神様 質疑応答 2
4/6 転生を転移に修正しました。
それぞれに凜佳から愛称をもらい、和んだ空気が流れるなかカヒュデンがパン!と掌を打ち鳴らした。
『時間は限られている。話を進めよう!次は悠佳の質問への答えだ。お前達が転移した後の精霊の処遇だが、今後も精霊を集めるのは変わらないし、ある程度集まり力が安定したところで俺達が転移先の世界に送る。それまで精霊達は彼処に留まるからお前達がいなくなっても力ある場所となり在り続けるが、さすがに今のままとはいかないのは分かるな?』
確認に銀城兄妹が頷くのに、カヒュデンは子供のようにワクワクと踊る気持ちと偉業を成し語るがごとく誇らしい気持ちが入り交じりった笑みを浮かべた。
『そこでだ!都合よくお前達の屋敷の後ろには荒らされてない山がある。そこも含めて神域とし、社を建立し妄想による力の根源である例の部屋をそれっぽく囲い、本殿奥に神体として祀り、ガッツリ結界を張る……銀城精霊神社の完成だ!!』
『あらあら、言葉が足りませんわ〜現状別の世界として在るのを山までを覆うように引き伸ばし、元々の世界に程好く馴染ませますの〜そして神域全体に悪しき者や気が入り込めないよう結界を施しますの。神体周辺にはより強固な万能結界。精霊はこの万能結界は通り抜け可能にしますから、精霊も界渡りまで清浄な気に満ちた神域内で安全にのびのび過ごせますわ〜』
ドヤ顔のカヒュデンにフラミュルディは一見呆れたような様子を見せているが、反して瞳に熾烈な輝きをたたえ、唇の両端が弧を描くように獰猛に引き上がった様は手柄の独り占め許すまじ!との牽制であろう。
向けられたカヒュデンは小さく舌打ちしたものの肩を竦めただけだったが、端のムシュルデはとばっちり回避の為に二柱から可能な限り距離をとった。ソファーに座した状態であるから僅かな距離でしかないのだが心情的にであろう。
「……予想外の壮大な対応!悪しき者や気の浸入回避というと、そういった輩が神社に参拝しようと来たとしても神域範囲内に入ることすら叶わないと?」
今まで感情の起伏が抑えめだった悠佳が身を乗りだし、瞳をキラリと煌めかせた。虚を突かれたカヒュデンがそうだと短く答えたのに我が意を得たり!と更に瞳にギラリと力が漲った。
「素晴らしい!!精霊と場所を守るばかりでなく、人々が己れの善悪たるを知る試練の場ともなるとは!実に素晴らしい!……屑共め、恐れ戦き、己れの不徳を恥じるがいい!いっそそのまま消え失せてしまえ!」
豹変としかいいようもない高笑いする悠佳に神といえど些か驚きを隠せない。ムシュルデはあまりの豹変っぷりに青醒め固まってしまった。他の兄妹は慣れているのだろう彼に対する驚嘆はない。むしろ燃料投下する方向だった。
「神社なら御守りはお約束だよね!参拝に来れるなら善人でしょ?せっかく試練通過したなら御守りは欲しいよね!」
「そうだな。善人認定ラインがどの程度かが不明だが……リン、御神籤を忘れてるぞ。俺は神社に詣でたなら御神籤は絶対引きたい」
「そう!そうだとも!神社に御守りと御神籤は必須!御守りは白の綾織物に銀の繍が品があっていいんじゃないか?ゴテゴテの装飾過多はありがたみが薄れてしまう。銀城精霊神社ならば単なる御守りでは許されない!蔓延る輩、屑共はゴキブリ並みに駆逐が厄介だ!人生は己れの努力、気合い、情熱で選択し掴みとるのは当然だが、こちらが避けようにも輩は頭が沸いているから傍若無人に害悪撒き散らされて迷惑被る。御守りはせめて屑共回避機能か判別機能があって欲しいものだが……もちろん盗難対策もしなければ!