二者面談
数週間後に二者面談があった。周りの皆がセンター入試の対策に追われている中、俺は就職のことしか考えていなかった。やはり大学は恐い。自分が大学卒業後、良い社会人に成れているかと思うと疑問が残る。
遂に面談の番が来た。
「外山、お前は進路どうするんだ。」開口一番、担任の浜谷が言う。
「先生。オレ大学行くのやめます。」オレはきっぱりと先生に言う。
「何足ることを!我が鯰高校に進学したのに高卒で終わる気か。何があったんだ?」浜谷はポーカーフェイスで言葉は怒鳴っているが顔は無表情である。恐いものだ。
「オレ、姉貴がとある印刷会社で働いてて大卒の後輩をめっちゃDisっているんですけど。」
「DIS?駄目な犬山助五郎?」
「誰ですか!それ。」
「人の名前じゃないのか。せやな。じゃあ?日曜大工のことか?」
「DIY!ですよ。あれは。」
「じゃあ?Disって何よ。バンドの名前か?」
「あれは。ディルですよ。DIR EN GREY。」
「じゃあ?何だよ。」
「Disrespectの略ですよ。尊敬しないってことです。」
「あぁ。理解した。お前の姉は大卒の後輩をよく思ってないのか。」
「そうです。大学行っても無能な奴は無能だと言って。しかも大学入試を勝ち抜いた自負心で高卒を見下すんだと姉貴は言っておりました。」
「全く道理が分からん。何処がソースだそれ。ブルドックじゃねぇんだからよ。まぁ、お前が決めたならそれでいい。んで、就職するなら何処に勤める気だ?」
「とんかつ屋です。オレが勤めようと思っているところは。」
「何だそれ?ソースにかけとんのか?」
「いや。先生だってかけてるじゃないですか。かけ豚のか?って。」
「うるさいぞ。分かった。だが、宛はあるのか?勤める宛は。」
「有ります。洋風軒です。」
「洋風軒?何処だそれは。」
「洋風軒知らないんですか?ほら駅前のあそこですよ。」
「ん?あぁ。中々美味しい店らしいな。俺は味覚音痴でさっぱり分からないけどな。飯なんてインスタントで十分だ。」
不健康に違いない。浜谷先生はきっと野菜を食べていない。味覚障害なんだろう。だから味覚障害の浜谷先生の味覚を取り戻してもらえるように美味しい料理を作ってやるぜ。
オレは益々、浜谷先生の為に味覚障害を克服させる料理を提供してやると心に決めた。
浜谷孝三…県立鯰高校、三年四組担任の英語科教師、食にはかなりストイックであり、また服も貧乏くさいので世間の人から見れば彼は公務員では無いのではないかと思われている。




