4話
「ふぅん。だから最近魔物が多いのかぁ。なんだ、僕が嫌いだから来るのかと思った」
何度も魔物と戦った今日の夜、華僑と僕は話していた。最近、魔物が多く凶暴化していることについて。
華僑曰く「もうすぐ月が重なるぐらいじゃないからかな?」ってさ。
「いや、さすがにそれはないと思うけど。ま、その話に信憑性が無いから何とも言えないけど、調べてみる価値は無い?どっかの国なら資料とかありそうだし」
「あると思う!よし、ディとかナイトも誘おう!皆で旅だ!」
「(正直二人で行きたかったんだけどな。まぁ、いいか)」
僕は早速二人の所へ行こうとしたが、華僑にもう夜だからと止められた。
むぅ、何たら吉日って言うじゃんか!……まぁ、さすがに結構遅い時間だけど。
華僑が自分の部屋に戻り、僕はフィナに話しかけた。
「フィナは信じる?魔王を」
「ピ(うん)」
「へぇ。あれ、フィナって何歳だっけ?」
「ピィピ、ピピピピ(人間で、一万歳)」
魔島とウィリシア、ニナ大陸では時間の進行がまったく違う。確か、魔島の500年が2大陸の1年だった筈……。人間が魔島に500年居ようとも身体は1年しか進まないし。
第一、魔獣は何億年と生きるのもいるんだよなぁ……。
一万歳か。うーん、じゃあ話が本当かどうかはわからなそうだな。
そのあとも、フィナと他愛もない話をして寝た。僕が起きたのはもう、お昼近くだった。
しかも、ディとナイトに起こされた。あれ、僕呼んだっけ?
「んー?僕に、何か用?」
「華僑に呼ばれたんだが、テメェがいないと何も話せないって言われた」
「ルイ様が御自分で起きられるのを待っていたのですが、さすがにもうお昼ですからねぇ」
僕はもぞもぞと動いて、二人の部屋を出てもらってから身支度をした。フィナはとっくの前に起きていたらしい。
着替えて、宿の中のレストランに向かった。三人はすぐに見つかった。
「おはよう。ルイが起きるまで話さないでおいたよ」
「別に話しても良かったんだけど……」
「で?俺たちを呼んだのは?」
僕は空いている椅子に座って昨日の夜に華僑と話したことを全て言った。
――この世界には全ての人が知っている伝説がある。
《月が二つ重なった時、全ての魔物を支配する魔王が現れた。しかし、突如現れた4人の英雄によって封印された。英雄は言った。
『再び月が重なれば魔王は復活するだろう。しかし、数万年後の選ばれし者が封印するだろう』と。》
この話を信じている人は少ないんだ。実際に僕達はあんまり信じていない。
でも、最近の魔物の凶暴化を説明するには、信じる他が無いんだ。
「なるほど。では私は暇潰しにでも同行しましょうかね」
「ナイトが行くなら俺も行く。この町に一人じゃつまらねぇよ」
「じゃあ、決定!へへっ、仲間が増えたよー。出発は明日の朝!」
「寝坊しないようにね、ルイ」
僕達は解散した。皆、明日の出発に向けて準備をするようだ。
さて、僕も色々買わないと。フィナにはちょっとお留守番を頼もうかな。いや、やっぱ連れて行こう。
僕はお店がいっぱいある所へついた。まずは雑貨屋に。食料とか道具とかが減ってきたからね。
買ったのは、保存用の食料、おやつ、薬草、髪留め、筆、何も書いていない札何枚か。
次の防具屋では、ブーツを買い換えた。ボロボロになってきたからね。あと、マントも買い換えた。
さて、次は何処に行こうか。そう思って、適当に歩いていたが、疲れたからそこらへんのベンチに座った。フィナとさっき買ったおやつを食べた。うーん、甘くておいしい。フィナも喜んでいる。
でも、すぐに無くなり暇になった。フィナの耳あたりから出ているクルンをいじる物の、すぐに飽きてしまった。
と、ディが来た。
「何やってんだ?」
眉間にしわを寄せて僕に問いかける。
「暇潰し。ねぇ、思ったこと言って良い?」
「あ?別に良いけど」
「ディってさ、小さいよね。何歳なの?」
「(カチン)……19。一発殴らせろ」
と、聞きながらも僕が何かを言う前に殴りかかってきた。僕はすかさず避ける。すると、傍にいたフィ
ナに当たってしまった。
「ぴぃ!(いたっ!)」
「しまった!わ、悪ぃ」
「ピピィ……。○△×○□!(許さない……)」
「許さないってさ。バァカ」
フィナの魔法が発動してディは足元から出てきた可愛い花とツルに絡まれた。
僕はフィナの飼い主だからフィナが何を言っているかわかるけど、魔法だけは分からないんだよねー……。真似しようとしても魔法名が分からないから発動できないし。
あ、魔法ってね詠唱と魔法名を言わないと発動しないんだよ。詠唱はともかく、魔法名はどんな魔法使いでも言わないと発動できないんだよ。
「いててててててて!やめ、ちょ、悪かった!」
フィナが動けなくなったディにクチバシで突っつく。
僕も一回やられたことあるけど、結構痛いんだよねー。
そこに、ナイトもやってきた。
「……何をしているんですか」
「えー?かくかく云々でね。こうなってるの」
「そうですか。では、こんな人はほっといて、私とお茶でも……」
「フィナー!そろそろ止めてあげてー!」
「シクシク」
気がつくともう日は沈みかけていた。この町って、夕焼けが凄く綺麗なんだよなぁ。
ディはナイトに回復をお願いする物の、自業自得だとしてもらえなかった。
そして、宿に戻り、支度をして今日は早く寝た。
……また僕は寝坊してしまったが、僕達4人は旅に出たのだった――