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剣姫のラスターエッジ  作者: 玄弓くない
1篇 爆誕!! 銀剣の魔法少女
9/18

1-8 煌めく刃

夜更かししてでも更新

よい子の皆は真似しないでね

 


 気付けば、戦場の背景と化していた。


 かなり遅れて自分達が路傍の石みたいな扱いを受けていることを知り、正義のヒーロー、ヴァリアント・フォースのリーダーは愕然とする。


 いつの間にか拳を交わしていたヌイグルミの部隊は姿を消し、少女達の姿を呆然と見つめる自分達だけが戦場の隅にいた。



「……っ! 皆いくぞ! あの白い子を援護するんだ!」


「おいおいレッド、突撃したところでまたヌイグルミ呼ばれんぜ」


「馬鹿イエローの言う通り、得策ではありません。我々は”今後”のために傍観に徹するべきです」


「誰が馬鹿だコラ」


「ブルー、傍観する理由を俺とレッドと馬鹿イエローに教えてくれない?」


「わざわざ馬鹿って言うんじゃねえよ」


「ブルー、説明を」



 文句を垂れるイエローを華麗にスルーし、レッドはブルーに向き直る。


 顎を手に乗せる仕草をしたブルーは軽く頷き、その目で戦場の中心を見やる。黒光りするバイザーの奥で青白い目が細くなり、現状の分析をした。


 ヴァリアント・フォースの作戦参謀たるブルーは、チームの為に責任ある判断を下す必要がある。例え、それが今回の活躍に繋がらなくとも、先を見ることも大切だと。


 そして、その結果を語る。



「あの白い魔法少女。彼女が一体何者で、どんな力を持っているのか。不足したそれらの情報を得る必要があります」


「なるほど、味方だろうと敵だろうと、まずは探ることから始めるんだ」


「ええ、そうです」



 物分かりの良い後輩のグリーン。



「知らねえよ。そんなモン戦えばわかるだろ?」


「味方ならとんでもないことですよ」



 馬鹿と言われる理由がわからないイエロー。



「直接訊けば良いのでは? コミュニケーションも取れるし」


「敵なら危険ですよ」



 それだから作戦指揮を任せられないレッド。


 何はともあれ、自分達がまるで手も足もでない魔法少女へのカウンターになるかもしれない存在。それが現れた以上、先ずは見極める。


 ブルーはそんな、かねてより待ちわびた作戦を実行に移すのだった。







   ☆★☆







 両手に感じる鋼の重み。それを感慨深く思考し、ミュウは刀剣を強く握る。


 グラジオラス。ミュウは未だに正体を知らないが、説明書に記されていた使用方法は大体理解した。


 日本刀に似た形状の刃に迸る、白銀の炎。それは目視できる程までに実体化した『剣』の概念。


 グラジオラス内部のマジックカートリッジ機構により、内臓されていた魔法術式が発動。魔力の弾丸を消費することで、機械剣の一機能が起動した。





 レイニア式概念魔法。


 ミュウ自身、母親の涼からは使い方を教授してもらっただけで、その魔法の名も知らない。


 だが、洸として生きてきた人生の中で“そういった戦闘の素養”は若干鍛えられてきた。今時の男子たるもの、伊達にマンガやゲームを見てきていない。


 そして、澪が保有する魔力は初戦闘にも無難に対応できるだろう。何せ、術式のみの変身を練習無しで成功させてみせた。


 後は、戦う意志。





「突撃あるのみ」


『主、戦闘プランは』


「うーんと、…………その場の展開ノリ?」 


『危険です』



 一応考えはあるものの、立派に作戦と断言できない為に内緒にしておく。


 そもそも、ミュウはこのグラジオラスを既に信頼していた。涼が何らかの意図を持って仕込んだ代物。恐らく、何かある。しかし、武器を選別し調達してくれたのだ。


 あんな母親でも、頼りになる。ミュウはそう思う。



『主、迎撃を』


「むっ」



 ミュウの視線の先で、スレンナが笑みを浮かべる。クスリと、悪魔のような優雅な笑顔。それは、余裕からきているのだ。


