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指導

来翔は来年から黒鷹グループに就職するにあたり、この店を瑛士と出雲に引き継いでもらう。その為に、日夜、作り方を伝授していた。

「良いかい。瑛士さん。少し固めの衣をまぶしてパン粉をつけてあげる。一度火を通した豚肉の燻製は少し厄介だが、慣れれば簡単に揚げることが出来る。」


「はい。先輩。こんなにも手間がかかるのですね。」瑛士は来翔に言った。

「あぁ。美味いものを作るには、妥協できない。手間を惜しめば失敗する。そりゃあ、効率を求めるのは大切かもしれんが、これは全て必要な過程だから省略することは出来ない。」


口ではこんなこと言いながら来翔は思っていた。師匠から教わって一年余月の若造が、こんなこと言って、きっと師匠は呆れているだろうなと。それほど、料理の世界は奥深いものであると来翔は重々承知している。


フライパンを回しながら、ラードと魚油を配合したオリジナルの油を入れてゆく。この油は最近、来翔が考え出した油で将来的につけ麺の香味油になるように工夫した油であった。

魚介の良い匂いが鼻をくすぐる。

「先生。魚の匂いがしますよ?」出雲は来翔に興奮しながら言う。

「そうそう。良く気付いたね。あれは、魚油を配合して作った油なのよ。」

「魚油ですか。良いですねぇ。来翔さんの個性を感じます。」

「ありがとよ。だけどこの配合もちゃんと憶えておけよ。もし、黒鷹グループから独立出来た場合に必要になるからな。」


黒鷹グループ、果たしてそこまで強固な機構なんだろうか。噂によると独占意識が強く、一度弟子として加入した者には、定年退職まで手厚く見てくれるらしいが、独立しようとするものあらば、影で殺されるという噂である。

(株)黒鷹ホールディングスの本社ビルの地下にある人事部懲罰課によって、不穏な動きを見せる者は処されるらしい。

あくまで噂ではあるが。リアリティのある噂である。

実際に黒鷹グループで働いていた何名かが行方不明になっているから。


嘘だと思うが、覚悟しなければならない。万が一のことを考え、遺書も準備しなければならないだろう。あれの場合は、坂本さんに自分の死を知らせて欲しいと頼むしかないだろう。そして、坂本さんに真言を唱えてもらおう。


来翔は未来のことを考えた。


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