12話
「ここは……?」
「恐らくニナ大陸でしょうね。……ディと華僑は?あとはフィナもいませんね」
魔島で魔法陣に乗り元の世界へ戻ってきたと思ったらディと華僑の姿が見当たらない。
まぁ、ルイ様がご無事で何よりですよ。
魔島で見たユウストの記憶、私の考えとほぼ一緒だった。私達は良く似ている。血が繋がっているとはいえ、ここまで一緒だと気味が悪くなりますね。
そういえば、ルイ様とディは大昔とは言え親戚だったんですか。そうは思えないんですけどねぇ。
「へ?あ、いないや。おーい!」
ルイ様が大声で二人を呼ぶも返事は返ってこない。
私は気配を探ったが誰もいない。つまり、今二人きり。
「……うあー、バラバラになったじゃんかー。二人に僕の魔力を入れとけばよかったな。そうすれば探せたんだけどなぁ。あ、フィナは魔島でやらなくちゃいけないことがあるからと言って来て無いよ」
「そうですか。何時かは合流できますよ。さて、とにかく町を探さないといけませんね。魔法とかで探せませんか?」
「あー、無理。ニナ大陸かぁ……。チェイ国までならテレポートできるかも」
「チェイ国ですか。それなりに大きい国ですからね。行きましょうか」
ルイ様は詠唱を唱えて私達をテレポートさせた。
チェイ国はニナ大陸を治めているニナ国の次に大きい国だ。たしか、あそこは世界でもトップクラスの情報管理施設があると聞いている。チェイ国に知らない物は無いというほどだ。
あとは、技術が凄いとも聞いたことがある。ご飯も美味しい。
チェイ国はとても平和で自国を守る兵士以外には戦闘できるものがいないらしい。
王国ではなく、平民が立候補して政治をしている。凄く平和な国だ。
今、私達の目の前にはチェイ国の門。魔物が入ってくるから何処の国でも村でも門と高い壁がある。
「ここ、随分強力な結界だね。こりゃ、普通の魔物じゃ破れないよ。僕でも骨が折れる」
「まぁ、大事な情報も多数ある国ですからね。漏れたら大変なことになりますから」
門を開けて中に入る。とても賑わっており、活気もある。
チェイ国に住む人は皆親切だ。礼儀正しく自分を大きく見せず謙虚になる。それはニナ大陸全般にいえるが、ここは特にそうだ。
とりあえず私達は宿に向かった。もし、この国にいるなら宿か酒場にいると思ったからだ。しかし、予想は外れた。
次に酒場へ向かう物の、二人はいない。ついでに酒場でご飯を食べることにした。
「そうですねぇ、ワインでも飲みましょうかね」
「昼間からお酒ぇ?僕は紅茶ね。あと、ピザを食べたい」
「分かりました。すみませーん!」
私が店員を呼ぶと、綺麗な女性が来た。
……これはナンパするしかありませんね。
「ワインと紅茶、ピザと貴女をお願いします」
ニッコリと笑う。女性を見ると顔が真っ赤になってうつむいている。
成功ですね……(ニヤリ)
「え、あ……。わ、私ですか?」
「えぇ。nぶげしっ!」
私の右側から固い何かが顔に当たった。そこを見ると笑って怒っているルイ様。恐らく魔力の塊だろうか。
……スミマセン。
「ごめんね?あんまり気にしないで」
「えあ、はい。ワインと紅茶とピザですね。少々お待ちください」
店員の女性がカウンターへ戻るとルイ様が此方を見る。
笑顔のままで。地味に、怖いんですが。
私は目を逸らそうとしたが、結わえている髪の毛を掴まれてそれは出来なかった。
痛い。凄く痛いんですが。
「ねぇ、僕ね、面倒なことは嫌いなんだ。わかる?ナイトはナンパが成功すれば良いと思うけど、僕はされた子をどうナイトから剥がすか考えなくちゃいけないんだ。ディとか華僑がいれば二人に任せるけど今は僕しかいないんだよ。ね、分かる?」
「は、い……スミマセンでした」
「ならいいよ」
ニッコリと笑ってはいるが、目はこれっぽちも笑っていない。
と、注文した料理が来た。今度は男の方だ。
「お待たせいたしました。……おい、優男。俺の娘に手を出すなよ?」
「あぁ、娘さんでしたか。これは失礼」
私はニッコリと笑い返した。すると、男は手をボキボキならした。
そのまま、彼はカウンターへ戻った。
手早く食事を済ませ店を出た。ワイン、美味しかったですね。
とりあえず二人で町を歩いた。流石チェイ国。技術が発達している。
ふと、壁を見たら何かの知らせがあった。私は足を止めてそれを読んだ。
『あの、ウィリシア王国に家出をしたディ元王子が帰ってきた!』
「はぁぁぁぁ!!!???」
「ど、どうしたの!?」
「ディの行方が分かりました。ウィリシア王国ですよ」
「えっ」
嫌な予感がしてきた。