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第三話 いいともと叫びたくなる


「シロ。腹が減った飯を作れ」


 何だか納得のいかない名前を付けられ、一週間。一週間もすれば案外それも馴染んでしまうものだけど、呼ばれて振り返ってしまった自分に今更ながら悔しくなる。


「いいですよ。目玉入りスープと小指和えサラダと血色ご飯でいいですか」

「……とりあえず、人間が入っていないものを作れ」


 かつては死四天王と呼ばれた自分だが、今では極悪救世主の下僕。それに屈辱を感じないと言ったら嘘になるが、そんな自分を自分以下の存在を見ることで癒している。


「光輝! どうしよう! 今日の分の卵がない!」


 すでに主婦と化している元魔王エローラ=ロベス。通称お嬢は、言われていないのにもう昼食の準備に取り掛かっていた。さすがに一日の長があるのか、こっちの料理に関してはお嬢の方が詳しい。どうやら人間は人間を食べないが、豚の腸を引きずり、牛の舌を引き抜いて、鳥の子供を食べるという悪辣ぶりなのだと脅えた表情で語っていた。まさか、と鼻で笑ったが、実際に顔を血で濡らす生々しい救世主を浮かべてしまい、あながち冗談でもないことに気付く。


「卵ぐらいなくても何か作れるだろ」

「だって、冷蔵庫の中空っぽだぞ。白いご飯しかないんだ。せっかくオムライスを作ろうとしたのに」


 残念そうに語るお嬢。果たして、こいつは魔王だったのかと過去を思い出してみるが、まあ昔もこんな感じだったなと納得。


「仕方ないな。シロ。じゃあ、何か買って来い」


 ほら、と財布から通貨を渡された。

 はて? 食材を確保するのに通貨がいるのか。

 本気で首を傾げる俺に、救世主はああ、と気付いたような顔。お嬢は勝ち誇ったいやらしい笑みを浮かべた。


「お前、買い物のシステムとかわかるのか」

「ふふん。何だ、シロもたいしたことないな」


 とりあえずシロと呼んだお嬢にコブラツイストをかけながら、不満顔をつくり答える。

「わかりますよ。一応、魔界にも通貨はありましたから。まあ、いいです。適当に集めてきますから。人間はいらないんですよね」

「……何をしようとしている」

「ちゃんと狩って――」

「出前でいいか」


 広告を片手に電話をかけようとする救世主。何か間違っていたのだろうか。どうやら異世界間でのギャップはそう簡単に埋まるものではないらしい。お嬢は何気に順応が早いんだな、とホールドしているお嬢を見ると、お嬢は白目を剥いていた。放すと、糸の切れたマリオネットのように崩れる。一瞬ある種の不安が頭を過ぎるが、見なかったことにしよう。昼から寿司と呼ばれる高級料理らしいものを頼む救世主を片目に、とりあえずテレビをつけた。最近の習慣はいいともを見ることだ。




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