34話
「やはり、疲れます、ね……。ルイ様はなぜ平気なんですか………」
「んー?疲れるけどナイトたちよりかは平気かな。僕は元々ここで育ったし。さ、神獣のところへ行こうか!」
ルイ様は元気に歩き出そうとして、華僑が抱えていたエルトを抱っこして神殿の方へと向かった。にしても、はじめて来たときは気を失ったのに今回は平気だった。つまり、数回来るか、長く居るとあまり疲れないのか……。
ルイ様が歩き出して、それに釣られて私達も歩き出した。少し歩いたら目の前に元の姿の神獣が現れた。私達を見て一瞬間をおいてから人間の姿に変身した。それから、ルイ様が抱っこをしていたエルトを受け取った。
神獣はエルトのおでこに一つキスを落とした。すると、エルトの体から黒い何かが出てきた。その黒い物は空中をふわふわしていた。と、神獣の後ろからいきなりフィナが現れてその黒い物を食べた。
「あっ!フィナ!そんな物食べちゃ駄目!」
「ルイ、フィナがここに残ったのは魔王の負の心を浄化する身体を手に入れるためです。大丈夫ですよ。さて、久しぶりですね。しかし、その様子だとすぐにあちらに戻らなければいけないようですね。エルトは此方で預かります。あちらに戻る魔方陣はここで作りましょう」
神獣は一気にそういって一瞬で魔方陣を作り上げた。フィナが私達の元に来た。と、フィナが私達にはわからない言語で何かを呟くとフィナの身体は鳩ぐらいになった。小さいフィナはルイ様の上着の帽子の中に入った。
神獣が少し微笑んで頑張ってくださいというとまた私達はワープした。にしても、何度やってもこの魔島と私達の居る所への移動はなれない……。普通のテレポートとちょっと違う。
移動が終わると場所はニナ王国の前だった。……あれ、前回は全員バラバラだったのに今回は一緒だ。まぁ、ともあれ良かった。またバラバラになったらたまらないですからね。
と、ルイ様がこの近くから死の世界に行くと言いだした。ディが理由を聞いたがルイ様は後々分かるといってはぐらかした。
残りの五日間、このニナ王国の宿を拠点として活動することにした。ルイ様は魔法の最後の確認、ディは気法と爪をどう扱うか、華僑は札を作るといっていた。
しかし、私はどうしようか迷っていた。魔法と言っても回復しか使えないし、剣術の修行にしても時間がなさ過ぎる。華僑みたいに術は使えないし、ましてやディの気法も使えない。
そう考えると私は無力じゃないのかと思い始めた。もう3人は宿を出ている。残っているのは私だけだ。フィナもルイ様の傍にいる。
私はふと腰から抜いてある自分の剣を見た。何を思ったかそれを手に取り鞘から抜いた。刀身は細く、切るというよりも刺す方が案外攻撃力がある。元々はユウストが使っていた剣。私のいつもの剣はルイ様に預けてある。
この剣は切れ味が抜群に良い。しかも軽いから動きやすい。戦いにはもってこいだ。ただ、これはあくまでユウストの剣。私のものではない。
――私は誰かの恩を受けてここまで来たのでは?私がこうして普通に生きているのはディがスラムから連れ出したから、魔力が無いと思っていた私に見つけ出してくれた爺様。剣術だって当時の教官に教わった物。この剣だってユウストから譲り受けた物……。私自身がやっていることなど無い。私は足手まといなのでは……。
そう思い始めた私は頬に何か伝わる感触で思考が停止した。泣いている……?座っていたベッドに倒れこみ、右腕で目元を押さえた。あぁ、悔しい。
そうしていたらいつの間に来たのかディが私の顔を覗きこんでいた。私はふと腕を外したとき驚いて固まった。
「何、泣いてんだ。テメェが泣くなんてあの時以来だな」
あの時……ディが私を連れ出したとき。
「いえ。ちょっと、ね」
「はん。どうせ、『私なんか足手まといだ』とかだろう?テメェはそう思っていると思うが俺達はそうおもわねぇよ。テメェが居なきゃ回復は誰がやる?ルイは基本的にフィナに回復を任せているほどだ。テメェが居なきゃ誰が後先考えずに突っ走る俺たちを止めるんだ?テメェが居なきゃ誰が頭を使った作戦を立てるんだ?テメェが居なきゃ駄目なことがあるんだよ」
「……」
私は黙った。なぜ彼はこんなにも私がほしい言葉を当てて言ってくるのだろうか。
もう、何年も一緒に居るから、か。
ディは私の隣に座った。私は再右腕で目を隠した。
「後な、テメェ自身がやっていることが無いとも思ってるだろ。んな事ねぇ。殺されそうになったテメェを守ったのは誰だ?剣の腕を人一倍磨いてきたのは誰だ?あまり無い魔力を増やそうとしたのは誰だ?ウィリシア総合隊長に攻撃魔法無しで上り詰めたのは誰だ?」
「私、です……」
ディは次々に私が思っていたことを当てていく。
もう、彼に嘘や隠し事は出来ませんね……。
「だろう。テメェはそれで良いんだよ。ナイトが居なきゃ俺達は自分勝手に動いて馬鹿馬鹿しい作戦しか想い浮かばねぇ」
「……ディ、ありがとう御座います……!」
また、涙が出てきた。嗚呼、もうこんな姿は誰にも見せないと決めたのに。泣くのはあの時で最後と思ったのに。早く、泣き止まないと。ルイ様たちが帰ってくる。
2,3分立ったあたりで私の涙は止まった。目を隠していた腕をどかして上半身を起こした。と、ディが私の顔を見て笑った。
「ギャハハハハハ!!!鼻が赤ぇ!目も赤ぇ!ひっでぇ顔!!!!!」
「ちょ!それは酷くないですか!?もう!顔を洗ってきます!!」
笑われたのは不本意だが、元の調子に戻った。本当に、ありがとう御座います……。
残り、5日間。




