28話
「アディ、仕事が全部俺の部屋に来い。結構重要な話がある」
「わかったけど……」
「じゃな」
僕が目覚めて、5日。ナイトも僕も体力魔力が全回復した。それを見計らってディは王を呼んだ。
この5日間いろんなことがあった。4人全員で修練場での乱闘、ディの【気】による擬似魔法、城を壊したこと、ご飯が美味しかったこと、ベットが超ふかふかだったこと、ディがかなりのブラコンと発覚したこと……。
擬似魔法についてはアディ王も協力して調べた。結果、魔力の有無に関らず全員にある気の力と判明。それがあの爪(指輪)によって増幅されてディの思うままに色々な力に変えられる。まぁ、武器は爪から変えられないみたいだけど。
ちなみに、気の力とは気力とは違うんだ。研究隊の人に聞いたんだけど、脳のほとんどは使われていない。その中には【想い】を具現化する力がある。それが【気の力】。それを具現化できる人が魔術師・魔法使いといわれる人たち。つまり、魔力を持っている人ね。できない人は魔力を持たない人。
で、ディは特別。魔力としては具現化は出来ないけれど、所謂【気合】で具現化をしてしまう。だから気持がある限りは無限に使える。でも、気合が無くなればすぐに使えなくなる。
それを僕達は気法と呼ぶことにした。まぁ、【気の力】=【想いを具現化する力】=【魔法・気法】と考えて良いってさ。
ディ自身はちょくちょく爪に変えてそれを眺めている。つまり、気に入ったって事。
アディ王を呼んでから僕とディはディの部屋に向かった。もう、ナイトと華僑はいる。部屋に入るとナイトが全員分の飲み物を用意して待っていた。僕とナイトは紅茶、ディはコーヒー、華僑は緑茶。
適当に座って話し合いを始めた。内容はこれからのこと。いつまでもウィリシア城に留まっていられないからね。
基本的にこういう話し合いは華僑とナイトが中心になって話す。ディはちょくちょく付け加えたり意見を言う。僕はどうでも良いから話にあまり加わらない。でも、今日は違った。
話し合いが始まって2時間半後、やっと終わった。
「そういえばルイ、フィナはまだ戻ってこないの?」
「うーん、いつ戻ってくるか分からない。でも、次会うときはまた魔島に居るよ。理由はその時になればわかる」
と、コンコンとノックの音が聞こえた。きっとアディ王だろう。
ディがドアを開けた。入ってきたのはやっぱり王。あいていたソファに座ってディを見た。目で「早く話をして」と言っている。
「アディ、明日の昼前ぐらいに俺達は此処を出る。あと、テメェが一番気になっていたことを話してやる」
「兄さん達のやらなければいけない事?」
「そうだ。いいか、黙って聞けよ……」
それからディは長々と話をした。僕たち全員が始めてであったルウェルの町での出来事から、神獣、魔島、英雄、魔王、僕達の血筋……。それらを王は黙って聞いていた。
話し終えるとディはコーヒーを飲みながらアディ王の様子を伺った。僕たちも王の様子を見る。普通だったら嘘だと思う。しかし、王はすがすがしい顔で僕達に言った。
「話してくれてありがとう。実はこの間夢を見てね、その夢で青い大きな魔獣の鳥が今兄さん達が言ったようなことを教えてくれたんだ」
「その魔獣のお腹にこんな模様無かった?」
僕ははっとして右腕の袖をめくりながら王に聞いた。
アディ王は普通に答えた。
「ありました。……ルイさんの魔獣ですか。それなら納得がいく」
「アディ王、一つ良いですか?」
此処でずっと黙っていたナイトが口を開いた。
「なんですか?ナイトさん」
「5日前、私に此処に残るように言われました。少し考えたのですが、全部が終わってからまた此処で働いても良いでしょうか」
「アディの伝言をナイトから聞いた時俺もウィリシアに再び戻っても良いと思った。一応俺の生まれたところだしな。アディ、俺も戻って良いか」
「…!喜んで。むしろこっちからお願いしたいくらいだよ。ルイさんや華僑さんは終わったらどうするんですか」
「俺はまた旅かな。まぁ、賃金集めに傭兵もやるし。たまには俺を雇ってよ」
「僕は……」
此処で黙った。僕は魔王を倒した後何をするか何も決めていない。いや、決められない。
魔島に戻るのも良いけど、また旅に出るのも良いけど、心から思っているわけじゃない。
と、ディがアディ王に何か耳打ちをした。すると、アディ王は頷いた。
「ルイ、良かったらテメェもウィリシアに来い。何かしら働いてくれれば良いってよ」
「……!うん!!」