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33話

「皆、大丈夫?」

「おぉ!華僑様のお帰りだぞ!」


ルイのテレポートで俺達はグパ国に着いた。俺は此処に来るのが初めてだからキョロキョロしてしまう。どこを見ても銀髪赤目。同じような服装……。国と言っても民族みたいなもんだな。まぁ、グパ族とも言われるしな。

華僑は一人ひとりに話しかけながら奥へ進んでいった。俺達は国の入り口で待つことにした。しかし、華僑が自分の家に案内すると言ったから俺たちは中に入った。

やっぱ、国というよりか村に近い。基本的に国はニナ王国、ウィリシア王国以外に支配されていない村、町を指す。あの二つの王国を入れたら国はなくなっちまうからな。


グパ族の子供は俺たちが珍しいのか近くに寄ってきたり話しかけてくる。何か、戦争の後の国とは思えない。……いや、若い男が少ない。女子供、老人はにこやかに暮らしているが若い男が居ない。


少し歩くと少し大きめの家に着いた。ウィリシア大陸の建物と違って木と紙で出来ている……。よく燃えそうだな。華僑の案内で中に入り適当に茶を出してもらった。緑茶だ。

華僑は此処で好きにして良いと言ってから家を出た。俺は出された緑色の液体を見つめた。緑茶が苦い茶だとは知っている。ただ、飲んだことが無い。ナイトは飲んだことがあるのかコップ…湯のみって言うのか?の底に手を当てて飲んでいる。ルイは俺と同じく飲んだことが無いのかジッと緑茶を見つめている。

俺は思い切って飲んでみた。…………苦い。これを好んで飲む華僑がよくわからない。確かにコーヒーも苦いが緑茶の苦味とはちょっと違う。俺は一口飲んだだけで飲むのを止めた。

俺を見たルイが飲んだ。湯飲みから口を離すと首をかしげた。そして、もう一回飲んだ。今度は少し長めに。そして、ルイは


「これ、結構美味しいね。紅茶の方がおいしいけどコーヒーよりも好きだな」

「そうですか。私は緑茶よりコーヒーの方が好きですけどね」

「俺は緑茶は嫌いだな。コーヒーが一番だ」

「えー、紅茶だよー」

「私も紅茶ですね」

「2対1かよ。コーヒーのがうめぇのに」


そんな他愛もない話をしていると華僑が戻ってきた。華僑は湯飲みを下げようとしたが俺の湯飲みに手を伸ばして引っ込めた。


「あれ、ディはやっぱ緑茶嫌いなの?予想通りだね。紅茶で良い?コーヒー無いから」

「あぁ」


予想してたなら出すなよ!というツッコミを押さえて台所に向かった華僑を見た。表情が明るくなっている。やりたい事が全部終わったようだ。

俺は弟アディに、ナイトは殺された兄弟に、ルイは弟子のウォルメに、華僑はグパ国の皆に戻ることを約束した。これで、魔王に心で負けることは少なくなる……らしい。別に必要ないとは思うが。

華僑がルイの残りの魔力を考えて今日は華僑の家に泊まることにした。そう決まったとき、なんだか外が騒がしくなった。気になって俺達は外に出た。


人が集まっている国の入り口に向かった。野次馬に退いてもらって騒ぎの原因となっているやつを見た。緑色の髪、青と緑のオッドアイ、とがった大きい耳……。よくよく見ると指が3本しかないし、爪が異様に太くのびている。なんなんだ……あのガキは。

国民は気味悪がっている。そのなか、ルイはその子に向かって歩いた。そして、抱きしめた。ざわつく周り。流石に俺たちもびっくりした。


「君、魔島から来たんでしょ?魔物とのハーフだね。安心して。僕は君みたいな子を嫌いになんてならない。僕は味方だよ」


魔物とのハーフ……。聞いたことねぇよ。にしても、魔島に帰す、か。つまり、魔島では人間と魔物のハーフが居てもおかしくないってことか。

このガキは魔島から抜け出して迷子になったかそんなもんだろうな。


「……おねぇちゃん?優しいね。優しいね……。うっぐ、ひぐ……皆、ボクを嫌がるんだよぉ。なんでさぁ……!」

「ここは人間の世界だからね。ほら、泣かない泣かない。落ち着いて、ね?落ち着いたら魔島に戻してあげる」

「うん」


と、俺の隣に居たグパ族の一人が小さな声で「あの女も気味悪い。何であんなのを抱きしめられんだよ」そういった。俺は一気に血が頭に上った。気がついたときにはその男の首を掴んで持ち上げていた。

すぐ後ろでナイトの制止の声が聞える。華僑は黙っている。俺はギリギリと死なない程度に力を入れながら言った。


「次、そういうことを言ったら殺す。あのガキよりも人間じゃねぇよ。テメェは」

「ディ!いい加減にしなさい!!」


俺は舌打ちしながら乱暴に男を下ろした。男は首を押さえてなお睨んでいる俺を見て逃げ出した。俺は手をポキポキ鳴らして首も少し回して、ニッと笑いながら


「他にこの二人を気持悪いとか思った奴表出ろや。ボコボコにしてやる」

「ディ、そこまでだよ。流石にそれは駄目」


華僑がやっと口を開いた。俺は眉間にしわを寄せて、腕を組んだ。


「んだよ。……おい、ルイ。さっさと魔島に戻してあげろよ。面倒事はやだからな」

「はいはい。ねぇ君、名前は?お母さんとお父さんは?」

「ボクはエルト。三人でこっちにきたらパパがおかしくなって、ママがボクの盾になって、殺されちゃって、僕はパパから逃げてきたんだ……。ずっとね、ここに来てからね、ボクも少しおかしいの。暴れたくてうずうずするの。なぁに?これ」


ルイはその問いに答えずに強く抱きしめて何かを呟いた。すると、エルトの体の力が抜けて寝てしまった。ルイはそれを見てから立ち上がり、腕輪を杖にしてから魔方陣をかいた。見たことがあるな。

あぁ、そうだ。魔島への魔方陣だ。ルイが魔方陣を画いている途中で俺達の方を向いてニッコリ笑った。


「予定変更!このまま魔島に行くよ!ほら、こっち来て!」

「お、おぉ」

「????うん」

「(何を考えていらっしゃるのですかね)」


描き途中の魔方陣のに乗って発動するのを待った。華僑がエルトを抱えた。ルイが描き終わったと同時に魔方陣は発動された。ずっと俺たちを見ていたやつらは次々進むことに追いつけずボーっとしている。俺は親指を立てて下に向けた。その瞬間、俺たちの身体は魔島へと飛んだ。

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