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24話

「ルイ!ルイ!しっかりしろ!どうしたんだよ!」


ディが大声でルイの名を呼ぶ。彼の手にはぐったりとしているルイ。

アディ王が船室から走ってきた。兄のうろたえぶりに驚きつつも問いに答えた。


「兄さん!ルイさんは魔力の使いすぎで気絶しているんだ」


あの魔力は凄かった。だけど、あの巨大な魔力じゃなきゃ魔物は倒せなかっただろう。

いや、『倒す』じゃない。『助ける』だ。


「このままで大丈夫か!?」

「多分……とりあえず爺に見せないとわからない。なにせ、あれだけの魔力を使えば……(常人では命を削っても足りない魔力だ……)」


王が顎に手を当てて考えながらいった。ディのルイを抱きしめる腕の力が強まった。

俺は何も出来なかった。回復は出来るけど今のルイには効かない。こんなときにナイトは何しているんだよ……!


「ちきしょう!おい、起きろ!起きろよ……」


ディの声はだんだん小さくなった。表情は今まで見たことがないくらい弱弱しかった。そして、ルイが死ぬのを怖がっていた。

なぜこんなになったのか。それは数分前に遡る――。


+++++


俺とディは船に乗ってルイたちが居るであろうところへ向かった。しかし、途中で攻撃を受けたナイトが飛んできた。

急いで応急処置をして医務室にはこんだ。アディ王も付き添って船室全部に結界を張った。

それから少し進むと不思議な色をした大きい球体が現れた。その色はルイが魔法を使うときに見える色と同じだった。

俺たちは傍に寄った。50メートルほどで風が吹いてきた。しかし、遠くの波は立っていない。球体の近くだけだ。魔力による風だった。

中を見ると中心には紙紐が取れたルイ。ルイが乗っている船のすぐ近くに巨大なタコ……魔物がいる。

ディが、ルイを見つけた瞬間球体の中に入ろうとした。しかし、表面に触ったところで強い電流が走ったらしくすぐに手を引っ込めた。手がバチバチいっている。

俺は、懐から真っ白の札を出した。指先から血を出してその血で文字を書く。その札を球体に向かって飛ばした。しかし、札は燃えてなくなった。


「おい、何飛ばしたんだ?」

「どんな結界でも一時的に効果を止める札。だけど、燃えるってことはこれは結界じゃない。まぁ、多分ルイの魔力が暴走してこんなんになっているんだと思うけど……」

「魔力って、暴走するのか……。って、ルイ自身は大丈夫なのか?」

「わからないよ。俺は魔力無いし」


俺たちは見守ることしか出来なかった。

ルイも魔物も何もしない。ただただ突っ立っているだけ。魔物も、長い足をルイに向けているもののピクリとも動かさない。

なんなんだ。ここからだとルイの後ろしか見えない。どうなっているの。

しばらくすると魔物から黒い何かが出てきた。気持ち悪い……。

俺はその場に座り込んでしまった。ディは見えていないのかいきなり倒れる俺を見て驚いていた。


「船酔いでもしたのか?」

「違う……。魔物から黒い物が見えないの?あれ見たら気持ち悪くって……」

「……見えねぇ。だが、魔物の目が黒ずんだ色からどんどん綺麗になってくのは分かる。洗脳でもされてたのかな」


俺は、見たかったけど見れなかった。

そして、俺がやっと顔を上げると黒い物は無くなり球体がどんどん小さくなっていった。魔物はルイをジッと見ている。

ルイの身体に球体が全部入るとルイは崩れ落ちた。俺たちは急いでルイの傍に向かった。魔物に注意しながら。

俺は刀を抜き、魔物に向かった。


『まてまて!あんさん、女の子の仲間か?わし、女の子に助けてもろうた。攻撃せんへんから刀をしまってくれ』

「助けてくれた……?洗脳されていたのか。だけどね、君を助けるためにルイは倒れたんだ。ちょっと俺怒っているんだ。今直ぐ消えてくれないかな……」


俺がそういうと魔物は大人しく海の中に消えた。


+++++


「ディ、そこを退いて下さい。私が回復させますから」


ナイトがひょいっとこちらの船に来た。

上半身は裸で包帯がぐるぐる巻かれている。着地したとき少しだけ顔をゆがめていた。


「ナイト!?傷は良いのかよ……。ってか、テメェ何負けてんだよ!!!テメェが攻撃を受けなければな………!!!」

「落ち着いてディ。ここはナイトに任せよう。話はそれからだよ」


俺は、ルイをゆっくりと置いて暴れそうになっているディを落ち着かせてナイトを睨みながらいった。

ナイトは横たわっているルイの傍にしゃがみ、左手をゆっくりルイの額に乗せた。そして、その手はあの球体とは少し違う不思議な色を纏い始めた。


「何してるんだ」

「魔力を送っているのですよ。私の魔力は体の中にあるだけで回復を早めてくれますから。……その代わり、私は回復が遅れますがね」

「……そうか。何処に行くんだアディ」

「此方の船に他の人がいないか探しに行く」


ディはルイの傍に立って二人を見ていた。手は強く強く握られていた――。

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