女神 我に返る
7/22 サブタイトルを変更しました。
7/23 加筆致しました。
「神様って人の過去未来とか性質とか、パパっと分かるのかと思ってたけど違うんだ?」
武人におかわりのお茶を貰い、やっぱり美味しいとニッコリ笑顔のままカヒュデンとムシュルデに問うた。武人と悠佳も確かに疑問であったので軽く頷き、顔を向けた。
『違わねぇぞ?パパっとじゃあねぇが、知る術はある。だが、大抵の神々は知ろうとはしないな。数多ある世界の中のその内の一人に俺達が目を留め、気に掛けること自体がまずない。個の優劣、善悪なんてものは各々の世界の中でのもんだ。多少秀でてたからって神々の目を引く程のもんじゃねぇ。では何故、神々が関与するか?各々の世界の有り様が気に入ったり、気に入らなかったり……神によっても理由は様々だが、大を見て小を見るってのが基本にある』
『そうだね。数多の内のひとつの世界に、その世界の一部に、一部の中の個にって感じだけど……まあ、僕達神が個に辿り着くことは滅多にないね。僕も一部の辺りで興味が満たされるし。世界やその一部に関与すること自体もよっぽど気に入ってるか、気に障るかしないと手出ししないかな。だから、もしも個に目が留まったとしても、関与する程でもなく見てるだけで済ますことが殆んどだね。カヒュデンは色々やらかしたりしてたけど?』
余計なことを……と言わんばかりにムシュルデを睨んだカヒュデンであるが、やらかしたに興味津々に瞳を輝かせる兄妹に満更でもなく、またの機会にな、と脱線を回避した。
『ともかく、個に意識が向くことが非常に稀なわけだ。そんな相手の情報がパパっと分かったら其処で終わっちまうだろ?つまんねぇから知ろうとしないってことだ』
『為人を知る楽しみだね。情報ありきで接したら、驚きも喜びも何もあったもんじゃないからね。力ある神程その傾向が高いよ』
『ひよっこほど神でございと全知全能感をひけらかしたがるのさ。なけなしの力じゃ出来ることも限られてるのにな』
なるほどと兄妹は納得に頷く。永きに渡り在る神を思えば、安易に情報を得ようとはしまい。退屈は敵だ。
「寂しくなったら、いつでも遊びに来てもいいよ」
『……凜佳、何故そうなる?』
「ん〜、じゃあ退屈したら遊びに来てもいいよで。神様としての威厳とかはここぞ!って時にして、普段は気にしないで素直に接して欲しいな〜……めんどくさいから」
『『最後、聞こえてるぞ〈よ〉!』』
「聞こえるように言ってま〜す♪カヒュー達が凄い神様なのは分かってるけど、あたし達に崇められたい訳でもないでしょ?あたしはお互い過ごしやすい距離感で仲良くしたいと思ってるの……と、いう、わけ、でっ!」
今の今まで纏いつかれたまま頭を撫でていたラミュルディをグイ、バリッと引き剥がし、思いきりよくペイッとソファーに放り投げた。清々しい笑顔の凜佳が肩をぐるぐる回しながらスタスタとダイニングにやって来る。
「「おつかえりー!」」
「おつたまー!」
凜佳はニヤニヤしながら迎えた兄二人にハイタッチとハグをした後、すかさずデコピンをかました。
「「いってぇっ!」」
「助けに来ないのが悪い!」
引き剥がしたフラミュルディを省みることなく、空いた椅子に腰掛けた凜佳は唖然とする男神達に気づいてニッコリと微笑んだ。
「おつかえりーはお疲れ様、おかえり。おつたまーはお疲れ様、ただいまの意味よ」
『『そこじゃない!!』』
「じゃあ、どこよ?」
兄妹間の短縮された言葉の解説をした凜佳は即座にツッコミを入れた男神達に不思議そうに小首を傾ける。本当に分かっていない様子の凜佳に戸惑い、ムシュルデはコッソリ兄二人に確認すると笑いを堪えるように武人が答える。
『彼女、本気で言ってるの?』
「本気だと思いますよ。輩相手には塵も見逃さないって感じですが、俺達や親しい間柄だとあんな感じですね」
「そこがまた可愛い」
「ハル、割り込むなよ……だが、重ねて言おう、そこがまた超絶可愛い!異論は認めない!」
『…………』
生温い視線をシスコン兄弟にムシュルデが向けている目の端に、放り投げられて放置されていたフラミュルディがノロノロと身を起こすのが見えた。
キョロキョロと辺りを見回し、兄妹と男神達にに気づくと暫しじっと見つめ、ふいに朱に顔を染めた。
『わ、私っ!何てことをっ……ご、ごめんなさいっ!』
「あ、おつかえりー!気にしない、気にしない。あたしもあのままだと永遠にソファーの住人になりそうだったから、強制解除でフラミー放り投げたしね〜お互い様ってことで。今後は程好くね」
己れの行状に思い至り、恥じ入り狼狽えるフラミュルディに気づいた凜佳はパッと駆け寄り、軽く頭を撫で、柔らかく抱きしめポンポンと落ち着かせるように背中を叩いた。
『……お恥ずかしいところをお見せして、申し訳ございませんでしたわ』
暫くして落ち着きを取り戻したフラミュルディは皆に改めて謝罪した。
『もう気にするな。不可抗力だから皆も気にしない』
カヒュデンが皆の総意を伝え、彼女が我を忘れていた間のことをざっくり、彼らしくざっくり伝えた。ムシュルデが何度も補足する羽目になったのはお約束通りであった。我を忘れていた間の兄妹の話に興味津々のフラミュルディの様子にまだまだ時間がかかるであろうことは自明の理であった。
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