神様 質疑応答 1
4/6 転生を転移に修正しました。
「まずは俺達の妄想がどこまで新しい世界に反映されているかです。例えば、俺達自身については容姿や能力が妄想設定のままなのか。世界設定はどうか。俺達が転生した時の状況や位置づけはどうなるか……とかですかね」
『世界設定はそのまま反映されている。多少の差異はあるかもしれんが、そこもまた楽しみにすればいいだろう。容姿や能力もそのまま反映されるはずだ』
『あなた達の森や山脈への結界は機能してますわ〜屋敷もありますし。勿論そちらにも結界が張ってありますから、転移後の生活に支障ないでしょう。ただ、あなた達は現状不在ですから世界との関わりがない状況なのですわ〜』
武人が最初にした質問が転移後に関する事柄とは、如何に銀城兄妹が現世に未練がないかが伺い知れるというものだ。
「関わりがないという事は眷属や庇護していた者達との繋がりがなく、彼方の世界では俺達は存在していない位置づけで知る者もいないという事ですか?」
『いや、彼方の世界はお前達を知ってはいるが知らないという感じか?』
「……よく、分かりませんが?」
カヒュデンが質問に対し疑問系で答えながらフラミュルディに視線を投げた。銀城兄妹もまた丸投げされたフラミュルディに注目した。
彼女はチラリとカヒュデンに冷えた視線を向けたが、あの子達の視線を独り占め♪と小さく呟き、兄妹にニッコリ微笑みかけた。これにはカヒュデンとムシュルデが呆れた視線を向けたが賢明にも沈黙を守った。
『元々あなた達の妄想が生み出した世界ですから、これまでの妄想ストーリーもまた世界の下地になっているという事ですわ〜ですから彼方の世界はあなた達を知っているし、眷属や庇護対象とも繋がりはあるという事ですの〜ただし、あなた達が不在の上での下地。直接の面識はないから知らないという事になるのですわ〜そこにもカヒュデンが言っていた差異がある可能性がありますの〜だって、あなた達が誰とも会っていなくとも、彼方は彼方で、関わりある者もない者も皆が生きているのですもの〜』
「なるほど。俺達が妄想してきたアレコレが世界に影響し下地としてあるが、妄想ストーリー上では直接会って話してたりした筈が違う関わり方に改変されている事で、その違いがどう反映されているかが不明と……まあ、そこは現地対応でどうとでもなるか……彼方には妄想ストーリーに登場していなかった住人などもいるという事ですね」
『世界が生まれ、力が満ちる過程での自動補完ですわ〜その世界の理に則った住人、国々……あなた達からすればモブかしら?それぞれに一生を送って栄枯盛衰していますけど。あとは動植物、魔族や魔獣、精霊なども補完対象ですわね〜未知の事柄もきっとありますわ〜楽しみが増えますわね♪』
「いえ、俺達は基本、森に引きこもるんで。自分達に関わりがないところは差異があろうが正直どうでもいいです。実害さえなければ……の話ですが。それより俺達の拠点である森とかの充実に勤しみたいですね」
「私達の妄想内で拠点から出たことは一度もない……ということは転移しようと確実に引きこもるのは決定事項。拠点防衛とモフモフの充実が最優先だな」
「あたしは精霊とは仲良くしたいな。あっちの精霊もだけど、あたし達と一緒にいるこっちの精霊達とも。あっちに行ったら魔素を好きなだけ取り込んで遊んで、のびのび大きく育って欲しいの。拠点を脅かす輩は蹴散らしてのんびり過ごしたいわね」
中々に台無しな結論をサラリと武人が言い、悠佳が引きこもりを重ねて主張し更にツッコミを誘う。凜佳は健気な希望の後に不穏な発言で締めくくる。
唖然と口をパカリとあけたムシュルデは呆然と言葉もなく、カヒュデンは愉快げに笑い、あらまあと可笑しそうにも微笑ましく見つめるフラミュルディ。銀城兄妹もまた楽しそうな笑顔を溢している。
