兄妹 レクチャーと溺愛
前回のお話で1000pvを越えました。
誠にありがとうございます<(_ _*)>
妄想世界転生後の兄妹も宜しくお願い致します。
4/6 修正しました。
沈んでいた意識がゆっくりと穏やかに吸い上げられるように戻り、パチリと瞼を開く。長らく抱えていた荷物から解放されたような、スッキリと清々しい目覚めであった。
兄妹達は時を同じく目覚め、それぞれに伸びをしたり、手をニギニギと開いたり閉じたりし、互いを見やりニコリと微笑む。笑顔はクスクスと次第に高笑いとなり、凭れるようにかけていたソファーからやおら立ち上がる。
「「「妄想世界に爆誕!!」」」
実際には密やかに界を渡ってきたのだが、気持ち的に爆誕なのであろう。
一連の様子を微笑ましげに眺める神々。約一名はお馴染みの腰ロックで捕捉されていたのは致し方ないだろう。神々が佇むのに気づいた兄妹は口々に感謝を述べた。
『俺達からああしろこうしろとかは一切ない。新たに始まる人生を存分に、自由に楽しめ!』
『今までより危険な世界だから……敵対者に情けをかけず躊躇せず確実に止めを刺す事。何事も念には念を入れて足を掬われないようにね』
『彼方の世界の澱が全て取り払われて……なんて麗しい……(はっ!この子達に懸想する輩対策をしてませんわ!ん?……そうね!えい♪)あなた達が健やかに過ごせるよう祈りますわ〜』
神々はそれぞれに前途について言葉を贈る。そのうちフラミュルディが途中でやらかした感が神サイドでは半端なかったが、ムシュルデは兄妹への心配で見過ごした。カヒュデンは気づきはしたが、兄妹溺愛暴走女神ではあるが、彼らを害する事はするまいと妙な信頼のもと、何をやらかしたのか確認することもしなかった。
『さて!俺達が神界に戻る前に教えておくべき事がある。まあ確認だな!』
兄妹をソファーへかけるよう促し、自分達も対面に腰をおろす。
周囲には一緒に来た精霊達が部屋のあちらこちらを探検でもするように、どこかウキウキとした気配で飛び回っている。
『分かっているだろうが、ここは妄想世界でのお前達の屋敷の中だ。俺達がここにいる事は外部に分からないようにしてある。邪魔が入らないようにな』
『彼方とは違う事がありますから説明が必要だと思いますの〜。最大の違いは魔素や魔力、魔法ですわ〜。魔素は自然から生み出され、魔力は生物が保有してますの〜。魔法は己れの魔力を消費して発動させるか、漂う魔素を取り込んで魔力変換して使うかですわね〜』
『お前達の妄想設定でも同じだったから問題ないだろう。己れの内側に意識を集中させれば、魔力を感じとり操れる筈だ。あとは明確なイメージだが、お前達には容易いだろう』
『まずは蝋燭の火をイメージして、指先に魔力を集めて発動してみましょう。念のため、腕を伸ばして身体から離して試してくださいませ〜』
神々が促すと兄妹は瞳を閉じた。己れの内側を巡る魔力を意識し、捉えた魔力を伸ばした腕を通し指先に送る。瞳を開き指先を見つめた瞬間、ぽっと三人の指先に小さな火が灯ったように現れた。
おお〜♪と成功に声をあげ、使用魔力を増やして炎を大きくしたり、より高温の青白いバーナーのような炎を発動したりする。
またボールのように丸くしたかと思えば、それを収束圧縮し槍の形にしたりと、各々が楽しげに次々と魔法を試していく。
軽々と初めての魔法を発動、更にはアレンジする兄妹の姿にカヒュデンとフラミュルディは満足げに、魔力暴走を警戒していたムシュルデは肩透かしをくらい、安堵しながらも呆然と眺めた。
『流石、爺さんの元で鍛練してただけある。魔力操作や魔法に関して問題は全くないな!魔力量もアホ程あるが無尽蔵じゃない。はしゃぎ過ぎの魔力切れにだけは気をつけろ……そうだ、これをやろう!常に身につけておけ』
玩具を与えられた子供のような様子を面白そうに見ていたカヒュデンが、己れの腕にジャラリと幾つもつけている細い腕輪の一つを抜いた。
