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13話

「……どこだよここ。見覚えがあるな」


無駄に広い庭。美しく整えられた花。綺麗な水の噴水。天使の形をした銅像。そして、周りには見たことのある服装の兵士が数人。

……槍向けられているのか?俺は。っつーか、ここは城か。

俺は地面に胡坐をかいている状態。兵は6人。新人が一人と隊長らしきのが一人。あとは普通に勤めている兵だろう。……全員の腰には小さな杖。魔法も使うのかよ。うーん、勝てないな。

……あ?魔法?普通は魔法を使う兵は槍なんかもたねぇ。そんなことをする国はたった一つ……


「テメェらはウィリシア兵か!って事はここはウィリシア城の庭園だな。なんっつー、面倒な所にテレポートされたんだよ」

「なんだ貴様、ここがウィリシア城と知って進入したのではないのか。何者だ」

「あー、アディを呼べ。そうすれば分かると思う」

「王を呼び捨てにするなど!貴様は死刑に値する!」


槍が俺に突き刺さろうとする瞬間、俺の声とそれとなく似ている声が聞えた。


「止めろ!……侵入者か?」

「はっ!王を呼び捨てにした挙句呼べと……」

「見せろ」


俺の目の前に居た兵が退いた。

俺と同じ茶色の髪の毛に少し垂れている目。まだ幼さが残る顔。その頭には王冠。赤い立派なマントをつけ、一国の王となった俺の弟。アディ。

そいつは俺を見て、驚きを隠せなかった。それもそうだ。自ら親との縁を切り王子の座を捨てた。アルス一族のくせに魔力を持たない出来の悪い兄がいるのだから。

俺が出て行った後に入った兵は俺とアディを見比べている。


「に、兄さん……何故こんな所に」

「あー、魔法陣に乗ったら勝手にここに来た。あぁそうだ。ルイとかナイトとかしらねぇか?」


俺は立ち上がりながらアディに問うた。

戸惑っている弟に対して別に普段と変わらぬ兄。混乱している若き王と不思議な王に似た不審者。

いつの間にか俺を囲んでいた槍はなくなっていた。


「いや、入ってきたのは兄さんだけだよ。……とりあえず詳しい話しは後で聞く。兄さんを客室に連れて」

「いや、いい。俺は仲間を探さねぇと。第一、俺はここが大嫌ぇだ」


そういって歩き出そうとするが、身体が動かない。アディを見るとなにやら魔法と唱えたらしい。

あいつの手がうす青く光っている。俺の足を見ると同じ色の魔力が絡み付いている。


「ダメ。本当は兄さんは不法侵入で捕まえなくちゃいけないのをわざわざ客人として扱うんだ。僕の命令に従ってもらうよ」

「けっ、これだから魔法使いは嫌ぇだ」


別に俺は何もしていないのに、足が勝手に動く。

そのまま城の中に入り客室へと向かわされた。途中、知っている顔が何人か。

……コック長は変わってねぇな。ま、老けたけど。今度の兵士総合隊長は25ぐらいの男か。お、魔法隊隊長だ。今度は女になったのか。回復隊隊長は変わってねぇ。

にしても、各制服は変わらねぇな。総合隊長は黒いロングコートに腰にはベルト。魔法隊長は濃い紫の身体がすっぽり入るマント。

そんな風に余裕でアディの後をついていく(勝手にだが)。しばらく歩かされると大き目のドアの前に着いた。客室だ。

中には俺とアディだけが入った。外では兵士が二人待機をしている。

足にかけられた魔法が解け、俺は適当に座った。その向かいにアディが座った。


「で、兄さんは何しに来たの?返答しだいじゃ牢屋に入れなくちゃいけないんだけど」

「けっ、テメェが俺を牢屋にぶち込む?無理だね。んで、何しにきたって?さっきも言ったろ。魔方陣に乗ったら此処に来たと」

「じゃあ、その魔方陣は何処で乗ったの?兄さんは魔法が嫌いだからそういうものには絶対乗らないと思ったけど」

「魔島だ。嫌ぇでも、乗らなくちゃいけなかったんだよ」

「魔島!?どうやって其処に……まさか、ルイ・トリュナさん?」

「ご名答。行った理由は言えねぇがな……。ちなみに、ナイト、グパ族の華僑という男も一緒に行った」


そこで、ドアをノックする音が聞こえた。入ってきたのはメイド。手には二つのカップと菓子。

それを二人の間にあるテーブルにおいて部屋を出た。

お、コーヒーじゃねぇか。俺はコーヒーを手にとって一口飲んだ。

アディは紅茶を飲んだ。


「華僑?……知らない。ナイトさんも、か。ねぇ兄さんウィリシア城に残ってくれないかな。もう、父上も居ない、僕が王だ。仕来りも何も変えられるんだよ」

「やだね。やらねぇといけねぇことがある。……!……おい、今戦える兵は何人だ?」


遠くのほうで魔物独特の殺気と気配が感じられた。しかも、それなりに強い。数もかなり多い。

俺一人じゃ無理だし此処の兵を借りるか。


「へ?70は居るけど。どうして……」

「いいか、城の外に魔物が数千は居る。しかも、そこそこ強い。信じられねぇなら自分で確かめろ。屋上に行くぞ」


俺はアディが返答する前に手を取って屋上へと走った。途中、兵が止まれといったが気にしない。

階段を駆け上がり、屋上へ出た。城で一番高い所。俺は、無理やりアディに魔物が居るであろう方向へ顔を向けさせた。


「なっ……!!!」


黒い点が無数にあり、此方へ向かってくる。まだちょっと遠い。

後から来た兵もそれを見たのか、慌てている。


「慌てるな!そこにいる兵、今直ぐ今いる兵の中で一番偉いのをつれて来い!もう一人は全員戦闘体制に入れと言え!アディ、結界を強めろ。あと、一応住民に避難させておけ」

「はっ!」

「わ、わかった!」


三人は階段を駆け下りた。

……魔法使いと共に戦わなくちゃいけねぇのが癪だがそうもこうも言ってられねぇ。恐らく俺とアディを殺しに来たんだろう。

どうせ、魔島で話されたことが魔王にも伝わって魔王が指示でもしているんだろうな。

……って、何で俺はアディに力添えしてるんだろうか。もう、ウィリシアの奴等に関らないと決めたのに。

そう考え耽っている内に兵士総合隊長がさっきの兵と共に来た。


「何の御用ですか」


俺は魔物の大群を指差しながら


「あれ、見えるだろ?いいか、俺が先陣切ってやるからサポートしろ。それが不満なら俺は参加をしない。あぁそうだ。魔導師が居るならテレポートかなんかで魔物の背後にも兵を置け。挟み撃ちのほうが早く方が着くと思う」

「わ、わかりました!では、ディ殿お願いします」


俺は頷いて屋上から飛び降りた。スッゲー高さ。普通に落ちたら死ぬだろうな。

そんなことを思いながら近くの木々につかまりながら地上に降りた。

俺はアディを探した。すぐに見つかり、その傍には大勢の兵。アディと話しているのは魔法隊隊長、突撃隊隊長、遊撃隊隊長。

俺は魔法隊隊長に作戦を伝え、決行してもらった。

テレポートし、俺は魔物の目の前に立った。そして、


「行け!死なない程度に暴れて来い!一匹も逃がすな!」


戦闘の開始。

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