『転移後はお前達の好きにすればいいさ。とにかく楽しみな!転移する時は俺達がいるから何の問題もないし、たまに遊びに行くからな!他に聞きたいことはあるか?』
『私も遊びに行きますわ〜♪ギューッしますわ〜♪溺愛しまくりですわ〜♪』
『おい!心の声が駄々漏れてんぞ!』
「どうして俺達を転移させてくれるか気になりますね。世界を生み出したからだけではないでしょう?それ以前に精霊を俺達に集めていたとの事ですから」
「私達が転移した後、生まれてくる地球の精霊達をどうするのか気になるな」
「神様達は何の神様なのかな?神話とかでも火の神とか色々あるじゃない?あっちの世界担当の神様いるのかな?」
未だ呆然のムシュルデをまたもや華麗に無視し話を進める二柱である。女神の溺愛暴走に怯むことなく次の質問を繰り出す銀城兄妹も肝が据わっている。
『順に答えたいところだが、答えやすいとこからな!まずは凜佳の質問から答えよう。神々に常に担当する世界はない。その時々にそれぞれの神が気になる世界へ干渉したり、傍観したりだな。あと俺達神には別に火の神とか何々神とか決まってないぜ。神それぞれの得意不得意、性格や嗜好、力の大小の違いがあるくらいだな。ひよっこの神なんかだと大した事はできねぇな!世界へ干渉した内容や結果でそこの住人が判断して、それぞれの世界で何々神てな事になってるな。まあ住人が勝手に信仰を興して、実際にはいない場合もあるしな』
「カヒューは何の神様称号があるの?」
『カヒュー?』
カヒュデンの説明で興味をひかれたのか凜佳が問うたのに対し、カヒュデンは呼び名のほうにこそ気をとられ、片眉をあげた。
「あ、嫌だった?転生した後も遊びに来るって言ってたし親しみをこめての愛称だったんだけど……ごめんなさい」
しゅんとして謝る凜佳の両側から慰めるように頭を撫でる兄達の眼は神に対して臆することなく、責めるようにカヒュデンに突き刺さる。因みにフラミュルディからも射殺さんばかりに殺気のこもった視線とともに踏み折る勢いで足を踏みつけられている。
『急に呼ばれて驚いただけだ!……嬉しいよ。ありがとう凜佳。俺は火の神や闘いの神あたりが多いぜ』
こいつらシスコンとかいうやつだなと認識を新たにしたカヒュデンの言葉に凜佳は小さく頷き、はにかんだ笑顔を見せた。
ホッとした様子でよかったなと、鬼の形相が幻だったかのように妹に対して穏やかな笑顔を向け、頭を撫でる兄達は確かにシスコンに違いない。しかも重度。処置なしである。
『凜佳ちゃん、カヒュデンは照れてただけですわ〜それよりも!私は?私も愛称で呼んで欲しいですわ!私の愛称は?』
「いいの?ありがとう!あのね、フラミーって呼んでもいい?神様の言葉の意味とは違うかもだけど、お花がフラワーで、お花みたいに綺麗だから響きが似てていいかなって」
「フラミー!素敵ですわ!お花みたいに綺麗だなんて嬉しいですわ〜♪」
のんびりした口調が消え、期待に満ち勢い込んで身を乗り出すフラミュルディにはにかんだ笑顔のまま伝える凜佳にフラミュルディは喜びに身悶える。
『ぼっ、僕も愛称欲しいな!……だ、だめかな?』
沈黙を保っていたムシュルデも慌てて声をあげる。神といえど仲間外れは嫌らしい。考えていなかったのか、うーんと人差し指を顎にあてた凜佳を伺うところはやはりヘタレである。
「……ルディって呼んでもいいかな?」
『うん!ありがとう!嬉しいよ!』
顔を合わせてから初めての力の抜けた、ほわ〜と春の日差しのような笑みを浮かべたムシュルデに凜佳は勿論、兄達もなんだかニッコリしてしまった。はじめムシューにしようかと思ったがフランス語のムッシュを連想し、ないわ……と、ルディに決定したのは決して言うまいと心に誓った凜佳であった。
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