それを軽く振ると一つが四つに増え、神の御業に目を見張る兄妹にそのうち三つを渡す。
【暴魔食の腕輪】――神器・カヒュデン――
*周囲の魔素を魔力変換し、消費された魔力分を常時補充する。
*銀城兄妹専用。リターン機能付き。盗人には神の怒り発動、眉間に"盗人"と生涯消えぬ文字が浮き出る。
*破壊不可能。
溺愛暴走女神の事を言えない溺愛な逸品であった。何気に悠佳が御守りで提案していた盗難対策を組み込んでいる。
『こうも容易く魔力を操るとはね……攻撃魔法だけじゃなく防御魔法もしっかり練習する事!空間魔法の万能結界を体表面に常時発動が最低限出来るようになるまで、屋敷から出ない事!……うん、魔封じ対策にこれをあげるよ!転生の贈り物とは別だからね?』
心配が尽きない故の高難度の条件付けをする過保護ムシュルデであるが、彼もまた溺愛を発揮する。対抗意識が発揮されたともいう。
彼の瞳と同じ綺麗な琥珀色の石が嵌め込まれた額飾り―サークレット―を外し、軽く振り四つに増えた内の三つを再度振ると、嵌め込まれた石は兄妹それぞれの瞳の色―碧、紫、緋―に変化した。
【撃封破の額飾り】――神器・ムシュルデ――
*魔素、魔力の使用を制限された状況に於いて魔封じを無効無力化し、魔法行使可能とする。対人、対物対応。
*肉体、精神干渉魔法無効。
*銀城兄妹専用。リターン機能付き。盗人には神の怒り発動、眉間に"盗人"と生涯消えぬ文字が浮き出る。
*破壊不可能。
張り合うにも程があるだろう逸品である。これにもやはり盗難対策が組み込まれている。神々はよほど気に入ったようである。
これらを見て俄然、闘志をメラメラ燃やしたのはフラミュルディだ。兄妹溺愛に於いて負ける気など更々ない。
『火、水、風、土、光、闇、空間、精霊の魔法属性。戦闘、付与、召喚、錬金、生産などの多種多様なスキル。あなた達の創意工夫が楽しみですわ〜……彼方ではタブレット型端末で妄想世界を管理していましたわね〜此方に持ち込むのは無理ですから、代わりにこれを差し上げますわ〜』
ほっそりとした左の中指から指輪を抜いた。それは読み取れぬ文字のような、植物のような不可思議な文様が微細美麗に彫り込まれている。
それを先の神々と同じく軽く振り数を増やす。そして優しげに柔らかな笑みを兄妹に向け、三つの指輪を渡すと兄妹の意識が指輪に向く。お前なんてモノを!と顔がひきつる神々に、溺愛の神髄を見よとばかりに口角を引き上げた。
【巻顕智の指輪】――神器・フラミュルディ――
*知識や技能などを一覧表示、管理、実行。脳裏または空中に展開。
*鑑定眼――妄想世界事象完全網羅――
*地図作成表示――サーチ機能付き――
*銀城兄妹専用。リターン機能付き。盗人には神の怒り発動、眉間に"盗人"と生涯消えぬ文字が浮き出る。
*破壊不可能。
『ちょっと便利なように、地図と鑑定の機能もオマケで追加しておきましたわ♪』
ちょっとどころじゃない激盛りオマケ付きの逸品に勝ち誇り輝く笑顔、自重しない女神フラミュルディ。兄妹溺愛において彼女を越える者なし。そんな勇者はいないし現れても彼女に生命の根を……いや、これ以上言うまい。
驚くべき逸品の三種であるが、これらは神々の装身具本来の力を持つ複製ではない。神ならざる者が身につけ、使用出来るようにしてある。本来の力のうち、ほんの一端の力を付与してあるに過ぎないのだが、この効果。溺愛恐るべし。
神々からの話を聞いていた兄妹は一区切りついたところで、思いがけない素晴らしい贈り物に感謝の言葉とともに丁寧に頭を垂れた。
顔をあげた兄妹はキラキラと輝く笑顔で、目の前に並ぶ三種の逸品に興奮を押さえきれず、勢いよく立ち上がり吠えた。
「「「これは滾るっ!!」」」
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