんだ。

 

 アルパカだって捕食対象だろう、って?

 うん、普通はそうだよね。

 でも違ってたんだ。

 イケメンアルパカがいてね。

 狼が近づいてくると、長い前髪を横に払って、颯爽と立ち向かっていくんだよ。

 一対一で戦えるだけの戦力が、なぜかイケメンアルパカにはあるんだ。

 イケメンアルパカが前足でぱっかーんと狼を叩いて撃退したときは、思わず笑ったよね。


 そんな賢いアルパカを飼っているのは、ボクたち人間でね。

 でも何もしなくてもアルパカが羊の世話をしてくれるし、食料の牧草は一年中春の気候で生え続けてるしで、特に働かなくて済むんだよね。

 

 羊の毛を刈るのも、なぜかアルパカが出来るんだ。

 このアルパカはイケメンアルパカじゃなくて、もふもふアルパカでね。

 アルパカの中でも特にもっふりとしているから、一目でわかったよ。


 もふもふアルパカが前足で優しく羊を撫でるとね、羊の毛が程よくふんわりと刈り取れるんだ。

 人がすることといえば、その刈り取られた毛を集めて加工する程度だよね。


 そのせいかどうか分からないけど、あの町の人々はとってもぽっちゃりとふくよかでね。

 人柄もおおらかで、ボクに沢山のお土産を持たせてくれたんだ。

 

 キミが今座っているそのクッション、もっふもふでふわふわでしょう?

 あの町で作られたクッションはなぜかずっとぺったんこにならないんだよね。

 今度よるときには、ぜひ寝具一式を購入したいんだ。

 きっと、夢心地だよね」

 

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