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32話

「あぁ、そうだお師匠様。次、月が重なるのは今日からちょうど一週間後ですって」


僕の弟子、ウォルメが僕に挑戦をして負けた後、僕たちは宿に戻った。男三人は先に部屋に戻って、僕はウォルメの部屋に居た。

僕と別れた後何をしていたとか、今日の戦いの感想だとかを話していた。そのときに、ふとウォルメが月が重なる時期を教えてくれた。これには僕もびっくり。


「え……少し前に聞いたときはもっと後だと聞いていたんだけど」


そう、僕のお母さん……神獣はもっと先と言っていた。だけど、ウォルメは今日からちょうど一週間後と……。


「えぇ。なので学者達の間で騒がれています。しかし、それでも月が重なるのは一週間後と決定されました。お師匠様、何かご用事でもあるのでは?」


ウォルメは中々鋭く、僕が隠し事をしていてもすぐにばれる。魔法を教えていたときにこっそりウォルメのお菓子食べちゃったときもばれた。

僕は内心焦っていた。一週間後、僕たちは死の世界に行かなくてはならない……。僕はまだ心の準備が出来ていなかった。


「いいや……そっか。ありがとう。……あと、僕が師匠として君に最後に託す物がある。僕が長い時間をかけて書いた魔道書……。全部魔法で覚えたからオリジナルの方を持って行っていいよ。読めば僕しか知らない魔法や、無詠唱魔法の方法、誰も知らない魔法の構造も知ることが出来る」


僕はポンっと魔法で遠くに送っていたボロボロの本を出した。この本は僕が魔島に居るときからずっと書いていた魔道書。教わった魔法や、作った魔法を構造から何から全て書かれている。そのため、少々分厚い。

でも、ここまで細かく書かれている魔道書は無い。

僕は魔法を忘れるときがあるからこれで思い出す。だけども魔王との戦いに備えて魔法で無理やり頭の中に入れた。だから、もう忘れることは無い。……まぁ、入れるとき痛かったけどね。

ウォルメが僕の顔を覗きこんでいた。


「お師匠様?……何があるか存じませんが私はお師匠様が無事に帰ってくることを願います。その時に私にその本を下さい。また、魔法を教えてください。お師匠様がそんなのだと元気が出ないです」


そう言われて僕はハッとした。何を言っているんだ?これじゃまるで僕が死にに行くみたいじゃないか。良かった。ウォルメが鋭い子で。鈍い子だったらきっと、戻ってこれなくなった。

ディはアディ王に、ナイトは亡くなった兄弟に、僕は一番弟子のウォルメに必ず元気で戻ってくることを約束した。

そこで僕は思った。華僑は一体誰に……?イルナ母さん達は心が折れないように大事な人に約束をして魔王退治に向かった。そうしないと、魔王の負のオーラにやられるらしい……。


「!そうだね。戻るよ。ウォルメを僕並みに強くしてあげる!うん。じゃあ、僕はもう部屋に戻るね」

「はい!おやすみなさい」


僕は笑顔のウォルメにおやすみを告げ、自分の部屋に戻ろうとした。だけど、このことを華僑たちに伝えようとして華僑の部屋に向かった。

ノックをするとまだ起きているのか返事が聞こえて、ドアが開いた。もう、寝る前だったらしく服の白い所は脱いでいる。僕はそのまま月の重なる時期と約束する人のことを話した。すると、華僑は一度グパ国に戻りたいといった。

僕はディとナイトの部屋にも向かってこの事を伝えた。二人は快く承諾して僕はやっと自分の部屋に戻った。出立は日が昇る前。ウォルメにバイバイを言えないけど……。

そして、僕はベッドに身体をうずめた瞬間に寝てしまった。次に目覚めたのはディが起こしてくれたときだった。そばにはナイトと華僑、何とウォルメも居た!

たまたま起きていたらしくさよならを言いに来たらしい。僕は急いで支度をして宿の外に出た。ウォルメがお元気でといった。だから僕は魔法の修行をしっかりと返した。僕はそのままテレポートを唱えた。


テレポート先は、ニナ大陸へ行ける港。流石にウィリシア大陸からニナ大陸へはきついから船の力を借りることにした。いつの間に入手したのかナイトが懐から4人分のチケットを出した。受付の人は確認してもうすぐ出発する船に案内してくれた。僕たちが乗ると出発の準備が出来たのかボォーと音を鳴らしながら船が動いた。


「華僑、いま、戦争中ではないのですか?」


ナイトが海を見ている華僑に話しかけた。華僑はゆっくりと海から目を離してナイトの方を向いた。

僕は甲板の椅子に座っている。ディは眠いからと言って船室で寝ている。

聞いた話しだとグパ国とシア国は戦争真っ只中。華僑が引き起こしたといっても言い。


「……もう終わったよ。勝ったのはグパ国だけど、今長が居なくて大変なんだ。だからね、俺が戻ってきたら長になってやろうかと。それを約束しに」

「そうですか。貴方、家族は?」


華僑の家族?そういえば僕も聞いたことがない。ディの母親は病気でなくなって、父親はもう居ない。ナイトはちっちゃい時に殺されたとか何とか。僕はもう何百年前の人だし……。


「居ないよ。父さんは一族の裏切り者として、母さんはその共犯者として処刑された。本当は父さんが裏切ってないことを皆知っている。でも、処刑しないとグパ国が危なかったんだ。だから俺は生きている。俺は国の皆に助けられて育ってきたんだ。俺の親は秘密裏にグパ国の英雄として崇められている。だから俺の発言は大きいんだ」

「……親、ですか。華僑は国の皆さんに愛されているのですね」

「ナイトが言うと気持悪い」

「ひどっ!」


一瞬だけ華僑の目が涙目になったような気がした。

そんなこんなで1時間後やっとニナ大陸に着いた。もう日も昇りきって皆が活動し始める時間になった。港に下りてちょっと買い物をして僕は再びテレポートを唱えた。一度、グパ国に行ったことがあるから過大な魔力を消費してテレポートした。


――あー、疲れる。あと、6日間……。

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