神様 説明する
4/6 転生を転移に修正しました。
神々のなんやかやがあったものの漸く挨拶も終わり、各々がソファーへ腰を落ち着けた。
説明を省かれていたムシュルデはいよいよかと固唾を呑み、いささか緊張した面持ちで待ち構えている。
当事者であるフラミュルディは落ちついてる…なんて事はなく、蕩ける満面の笑みで兄妹達に指をワキワキと蠢かし近づこうとするのをカヒュデンの豪腕に腰をロックされ阻止されている。
フラミュルディの溺愛オーラを向けられている兄妹達はといえば、何ら怯むことも引くこともなく、泰然と説明を待っている。ただ、カヒュデンの暴走阻止の腰ロックを微笑まし気に見ているのは多大なる誤解である。それに気づいたカヒュデンがさも嫌そうに、違うからな!と否定するのに分かってますとも〜な生温い笑顔。誤解は解けなかったようだ。
『……護りの結界はしてきたが、空っぽの生身をあんまり放置するのもマズイからザックリ説明するな!彼処に精霊を集結させている事、お前達兄妹の妄想が世界として生みだされた事、地球に張りついている現状は、喚びだす時に説明して分かっているな』
確認するように兄妹とムシュルデに視線を送り、頷くのを認め言葉を次いだ。
『ところがだ。実はお前達の生み出した世界は正確には彼処じゃない。彼処はいうならば出張所みたいなもんだ。身体がまだ地球の理に捕らわれているからな。お前達の世界はまるっきり別にしっかりと世界として生まれでてる。お前達が何年も愛情と情熱を注いできた妄想の世界が本当にあるわけだ!そこにお前達を転移させるぜっていうこった!』
「「「よっしゃあぁぁぁ!!」」」
『ザックリしすぎだよ!……は?』
別に世界があるにも驚きだが、詳しい説明すっ飛ばしての転生確定宣言に突っ込まざるを得ないムシュルデの驚愕の声は、兄妹達の歓喜の雄叫びに掻き消された。
銀城兄妹はソファーから勢いよく立ち上がり、武人は拳を天に突き上げ、悠佳は小さくガッツポーズをし、凜佳は両手をあげ、互いに顔を見合わせると笑顔で抱きあった。
喜びに満ちた彼らの顔には不安や躊躇の色は欠片ほども見受けられない。期待と興奮、自分達の膨らまし続けた妄想世界が現実となり、そこでの新しい人生が始まることが何よりも嬉しいと輝く瞳が物語っていた。
『……君達、不安とか疑問とかはないのかい?今いる世界との決別だよ。行ったり来たり出来ないし、会いたい人にも会えなくなるんだよ?後悔しない?本当に分かっているのかい?』
「いろいろ疑問はありますが、不安はありません。転移して後悔することもないでしょうね」
突然の転生話に諸手を挙げる兄妹達にムシュルデの方が心配になり声をかけた。それに対する武人の答えは実にあっさりとしていた。他の兄妹も同じ考えなのだろう頷いている。
『何故?』
「私達を引き留めるに足る縁ある人達は皆、既に亡くなっている」
「あたし達にとって、今いる世界に何の未練もないの」
悠佳と凜佳もまた、あっさりと答えた。ムシュルデは戸惑いの視線をカヒュデンとフラミュルディに送るが、彼らは喜ばれこそすれ断ることはないと確信していたようで、満足気に頷いていた。
『転移を快諾してくれて何よりだ。武人、いろいろある疑問ってのはなんだ?』
『喜んでもらえて私も嬉しいですわ〜教えられる範囲でしたらお答えしますわ〜』
戸惑いを解消されることなく、華麗に無視されるムシュルデは傍観するのがダメージなく理解するに一番だと悟り、口をつぐむしかなかった。
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