14話
他人の邪魔にならないように攻撃をする、俺はこれが大嫌いだった。だから先頭で戦うように言った。
アディに借りたナイフが腰にある。基本俺は素手で戦うから武器は必要ない。が、アディが護身用にとうるさいから持ってきた。
殴って蹴ってかわして蹴って屈めて殴って足払いをかけて……致命傷こそ与えられないが後ろにいる兵共が止めを刺す。そんな感じでどんどん前に進んでいく。
数分は経っただろうか、そろそろ疲れてきた。息が上がり、傷を負う回数が増えてくる。
……つらい、苦しい。そんな事が脳裏をよぎるがすぐに消し去った。自分自身に負けた時点で俺は死ぬ。此処は命がけの戦場だ。
と、近くに居た一人の兵が疲れに負けて倒れそうになった。そして其処に魔物の手が――。
グシャ。
何とか急所は免れたようだ。そいつは残りの魔力でテレポートしていなくなった。恐らく後ろのほうも負傷者がいっぱい出ているんだろうな。
と、前に進みながら敵を倒していくと少し前のほうに後ろ側から攻めた兵達が来た。先陣を切るのはアディ。あいつ自身が志願したんだが、普通は王は戦わねぇよな。まぁ、見る限り心配は要らなそうだけどな。
俺達人間の勝利と思った。が、このウィリシア王国は長期戦に向いていない。敵の数は多い。いくら魔法を唱えたとて一発で攻撃できる敵は多寡が知れている。
そう、兵士の魔力がどんどん無くなって行った。魔法しか使えねぇやつはもう殆ど撤退した。剣術とかが出来るやつも要るがたいした戦力でもねぇ。
もう、後ろから攻めた兵達とも合流し残りの魔物を倒すだけなんだが兵も残り20になった。残りの魔物は100。こいつ等で一人5匹か……。いや、無理だ。急激に兵が減っていく。残っているのは俺とアディ、総合隊長、魔法隊長と3人の兵士の7人。
「おい!もう戦える奴らは居ねぇのかよ!」
「居ませんわ。どうするのです?私の魔力ももう残り少ないですわ」
魔法隊長がそう答える。となると、アディの魔力ももう無いだろうな……。
仕方がねぇ。残りの魔物の数は80ぐらい。
「魔法隊長、アディを連れてテレポートしろ。総合隊長は剣の腕がそこそこあるから残れ。そこの兵士もまだ平気なら残れ」
「兄さん!5人でこの数なんて無理だよ!僕はまだ……」
「分かりましたわ。テレポート!」
会話の途中でも倒して倒して……。俺は、腰にあるナイフを取った。別に武器が使えないわけじゃない。ナイフとか、爪とかなら扱える。俺の素手での攻撃では一撃で倒せないからな。
俺の魔物を倒すスピードが上がった。しかし、状況は不利のまま。
俺達の疲労もピークに達し限界になった時、目の前の魔物が倒されていった。
一瞬にして魔物が倒された。そこに立っていたのは銀髪の長髪の……
「女性の方?」
傍にいた総合隊長が聞いた。
すると、知っている声で答えた。
「違う!俺は男だよ!って、やっぱりディだったか」
「ハァ、ハァ……。華僑か」
そこで俺は倒れたらしく意識を失った。日はもうとっくに沈んでいた。