20話
「はぁ!?定期船が出せないってどういうことですか?」
「いや、何でも船を襲うデカイ魔物がいて進めねぇんです。勘弁してくだせぇ」
ルイ様のおかげで私達は昨日チェイ国に着いた。そこで壁に貼ってあった知らせをみてディがウィリシア王国にいることが分かったから早速そこに向かおうとした。しかし、その時に大きい魔物が入り込んできて私達二人で倒した。
お礼にと定期船のチケットをただで貰えたは良いものの肝心の定期船が出ないんじゃ……。
私とルイ様は一つため息をついた。もたもたしていたらウィリシアが嫌いなディは国を出てしまう。
「仕方ない、僕達で倒そうか」
「えぇ。あ!ルイ様鳥に変身できますよね。それを使えば……」
「無理。変身魔法は超高等魔法なの。魔力が集まる魔島ぐらいでしか使えないよ。第一、変身できたとしてもここからウィリシアまで体力持たない」
やはり私達で倒さないといけない……そう思うだけで疲れてくる。
海上戦となれば私が思うように戦えなくなる。ルイ様は魔法が使えるから良いが私は剣でしか戦えない。
フィナがいてくれれば乗せてもらえるんだけどな……とルイ様がぼそりと言った。
フィナは何か用事があるとか何とかで魔島に残っている。
「明日、倒しに行きましょうか……」
「あれ、ちょっとまって。あの服装、ウィリシア兵じゃないの?」
そう言ったルイ様の指差すその先には確かにウィリシア兵だった。しかし、服はボロボロに破け傷も多い。命からがら逃げてきた後のようだ。
私達は急いで兵のところに行った。兵は私達を見るとうれしそうな顔をしてまた痛そうな顔をした。
恐らく私達を探していたのか……?
私は回復魔法で処置をしとりあえず私達が泊まっている宿へと連れて行った。
私の部屋のベッドに座らせルイ様は近くの椅子に座った。私は三人分の茶を入れて適当に壁に寄りかかる。
兵は一口茶を飲んでから話し始めた。
「助けていただきありがとう御座います。私はウィリシア兵のヘルと申します。私はアディ王子の命でルイ殿、ナイト殿を探しておりました。ウィリシア王国にはディ様と華僑殿がおります」
「あ、よかった。華僑も一緒なんだね。何で君はそんなにボロボロだったの?海上の魔物にやられた?」
「はい。本当は魔物対策に10人ほど居ましたが私ともう一人だけ……。もう一人はウィリシアに報告しに行きました。全員で力を合わせたものの魔物にかすり傷位しか与えられませんでした。どうか魔物がいなくなるまでここに居てください。あなた方が死んではディ様も王も悲しみます」
ウィリシア兵は世界一の強さを誇るはず。その兵10人がかかってもかすり傷程度……。随分強力な魔物だ。
ヘルと名乗った男は涙を一粒こぼした。
私はもう少し詳しく話しを聞こうと2、3質問した。どうやら全員が来た時間はまったく違うらしく私達二人が一番最後のようだ。
華僑がウィリシア大陸に行った時は魔物が出なかったということは随分最近出たものだ。タイミングが悪い。そういえば、シア族とグパ族の戦争も少し聞いたな。
ヘルが船の上にいる時、通信魔法で聞いたことらしいがウィリシア王国に大量の魔物が襲い掛かったがディの的確な指示で死者2名ですんだ。
まったく、ウィリシアに残って隊の指示でも出してれば良いのにと思う。
「……貴方は私達にウィリシア王国に行くなと言っているのですか。残念ながらそれは聞けませんね。私達二人で倒してみましょうか」
「うん。僕に秘策があるし任せてよ!」
ルイ様がガッツポーズをして花でも咲かせそうな笑顔で言った。
だが、ヘルは私達が死ぬのを恐れてか、嫌そうな顔をした。
「し、しかし……」
「つべこべ言わないで下さいね?」
「(ナイトを怒らせちゃいけないや……!)」
私はニッコリと笑った。すると、不思議とヘルはおびえた顔で黙った。
そのままルイ様の秘策とやらを聞き三人で作戦を立てた。
……なるほど。これなら倒せそうだ。ヘルから聞いた魔物の種類を考えて、私の戦い方も考えるとこれが一番良いのでは。
明日も早いと言うことでヘルの部屋を新しく取り早めに寝た。
私は寝る前に剣を研いだ。私の先祖、ユウストから貰った剣。まだ一度も使っていない。切れ味が試せる――。