 ならば、その余裕を切り捨ててくれる。


 スレンナが両手を振り下ろす。


 波打ちしなる、妖艶に輝く糸。鞭とは違い、細さと鋭さで標的を切り刻む武器。鋼糸の魔法版といったところか。


 しかしそれらは、何本にも何重にも並んでいた。『線』ではなく『面』に見える。



「──たあああっ!!」



 横薙ぎ。


 試し斬りにも等しい軽い一振りが、その糸を全て裁断せしめた。


 僅かだが、スレンナの表情に驚愕の色が混じる。笑みを崩してやった。





 白銀の『剣』の属性を持った概念は、“それそのものが剣である”。剣が意味するものは断ち切る力、切り裂く存在の顕現。


 シルバーブレイドと呼ばれる概念魔法を纏った剣は、悉くを斬断する。


 ……しかし、その概念魔法は短期間で使用できる段階のものではない。そして、通常の魔法使いが使用できるものではない。


 故に、カートリッジを武装そのものに装填するという荒技を使ったわけだ。





 たった一撃。使い慣れていないこともあり、シルバーブレイドは粉雪のように消滅した。強力な切れ味は一旦失われる。


 しかし、また使用するだけのこと。


 ミュウはすかさずトリガーを引こうとし、しかし割り込むように入るソウドからの通信で止まる。



『主、魔力の残量にご注意ください』


「へ? まだあったけど────んなっ!?」



 VRサイトにより、視界の上端に『MP』なるタグ名が付けられたらバーが見える。自らの残存魔力量を表したゲージであり、戦闘を有利に進めるために必用したいものだ。


 先程は満タンまで溜まっていたと思われるゲージが、何故か三割弱ほど減少していた。カートリッジの消費によるものではない。


 どういうことか。



『申し訳ございません。表記する数値に誤差があった模様で訂正致しました。“私が起動する前に魔力を消費したようです”』


「そんなに使った覚えは…………。いや、あった」



 簡単な話だ。


 本来の魔法少女への変身に必要な魔力は、MPゲージ外の数値だ。だが、変身後に使用した魔力は全て、ゲージにバーの長さとして表記されることになっている。


 つまり。



「……初めての変身だからってはしゃぎ過ぎたかなー。演出に凝って派手な魔法使ったし」


『主、それは自滅行為です。何故なにゆえにそのようなことを』


「いやヒーローってそんなモンじゃない? 最初はね」



 ヒーローにとって初登場は第一印象は勿論のこと、敵に対しても充分な威嚇行為になる。……と、そのような理由付けはできた。


 単純に、最初の変身は特にカッコ付けたいだけだ。時間や演出、その他諸々を。



「何を喋っていられますのかしら!」


「うわヤバっ!」



 スレンナが繰り出した鞭による攻撃を刀剣でいなし、続く連撃を伏せて避ける。今のは危なかった。


 敵の間合いで暢気に思考に浸るとは。自滅行為に続いて自殺行為にも至る。これで自爆行為も満たせば、『禁忌の3G』(命名、洸)の完成だ。


 則ち、命はない。


 ミュウは身体のバネを活かし、下がった体勢から刀剣を持たない左手で飛び上がった。


 片手による助走なしでのロンダート。加えて、スレンナを飛び越えるほどの高さへ。


 嘗て洸が考案し成功しなかった荒技も、変身による身体強化が可能にした。


 ただ、手が痛い。こんな早い段階で酷使してしまった。


 空中で適当な体勢に移ったミュウは、スレンナのがら空きの背に、上段から斬りつける。



「もらった!」


「その台詞、失敗フラグですわ」


「な、なにぃ!?」



 突如、地面から這い出た手が刀剣を受け止めていた。指はなく、弾力性と柔軟性に富んだ布地に包まれた腕。


 円形の魔法陣からクマのヌイグルミが顕現し、グラジオラスの刃を真剣白刃取りで固定する。あまりもの怪力に、ミュウは動きを止めてしまった。


 スレンナが優雅に指を打ち鳴らす。


 別に展開する複数の魔法陣から輝く糸が飛び出し、刃に巻きつく。更に厳重になり、グラジオラスは寸分たりとも動かなくなった。



 捕獲。



(あれ? やばくない?)


