19話
「まぁ、その後は一応ウィリシアに行こうかと思ってきたんだ。そしたらディがいた」
「あぁ、そ、そうか。随分凄ぇことしたな」
華僑の長い話が終わり、俺は呆然とした。華僑と出会ってそこまで経っていないからこいつのことはそんなに知らねぇが、グパ族の中でも力を持つ者とは思わなかったな。
しかも、シア族との戦争を決めさせて、普通なら自分も参加するところを参加していない……。俺以上に自分勝手だな。
……そろそろ腹減ってきたな。
もう夜になっていて華僑も空腹を感じたのか飯を食べに行こうかといわれた。そういや、ウィリシアの飯は旨ぇ。何を食おうかな。
俺は頷いて立ち上がった。さぁ、部屋を出ようと思ってドアを開けたらちょうどアディが入ってきてぶつかった。俺のほうが身長高いからアディは俺の顎に頭をぶつけた。
「「いってーーーー!!!!」」
「こうやって聞くと声そっくり。で、大丈夫?」
「顎!顎!こんの、石頭!」
「兄さんの顎が硬すぎるよ!僕だって結構痛いからね!」
「聞いてないよ……」
華僑をほったらかしで兄弟喧嘩へ。しかし、1分ほど経った所で騒ぎを聞きつけた総合隊長が止めに入った。俺の攻撃を受けたけどな。
アディは俺たちを食事に呼びに来たらしい。そんなの部下にやらせりゃ良いだろといったらアディは黙った。代わりに総合隊長が『王様は兄上のことが好きなのですよ。貴方がいないときも兄さん兄さんって』といった。その後すぐにアディに殴られたが。
すっかり蚊帳の外になっている華僑を連れて食事の場に連れて行った。大き目のドアを開けた瞬間――
パァン!とクラッカーのなる音が。思わず俺たちはびっくりして固まった。
「ふふっ、兄さん驚いたでしょ?折角兄さんが一時的とはいえ帰ってきたんだ。パーティでもしようかとね。華僑さんの歓迎もかねてますし」
俺と華僑を見て笑った。華僑は旨そうな飯だ!と言って目を輝かせている。
……まぁ、たまにはいいか。ルイがこんな事を聞いたら凄い怒るだろうな。そういや、ナイトとルイはどうなってるんだろうか。アディに聞いてみるか。
総合隊長が俺と華僑を席に案内する。俺たちの目の前にはアディ。
華僑は席に座ると手を合わせていただきますといってから食べ始めた。よほど腹が減っていたんだろうな。気持が良いほどの食いっぷりだ。
俺は手だけを合わせて傍にあったパンを口に入れた。普通に美味しいな。酒ないかな。酒。
「アディ、ルイとナイトのことしらねぇか?」
「んー、まだ情報は入っていないけどでも、気になる話なら……。なんか、つい最近チェイ国に大きい魔物が入り込んだけど、男女金髪二人だけで倒したって。女は魔法を使い男は目にも留まらぬ速さで魔物を倒したって」
おもいっきしあの二人じゃねぇか。それを言おうとしたが口の中にパスタが残っていていえなかった。代わりに華僑がスープを呑んでから言った。
「……それって、ほぼルイとナイトじゃん。二人一緒にいたんだね。王様、二人のところに部下でも送っといてよ」
「華僑さん、僕ウィリシア国王ですけど……。まぁ、元よりそのつもりでしたしもう送りました。明日には着くと思いますよ」
ただの平民がウィリシア国王に命令……。普通だったら逮捕じゃ済まされないぜ。まぁ、そこは華僑だしアディだし。
アディがやっと食事を始めた。俺はそこら辺にいるメイドにビールもってこいと言った。ついでに華僑が日本酒もと。
あぁ、そうだ。俺たちの国では17歳から酒はOKなんだ。現実じゃ20になってからだぞ。
「何、ブツブツ一人ごと言ってるの?酒OKとか20とか」
「ん、こっちの話」
三人で談笑しながら腹いっぱいに飯を食って俺は自分の部屋へと戻った。
昔、ここに住んでいたままの状態だった。家出をしてから五日後ぐらいにナイトが来たな。何かと俺に尽くしていたが俺はそれが嫌でただの友達で良いといったらすぐに態度を変えて……。今じゃ、いい親友だ。なんだかんだいってもう13年は一緒に居るのか。
俺は荷物を適当に置いてベッドにダイブした。凄くやわらけぇ。眠気が襲ってきたが我慢して風呂に入りすぐに寝た。