兄妹 はじめまして
遅くなりました<(_ _)>すみません!
体調不良で屍化してました……病院に行って風邪をもらうのは釈然としませんね( ノД`)皆様もお気をつけて。
気勢をそがれた一同は元凶に一斉に視線を向ける。邪魔しやがっての気持ちが籠ったそれを向けられ、ビクリと肩を跳ね上げた人物は豊かな白い髭と灰色の弁髪の狼獣人で、顔は深い皺が刻まれた目元と鼻だけ覗いている。若干涙目になっているのは致し方ないだろう。怖い。
武骨な黒い木の杖をついてはいるが、その身体は老いが若干見えるものの十分頑強であり背筋もしゃんと伸びている。おそらく獣人の集落のリーダーであろう。
じっと眺めやりながら、敢えて何かしらの行動もせずに獣人の反応を待つ武人達は正直人が悪い。熊アニキ達の滑稽な三文芝居の再演でうんざりするか、はたまたリーダーであろう灰色狼爺様デビューが先かと観劇気分であった。もちろん、そんな気楽さはおくびにも出さない彼らである。
「長老様っ、こいつらが勝手に入って来やがって!俺様が今すぐに追い払ってや……」
「黙らんかっ!門番も録に出来ずに口ばかり達者になりおって馬鹿者が!聖獣様方の前で見苦しい姿を晒すでないわ!」
「俺様は馬鹿じゃなぃ……んぁ?聖獣様?……ぁひょああぁっ?!」
「ヒイィィィエェーッ…ぁばぎゅおッ!」
予想どおり集落のリーダーであった長老の登場に、焦ったように口角泡を飛ばして口火を切った熊アニキの声を遮り、目を怒らせ一喝した長老の言葉に反射的に反論を口にした熊アニキであったが、ジワリと言われたことと視覚に捉えた情報が追いつき合致したと同時に情けない叫び声を放ち、腰を抜かす。その影に隠れていた三下鼬もまた驚愕の悲鳴をあげたのだが熊アニキの尻に身体も悲鳴も押し潰され、目を回した。
ハクハクと言葉もない熊アニキと下敷きになっている三下鼬をチロリと見やり、凜佳がイイ笑顔を長老に向ける。
「はじめまして〜あたしはリン。長老様?道化といえども躾は必要ですよ?」
「はじめまして、俺はタケ。リン、本職の道化というのは観察眼やら頭の回転の早さやら諸々必須なんだぞ?こんなのと一緒にしたら道化に失礼だろう」
「はじめまして、私はハル。いやいや、彼らはそもそも道化ではなく戯け者だ。もしくは寸劇の門番役の練習でもしていたのかな?だとしたら、大根ながらも滑稽さは十分表現できているね」
凜佳に続いて武人と悠佳も実に黒くイイ笑顔を向けた。
三人の名乗りに驚愕に目を見開き、口をパカリと開けて長老は彼らを凝視した。長老にとって熊アニキ達への評価はどうでもよく右から左に流れていった。彼にとり驚愕は聖獣達が側にいるどころか、その背に乗ることを許し尚且つ、誇らしさをも窺えた。その姿をもさておき、三人が名乗った名前にこそあった。
『タケ、ハル、リン』
それらは聖獣が主と認める稀なる存在であり、何よりもこの森と山脈を守護する神とも過言なき主達の名前である。姿を見た者皆無なれど、紛うことなく存在する主達だ。
この豊かな森に長老をはじめ獣人達が外敵に怯えることなく暮らしていけるのは、偏に決して侵されることのない強力な結界が常に張られているからだ。それを為しているのが姿なき彼らであることは、森と山脈に生きる知性ある全ての者達が分かっていることである。
そしてもうひとつ。この森と山脈には獣人や魔獣や動物など様々いるが、人族は唯の一人もいないのである。膨大な魔力を持つ魔人やドラゴンなどでさえ為す術もなくお帰り戴ける結界である。更に言うならば、迎撃された場合は帰ることも叶わず、地に還る最期を迎えることになるだけだ。そのような結界を抜けて脆弱たる人族が紛れ込むことなど到底あり得ないのだ。
「……も、もしや貴方様方は……」
漸く混乱した思考から脱け出した長老は見開いた瞳を歓喜と感激に潤ませ、強張り嗄れた声を絞り出した。
いよいよやってきた自分達の森の主デビューに武人達は爆!誕!どやぁ!な気持ちを抑えつつ、厳かオーラエフェクト☆カモン!と念じながら微笑みを浮かべた。
「貴方様方はこの森と山脈の主……ジョーシルバーご兄妹なのでは!?」
「「「ぅぐはぁっ!!」」」
城銀兄妹☆爆!誕!
顔真っ赤な名前黒歴史がこの世界に適用されていた事実は、彼らに多大なダメージを一瞬にして与えた。
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ブックマークありがとうございます。
名前黒歴史いきてました(*Ф∀Ф)てへ。