屑共は手に入らぬ物ほど欲しがるからな。授けられた本人へのリターン機能があれば安心だが、さすがに奇跡の逸品すぎるか?……ならば、屑が御守りに手を触れたら眉間に‘’盗人‘’と消えない文字が浮き出るとかどうだ?額だと前髪や帽子で隠せるが眉間は隠しようもない。コンシーラーや整形なんぞに負けるような柔なものは却下だ!ガッツを見せろ!これなら誰もが不思議に思わず納得するのみ。屑といえども恥を知って少しは悔い改めるかもしれな……いや魂レベルのクズ、意味を悟る事すらできないかもしれん。逆恨みと責任転嫁は屑の標準装備だからな。やはり消え失せるのが精霊の為、世の為、善人の為だ!」
武人と凜佳の投下燃料は正しく悠佳の燃料となったようだ。燃料その一の御守りについてだけでも滔々と語り倒している。大火災だ。
カヒュデンとフラミュルディはなるほど面白いとヒソヒソ検討しはじめている。黒いものを感じたムシュルデが助けを求めるように武人と凜佳にすがる視線を向けたが、そこに救いなどなかった。
「やっとスイッチ入ってきたね!さすがハルにぃ盛り込んでくるわ〜……でもアレの事はGの略称!絶対略称!」
「確かにアレは略称にしとけ、リンの為に。それにしても、ハルにしてはまだまだ手緩い案だな……さすがのハルも神界で緊張してるのか?本領発揮に程遠い……案外可愛いとこあるじゃないか」
悠佳の語った御守りに関する内容に否やはないようだ。むしろ武人などは、いいぞ!もっとやれ!の推奨である。凜佳にキッと睨まれ、慌てて謝る悠佳の勢いが鎮静しかけたかに見えたが、凜佳が許した途端にすぐさま勢いを取り戻した。鎮火はまだ先のようだ。
「ところで、神域内に輩が入り込まないのはいいが周辺に群がられても煩わしい。悪い気を垂れ流されて参拝できる善人にも害があるやもしれん。日本国な……県内駆逐としたいところだが、私もそこまで鬼じゃない。町内駆逐で譲歩しよう。外部の輩は町に辿り着けず、既存の町内輩は地獄に落ち……訂正……己れの邪気にまみれて自滅退去で手を打とう。話はそれたが御神籤に関しては簡単だ!参拝できる善人ならば既に大吉状態といえよう。ならば大吉やら大凶やらの記載は不要。その者に必要な指針の言葉があればよいのだ!きっと正しく読みとき人生によりよく活かすことだろう。善人に幸多かれ!」
燃料その二である御神籤は参拝できない輩が関係しない為にスルスルと燃料消費し終わったようだ。むしろ途中挿入の町内輩駆逐案のほうが高熱量であった。輩さえ関わらなければ実にあっさりとしている。
悠佳の次なる発言を受けてカヒュデンとフラミュルディが更に楽しげにどす黒く検討に熱が入る姿に、ムシュルデはまさか全部取り入れないよね?理を無視とかしないよね?など次々浮かぶ不安が胸に渦巻いて、震える唇から言葉が零れ落ちる寸前であった。
『溺愛全面バックアップですわ〜♪お手伝い達を狩りださなくちゃ!』
『記憶改竄は町内と官系各所からの不干渉徹底は俺達で、県内から日本国内へは手伝いの奴等に任せればいいだろう。とやかくいう奴と録に手伝いもできねぇ奴は黙らせればいいだけだ』
『馴染ませはしますけど既に別世界。そこにあるようでない場所ですもの。違う世界の国に搾取される謂れはありませんわね〜』
極悪最凶コンビの不穏すぎる言葉が脳裏にザックリ突き刺さった瞬間に防衛本能が働いたムシュルデは、話しかけられるまで決して口を開かないと唇を引き結んだ。復活体験回避の英断であった。
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