『主、危険です。私もあなたも』


「さぁて、それじゃあミュウちゃん?」



 コツコツとヒールを鳴らしてスレンナが近づいてくる。ヌイグルミの背裏から回り込んで現れる表情は、満面の笑み。悪魔の。


 勝利を確信した笑顔だ。“わかっているらしい”。


 その憎たらしい顔に殴りかかりたいが、相棒ソウドをヌイグルミに渡すわけにはいかないし。剣は手離せない。



「さあ、人形にして差し上げますわ!」


「ふんっっっぬぐおぉぉおお!!」



 スレンナの手に、妖しげな光と魔法陣が展開する。まさか、魔法少女にも通用するとか。


 気合い一声。全力を“機械剣”を握る両腕に篭める。そう、これは“ただの剣ではない”。


 柄に設けられたトリガー引く。三発撃。駆動音を撒き散らし、銀色の薬莢が三つ排出イジェクトされる。



『シルバーブレイド展開。弾数3』


「せえあぁぁあ!!」



 白銀の炎が再び、先程よりも激しく燃え盛り、より強固な『剣』の概念を剣が纏う。


 瞬間、グラジオラスの刃を固定していた糸が音を立てて千切れ、ヌイグルミの腕を軽々しく突破。機械剣は流れるようにその頭部に叩き込まれる。


 が、力み過ぎた。


 悉くを斬断せしめる白銀の刃。


 意味するはヌイグルミが脳天から股まで真っ二つに両断される事実だった。効果音が生々しく、流血するように魔力が噴き出す。


 直感的に後退していたスレンナの目に、崩れ落ちるヌイグルミの姿が映る。


 今までどんなにヒーローに殴られてもものともしなかっ兵隊が、あっさり二枚おろしされた。アレでは縫って修復することもできない。


 ミュウさり気なくそれを狙っていた。



「く、くま…………ちゃん」


「おおう…………やっぱり凄い切れ味」


『えっへん、です』



 一撃を終えても尚勢いを緩めない白銀の炎に、ミュウは素直に驚嘆していた。説明書の通りに操作し、魔力を調整するだけでこの威力。何と素晴らしきかな。


 ────これなら“もっと凄いことができそう”。


 形だけはあった戦闘方法が輪郭を帯び始め、まともな作戦になるのを感じた。つい、ニヤーと口元が綻ぶ。


 嬉しい。楽しい。喜ばしい。あ、喜ぶのはまだ早いか。


 スレンナを見やれば、またもやヌイグルミ部隊を召還していた。だが、通常とは様子が違う。


 より広く、大きな魔法陣から現れるヌイグルミ。その身は、スレンナの魔力と同じ妖しい赤紫をしていた。牙やら角、尻尾らしき部品もあり、鋭利な爪を生やしている。


 精鋭部隊、というわけか。



「くまちゃん16号の仇、ですわッ!!────庇護者が近寄り難き悪魔の玩具よ、その牙で獲物を喰らい、爪で引き裂けッ!!」


「詠唱するってことは……、より強力な魔法なのかな?」


『よくご存知で、主』


「伊達に少年マンガ読んでなかったからね」



 3メートルはある巨体や鈍重そうな外見の割に、精鋭らしく素早い。牛がタックルするような体勢で地を駆けてくる。脚力のあまり、コンクリートが踏み砕かれていた。


 当たると痛そうだ。


 故に、動きを止めてもらう。


 大地に円を描くような歩法。敵の攻撃をいなし、受け流し、そして斬る。


 白銀の炎が弱まる度に、トリガー引きその魔法を維持し続けた。


 突進を紙一重で避け、擦れ違い様に機械剣を走らせる。白銀に煌めく刃は、次々とヌイグルミ達の手足を滑らかに斬り落としていった。


 体勢を崩したヌイグルミに待つものは、後方に消えたはずの少女が“既に放っていた斬撃”。


 人形らしく、部品ごとに分解された兵隊達は慣性に則りミュウの背後へ飛んでいく。積み重なり山となったそれらは、派手に爆発して魔力を散らした。


 斬断。刃はただ、あるがままに道を通る。





「さて、それじゃあヒーローらしく………………“アレ”使おうかな」


『残弾0。……“アレ”とは?』


「決まってるでしょうが」



 カートリッジを使い切り、白銀の炎はその勢いを終息させていく。機械剣を逆手に持って下げ、威風堂々とスレンナに振り返った。


 機械剣の冷却機能が作動し放熱機構が展開。空気口から勢いよく蒸気を噴出させる。





「────必殺技、だよっ」





次回、ミュウ(澪)がド派手に決めます

“アレ”を

三c⌒っ.ω.)っ シューッ

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