第零話 証言者は語る
まあ息抜きに読んでみてくださいな。肩のこらない小説目指して脊髄反射で頑張ります。
むかしむかし、などではなくてわりと結構つい最近。
とある世界のとある王国に、救世主が召喚されたそうだ。
救世主はこことは違う世界――つまり異世界の住人で、前の世界では単位も危うい平民だったくせには、なぜかこれまたとんでもない力を持っていたらしい。
最初は元のいた場所に帰せと国王をどつき、神子の胸倉掴んで脅しまくった救世主。しかし国王が金品をチラつかせれば、
「世界を救うのは私の務め。なぜ拒む理由がありましょう」
それはまた、手のひらを返したような態度であった、と姫は証言している。
さてまあ、人格はともかくその力は絶大だったその救世主。
国を襲う魔物をぶった切り、道すがら邪魔する魔物を踏み潰し、金品強奪のため魔物を刈り上げる救世主。
その姿は神か悪魔か。
悪魔に違いないと連れの賢者は証言していたけれど、まあそんなこんなで順調に、悪の元凶、魔王城へと到着したそうな。
ばっさり、ばっさり。幹部なんてなんのその。魔王城の死四天王なんていないかのごとくあっけなく蹴散らし、通過して、さあいよいよ魔王様とご対面。
そして運命は対峙する。
最後まで結局面倒臭くて動かなかった魔王様はこう言った。
「ふ、よく来たな。今までの貴様の功績、もとい悪行は余の耳まで届いている。どうだ、余と世界を半分に――」
「そろそろ帰らんと単位がマジ危ないんじゃああああああああああ!」
それはもう慈悲なんてあったもんじゃない、と連れの武道家は証言した。
あっさりばっさり魔王を倒した救世主。
役目を果たし元の世界に帰るとき、連れの神子も姫様も賢者も武道家も皆、涙したらしい。もちろん嬉し涙であったことは言うまでもない。ああ、やっとこの世界にも平和が戻る。
これで世界はハッピーエンド。さてはて物語もこれで終わり――などではなくて、やっぱり続きはあるのです。
あっさりばっさりやられた魔王様。そりゃあもう面目なんてあったもんじゃない。
つーか、あいついらなくねぇ? みたいな空気になるのも止む無し。
ああ、可哀相な魔王様。無情にも家来は魔王様を肩書きだけはそのままで、遠くの部署へと追いやった。
所謂、左遷。
「ほ、本気を出せば一発だったんだ!」
涙ながらに語る魔王様。でも、誰も聞いちゃいない。けれどそこはさすが邪悪な魔王様。城からありったけの財宝、秘宝、魔具を持ち出し、逃げ出した。
置手紙には、
「救世主を倒し、ぎゃふんと言わせてやる。捜さなくてもいい。心配はいらない。三時のオヤツまでには戻る。本当に捜さなくていいから。でも捜すときは戸締りだけはしっかりしといてね」
と、殊更に捜して欲しいことをアピール。
そして、困ったのは勿論魔王城の側近たち。
おいおい、どうする。財政難だ!
魔王様は魔界中に指名手配。
行き先はもちろんばっちり把握しているさぁ。救世主のいた世界に違いない。だって、手紙に書いてあるもん。だけど、どうする? 絶対魔王はやられているぜ。なんていったってあの、救世主だ。魔王が持っていた金品は確実に略奪しているに違いない。
困り困った魔界の宰相、重役、おじいちゃん。そして、選ばれた選択肢。
なんとか穏便に返してもらおう。菓子折りつきで。
そして交渉人という名の人身御供は出来上がった。
「超、面倒臭い」
そんな側近はやる気なし。
ぼちぼち書いていく予定です。お気に召したら、どうぞどうぞ。もう一回。