神様 質疑応答 3
4/6 転生を転移に修正しました。
『悠佳の案は実に興味深いな。精霊と神域の安寧につながることだし、なるべく全てを盛り込む方向で取り計らおう。俺達にドーンと任せとけ!』
「素晴らしい!感謝する」
「さすが神、度量が大きい。ありがとうございます。よかったじゃないか、ハル」
「カヒューかっこいい!ありがとう」
神々からの肯定的な反応に怒濤の大火災が鎮火した悠佳はもちろん、他の兄妹も驚きつつも喜び感謝の声をあげた。
「私も!私もドーンとお任せですわ〜いずれは凜佳ちゃん達が気軽に遊びに行けるくらいに場を整えたいですわね〜♪全力で頑張っちゃいますわ〜」
「遊びに行くことが出来るなんて!凄いよフラミー!ありがとう!」
カヒュデンへ対抗してかフラミュルディの張り切った全力サポート発言に銀城兄妹は期待に瞳をキラキラさせ、カヒュデンも鷹揚に頷いている。
お手軽に界渡り出来るようにする為に、いったいどれ程の神々が精魂尽き果てるまで馬車馬の如くこき使われるかを想像するだに恐ろしいと、口を噤んだままムシュルデは震えた。
『まあ、神社として機能するのは暫くかかる。それまでは神域全体に認識阻害の結界をして事を進めることになるだろう。認識阻害はムシュルデが得意なんだぜ』
神と兄妹にスルーされ押し黙ったままのムシュルデをさすがに憐れに思ったのか、カヒュデンが水を向けた。
狩りだす神々のリストアップ中のフラミュルディはスルー継続であったが、銀城兄妹の注目を集める事には成功した。
「ルディー凄いね!精霊達の為に最高の結界をよろしくね!」
「カヒューが認める程とは頼もしい。能ある鷹は爪を隠すとはこの事だな」
「認識阻害が得意だから私達の所に来た時、神とは到底信じがたかったのだな。素晴らしい腕前に期待が高まるよ」
『……が、がんばるよ……うん……ありがとう』
凜佳は賞賛と期待をこめた笑顔でハードルを上げた。武人は更にハードルを高々と上げ、悠佳に至っては誉めてるようでいて誉めてないうえ、穴を掘ってハードル高低差を広げている。
転生体験回避の為にも全力で期待に応えるつもりであるし、それを叶えるだけの力もあり自信もあるが、なんとも微妙な心持ちになってしまったムシュルデである。ヘタレ返上への道は遠い。
『さあ武人の質問への答えよう。フラミュルディ、いいな?』
『……よろしいですわ』
カヒュデンの問いかけにフラミュルディは肩をピクリとわずかに跳ねさせ、応答の声は呟く程に小さく、常ののんびりと柔らかな響きはなく強張っていた。
『お前達を妄想世界に転移させると決めた理由だったな。一つにはお前達兄妹が気に入ったからだ。世界を新たに産み出す程の妄想は確かに稀有であるし面白いといえるが、全くない事でもない。元の世界から分離し張りついた状態の世界ってのは見たことなかったが……普通は世界が保てず、すぐに消えちまうばかりだからな。お前達の妄想世界を維持するにたる情熱と努力……端からは無駄に見えるであろう費やした努力を俺とフラミュルディは知っている。特に武道における修練は肉体のみならず、精神においても転移後に苦労することなく設定どおりの力を行使するのに役立つだろう。師匠だったお前達の爺さんは実にいい漢だったな。二つ目には集めた精霊達がお前達を慕ったことだ。存在することすら厳しい世界で在り続けられる感謝を示したいと、小さく微々たる力を自ら寄せ集め魔石を創造したのには驚いたぜ。彼処の世界で魔石なんざ久々に見た!』
子供が宝物を語るような無邪気な笑顔を見せるカヒュデンに銀城兄妹は面映い心地であった。武人が照れくささを誤魔化すように問いを投げかけた。
「祖父をご存知だったのですか?」
『厳しくも愛情深い、ちっと頑固だったがいい漢だった。よく酒を酌み交わしたもんだ……爺さんの話はまたにしよう』
脱線の気配にカヒュデンは自己修正をかけた。フラミュルディの爪が白くなる程に固く組み合わされた指や緊張に青褪めた頬に気づいたのだ。
『二つの理由はお前達を選んだ後からのもんだ。妄想が別に世界を産み出さなければ転移の予定はなかった。そもそも俺がお前達を選んだ理由は地球での精霊存続の為だ』
そうしてカヒュデンは地球有史以前の精霊、世界について掻い摘まんで語った。自身が暴れまくった部分は幾重にもオブラートにくるんだ内容であったのはやり過ぎた自覚が多少なりともあったからであろう。
銀城兄妹は精霊や加護持ち、彼らを慕い守ろうとした人々の受難に憤り悲しんだ。そして自分達が精霊と共に在れることで精霊が消滅することなく存続する安堵と誇らしさに胸が奮った。
『俺は精霊と共に在れるお前達を見つけたが、俺より先にフラミュルディがお前達を見つけ、精霊を集めはじめていたんだ』
フラミュルディに兄妹達の視線が集まるが、彼女は俯いたまま口を開こうとしない。兄妹達は戸惑い、ムシュルデは何度も話したくないと言ってはいたがと心配気に彼女を窺う。カヒュデンは青褪めていた肌が更に白くなった様に言葉を継いだ。
『正確にはお前達兄妹ではなく、フラミュルディはお前達の両親の為に精霊を集めるつもりだった』
カヒュデンの言葉に兄妹達は眼を見開き、フラミュルディの瞳は心定まらず揺れていたが、振り切るように詰めていた息を大きくついた。そして顔を上げることなく俯いたままポツリと告げた。
『……ここからは私が話しましょう』
沈んだ声でフラミュルディが語り始めた内容に元より知っているカヒュデンは気遣わしげに、ムシュルデと銀城兄妹は初めて知りうることに驚くばかりであった。
お読み頂きありがとうございます。
今後とも宜しくお願い致します。
ブックマークありがとうございます!
励みになります!