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35話

「死の世界に行くには膨大な魔力が必要なんだ。恐らくボクの全魔力でも足りないぐらい。ナイトの魔力も貰うよ。でも、足りないんだ……!」


ナイトが泣いたという噂から一日が経った。朝、珍しく早く起きたルイが全員を集めて放った言葉。ルイは悔しそうに両手をグッと握っている。

ディは魔力を持っていないし、俺は他人にあげたり魔法を発動できるほどの魔力は無い。ナイトの魔力も常人よりかは多い方だけど……。


「それに、死の世界は毒素が充満している。何か身を守る物をまとっていないと外に出た途端身体は一瞬で消える。フィナや僕は神獣の御加護があるから何も無くても平気だけどディ達は僕の魔法が必要不可欠なんだ。僕は全魔力は出せない……」


って事はフィナも行くんだ。ルイの頭に載ったちっちゃいフィナはまだ寝ている。魔力を溜めているとのことらしいけど寝すぎだとは思う……。


「じゃあよ、魔力を持った奴等掻き集めりゃ良いじゃねぇか。ウィリシア王国なんかうってつけだぜ」

「しかし、今直ぐこられる人数は限られている。魔島の者たちも集められないのですか?」

「うん。それもいいけど魔王の所為で我を忘れて暴走してしまうんだ。これるのは神獣やそのおつきの者だけ。まぁ、よぶけど」


それでも足りないと言った顔だ。神獣の魔力を持ってしてでも足りないって……。俺のそのあまりにも多すぎる魔力がそう簡単に集まらないことにやっと気がついた。

俺の一族は魔力はあんまり持ってないし……。ルイは弟子のウォルメも呼ぶみたいだ。

あれ、そういえば今ルイは魔王の所為で我を忘れるって言ったよね……。つまり、魔物とのハーフのエルトやその魔物の方の親がおかしくなったのもその所為なのかなぁ。

俺は気になってルイに聞いてみた。ディに話題が違うといわれたけどまぁ気にしない方向で。ルイは勿論と答えた。


「そういうことで普通の魔物や魔獣は駄目なんだ。一応最終手段はあるんだけどさぁ……」

「その最終手段って何?って言うかあるなら別に相談しなくたって言いじゃん」


俺は一つ欠伸をしながら聞いた。八方塞と思っていたけどそうじゃないなら別にわざわざ俺たちに言わなくていいじゃん。

ルイは少し困ったような顔をした。


「うーん、まぁそうなんだけどね。神獣って一人じゃないんだよ。僕を育ててくれた神獣は魔法を司る神獣なんだ。他にも言葉の神獣がいたり、武器、果てには宇宙までいっぱいいるんだ。誰が最高峰とか無いし、皆長所も短所もある。僕達の世界は神獣によってできている。……魔王は元々神獣なんだ。だから他の神獣は迂闊に手を出せない」


皆、言葉を失った。神獣がいっぱいいるなんて知らないし、そもそも魔王が元々神獣だなんて信じられない。ナイトがそこらへんの詳しいことを聞いた。ルイは話が長くなると溜息をつきながら言った。


――神獣といっても形は様々。獣から見れば人間もまた獣。つまり俺たち人間があがめている神様も神獣。新しいものが出来ればその神獣も次々と生まれていく。そのなかでも特質なのが人間の醜い心の神獣。負の心を強く持ち、いつしか自分を生んだ人間をも怨むようになった。それからだ。魔王となり世界を支配しようとしだしたのは。神獣はそれぞれあまり関れない。そこで、魔王となった原因の人間に頼むことにした。

それが、英雄だ。しかし、英雄といえど完全に封印は出来ない。魔王を倒しても人間の醜い心は消えない。また、生まれる……。こればっかりはどうしようもない。


俺とナイトは理解できる話もディやルイにとっては難しいらしい。ルイにいたっては自分で話していて理解はあまりしていない。フィナが所々ルイに何かをいっていた。


「ふむ。で、結局最終手段とはなんですか?」


忘れてた。話がそれちゃったんだ。ルイはうつむいて俺たちから表情が見えないようにした。


「……英、雄の遺体を…生贄に、して、あちらから、呼んでもらう………。そうすると魔力は必要ないんだけど………」


『だけど』の先は言われなくても分かる。そんなことしたくない。俺たちにとっては遠い遠い先祖でもルイにとっては親だもんね。

ルイは少し説明してくれた。英雄の亡骸は魔島で大事に大事に保管されている。生死の神獣が持っているらしい。魔法の神獣曰く『生死の神獣は別名、死神』とのこと。つまり、下手をすれば命だってとられる。ある意味魔王よりも性質が悪いらしい。まぁ、一応『神』だし。


「ふん。そんなことさせるかよ。人を集めりゃ良いんだろう?ウィリシア国王の兄を舐めんなよ。ルイ、アディに魔法で連絡取れるか」


そういってディは自信に満ち溢れた顔をした。ルイは頷いて急いで連絡用の魔方陣を杖で書き出した。描き終わってからその杖で中心を叩くと魔方陣は光った。その光は杖を中心に円を描き出して魔方陣の上に中に浮いたにごっているテーブルが出来た。

ルイは杖を地面から離して、テーブルを3回叩いた。すると、テーブルの中心からじわじわと透明になっていった。


「うーん、伝わるかなぁ……あ、伝わった」


透明になったところにアディ王の顔が映し出された。ディがきょとんとした顔でそれを見ている。それを見たのかアディ王はぷっと笑った。


『今の兄さんの顔面白いよ。で、僕に何か用ですか?』

「うるせぇな。4日後までに魔力がそこそこある奴出来るだけ掻き集めて、ニナ王国まで送れ。いいか、大人数だ」


画面(?)の向こうのアディ王は困惑した表情になった。まぁ、当たり前か。


『???ハァ……。別に良いけど、大人数ってどれくらい』

「んー、三桁は軽く行ってほしいかな。4桁近くでも良いよ。ちなみに、魔法が道具無しで楽に使える人を集めて。あと、出来ればアディ王の魔力もほしい」


ルイが答えた。……っていうか、ウィリシア国王まで呼び出すって、非常識だ。近くに居た近衛兵か何かが無礼者!と叫んでいるのをアディ王が宥めている。

こちらではナイトが頭を抱えている。

アディ王は苦笑いをしたままこちらを向いた。と言ってもあちらにとっては画面だが。


『まぁ、よく分からないですけど集めます。あ、それとウォルメさんの件、いいですよ。いつでもきてくださいと伝えられたら伝えてください。それでは、僕は用事があるので』


そういって画面からアディ王が消えた。少したってから魔方陣は消えた。

これで多分平気かな、とルイが呟いた。ナイトが湿っぽい話はここで終わりです!と言って手を叩いた。俺も入れた皆ははっとしてフィナも飛び起きた。……すぐに寝たが。

ディが一つ欠伸をして俺が何か飲もうとしたとき、でかい地震が来た――。

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