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23話

「おし、出航だ!」


ディの合図でボォーっと音を出しながら船は動いてゆく。結構な早さだ。

俺はディがいる船の先端へ歩いた。


「さすがディ。行動が早いね。しかも弟の権力最大に使ってさ」


ルイとナイトの二人がニナ大陸にいることが判明。ウィリシア大陸に向かおうにも海上の物凄く強い魔物がいて足止めをくらっている。

二人を迎えに行った10人のウィリシア兵は2人を残して死亡。遺体は海の中。

一人は何とかニナ大陸に。もう一人はウィリシア城に戻ってきた。

そこでディが『あの二人なら魔物を倒しに向かうだろうからな。俺たちも行くか』と言い出した。

勿論俺は了承したがアディ王に物凄い止められた。しかし、ディは自らが兄ということを最大限に使って何とか船を出してもらった。


「使えるものは何でも使うもんだ。アディだって了承している。……まぁ、付いて来ると言う条件付だがな。まったくわがままなウィリシア国王だ」


ディは後ろにいる俺を見ないでそういった。そして、その場にあぐらをかいた。

アディ王は自分も行くと言い出して聞かない。ディはそれこそダメだと凄い剣幕で言ったものの結局折れてしまった。


「僕だって御二人が心配なんだよ。強いとは言え僕の部下がやられたんだ」


王がゆっくりと俺たちのところに歩いてきた。服装は重々しそうな物から軽々とした服装に。

まぁ、動きやすそうだけど防御力はあんまりなさそうだな。


「ふん。……いいか、一応守ってやるがテメェの命ぐらいテメェで守れ」


ここでやっとディが振り向いた。その目は本気でアディ王を心配している目だ。

たまにディは弟の話を良くする。俺も何回も聞いた。ナイトなんかもっとだろう。『俺の弟はな、王には向いてねぇものの心優しいんだ。あいてぇな』って。


「分かったよ兄さん」


アディ王はこくりと頷いた。二人は双子だという。兄さんとは言っているもののほとんど変わらない。二人を見比べるとあんまり双子とは思えない。

アディ王のほうが若干身長大きいし、目だってつり目と垂れ目だ。ただ、顔の形や髪の毛の感じ、声なんかはそっくりだ。


「華僑さん、僕の顔になんかついています?」

「いいや。ディと似ているようで似ていないなぁと思ってね……あれ、なんか聞こえる」

「おい、前方から人が飛んできたぞ」


ディが立ち上がり、俺とアディ王はすぐさまディの傍に寄った。

……本当だ。人だ。白い服に金色のくせっけ…?なんか見たことがある。

視力はあまり良いほうではない。いや、常人よりかは良いけどディに比べるとかなり劣る。


「あれ、ナイトじゃねぇか。おい、アディ!魔法でどうにかならねぇか!?」

「やってみる!○……!△※□○☆……」


詠唱だ……。何かルイはいつも詠唱を唱えないから凄く遅く感じる。

その間にもナイトらしき人は此方に飛んでくる。何もしなければ船に穴ぐらい開くだろう。


「空中マット!」


俺たちの頭上に白いマットが現れた。少し待つとボフッと音がしてディが持ち前の身体能力でマットの上に上った。

俺も続いて上る。やっぱりナイトだ。にしても随分強い攻撃を受けたな。白い服は所々血で赤くなり、破れている。それに、びしょびしょだ。左手には決して離さないように強く剣を握っている。

ゴフッと、血を吐いた。こんなに弱っているナイトは始めてみた。

ディが大声で魔法を解除するように言った。いきなりマットが消えてディはナイトを抱えて着地した。

……あれ、身長差は良いのかな。かなりディは小さいけど。まぁいいか。


「ナイトさん!?これは酷い……まさか魔物にやられたのでは。△☆!…○□△※……」

「早くしろ!……おいナイト!テメェくたばってんじゃねぇ!!ルイが残っているだろうが!女一人を残すなんて男として最低だぞ!俺の目の前で死んだら許さねぇからな!」


ディがナイトの上半身を持ち上げて大声で叫ぶ。

……本当この二人は強い絆で結ばれているよ。……そろそろアディ王の詠唱が終わるかな。


「う、うるさい……です、ね。ル、イ様を、かば……って、こ、ん、なんに……ゴホッ!」

「喋ったら駄目じゃないの?大人しくしてなよ……」


ナイトが途切れ途切れに話す。ディが良かったと小さな声で言った。

ぱっと見恐らく肋骨が折れたかな。上半身に攻撃を受けた痕がある。内臓もやられたかも。

俺はこんな風になって話す人を多く見てきた。そんな人達は大体命が途切れる。ナイトまで途切れてほしくは無かった。


「リュア!とにかくもう魔法じゃ治せないから船の中へ!僕が連れて行きます」


アディ王が魔法でそっとナイトの身体を持ち上げた。ディは立ち上がりアディ王に背を向けて言った。


「あぁ。そのまま船室に篭って結界をはれ。船員を守れ」

「……分かった」


王はディの言うことを聞いて急いで船室に向かった。そして、すぐに結界が張られた。

俺はそれを見て前を向いた。隣から凄い殺気が……。

俺は隣にいるディの顔を見た。あまり笑わない顔。でも、目は優しい。でも、今はまったく違う。目はギラギラと獲物を見つけたかのような獣の目。眉間にいつもより多くしわを寄せて歯を食いしばっている。

あぁ、そうか。ナイトをあんなのにさせた魔物が許せないのか。にしても、ここまで怒るんだ。

俺はあまり仲間意識が無い。ただ、ディ達といるのは楽しい。でも、ルイは別かな。ルイがああなったら俺も怒るや。


「おい、あれ、見えるか?」

「え……光ってる……?不思議な色」

「あぁ。どこかで見たような色だとは思わねぇか?ルイが魔法を使う時に一瞬見える色に」

「あ!確かに。ということはあれはルイの魔力ということ……」


大きな丸い物は不思議な色をしている。多分ルイの魔力だろうけどそれにしてはあまりにも大きすぎる……!ありえない。

何が起こっている……?

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