兄弟 雑談する
4/6 修正しました。
「魅了籠落といってもそんな大層なものでもない。大抵は好意的になる程度だが……どはまりする奴がたまにいて、これが厄介なんだ。しかし幼児返り?は初めてのパターンだな」
興味深くフラミュルディを観察しながら悠佳が何でもないように言う。相手がフラミュルディであるから幼児返りと認識され見過ごされているだけであって、これが男神のどちらかであったならば即座に変態認定、罵詈雑言付きで引き剥がしにかかっていただろう。
「しばらく放っておいたらフラミーも落ち着くでしょう。その間に俺達は万能結界を体表面に常時発動の練習でもしましょうか。過保護なルディの合格を貰わないと屋敷から出れないみたいですからね」
『ヘタレな上に過保護……確かに』
ニヤニヤしながら三人がムシュルデを見る。暇潰しのターゲットにされてしまったようだ。ここは下手に反応すれば練習どころか、弄られてタイムアップになりかねない。そんなフリには乗らないぞ!と、若干ひきつりながらもニッコリ笑顔で快諾した。
『そうだね!練習しよう!』
当てが外れ、えーっ!そっちじゃないでしょ!と皆からツッコミが入ったが、必要な事ではあったから、武人と悠佳はしぶしぶながら真面目に練習を始め、カヒュデンもコツを教えたり先生役に徹した。
その結果、フラミュルディが落ち着くどころか、十分程度で万能結界の常時発動をマスターしてしまった。神が認める妄想力と培われた鍛練によるものだろうか。
予想外に時間をもて余す事となった彼らは場所をすぐ脇のダイニングに移した。設えてあった魔道具――冷蔵庫、コンロ、オーブンなど――の機能確認も兼ねてお茶を淹れると言い出したのは武人だ。単に魔道具を使いたかった訳でない。いや確かに嬉々として魔道コンロを使っているが。
「茶葉があったのは僥倖!味の確認とブレンドの探求はおいおいするとして、どの茶葉を使うか……おっ!鑑定眼はパッシブなのか!じっと見てたら説明文が出てきたぞ…………ん?」
【珠露草の茶葉】
・最高級品。別名、精霊の茶葉。
・険しい山の頂きに群生し、精霊に認められた者にしか採取出来ない珠露草の茶葉。
・生半可な者が淹れると安物茶葉の出涸らし並みに味が激落する。技量がないなら売るべし。
※日本の最高級玉露を遥かに上回る美味。
「……これは俺に対する挑戦か?いいだろう、受けて立つ!珠露草のお茶を淹れよう。反論は認めない」
この男、食に関して絶対に譲らない。兄弟内での料理スキルは追随を許さず、銀城家の台所に君臨している。因みに悠佳と凜佳も困らない程度のスキルはあるし、面倒とも思わない。ただ充実した食生活の為に手を出さないのが最善と理解しているだけだ。
「魔道コンロは火力調節がイマイチだな。炊飯器がないじゃないか!これは早急案件と……あぁ茶がうまいな……あとは……」
難なく淹れられた美味しいお茶を堪能しつつ、魔道具やテーブル、茶器に至るまで細部にわたり検分しているのは悠佳である。皆との会話の合間に巻顕智のメモ機能に改善と作成リストを続々と記している。
黙っていれば王子様なこの男、バカが付くほど物を作るのが大好きなのである。例のジオラマやフィギュアなどの造形物はほぼ彼の手によるものだ。武人と凜佳もかなり器用な部類に入るのだが、悠佳は次元が違う。
例えば、夏休みの宿題として作ったのがペーパーナイフ――この時点で既におかしい――だ。祖父の知人である刀鍛冶に手伝ってもらったとはいえ、初心者が紙どころか、そんじょそこらのナマクラ刀など断ち切るんじゃないか?な、もはや刀と称するしかないペーパーナイフサイズの一振りの名刀を作り出したのだ。
もちろん提出なんぞ出来る筈ない。せめて使おうと、優美華麗なシンデレラ城の立体ペーパークラフト――仕方なく適当に?いや、おかしいよね?――を作成提出した。
一連の話を雑談程度の軽さで話す兄弟にカヒュデンは面白そうに、ムシュルデはあんぐりと言葉もなく驚愕するばかりだった。
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