11話
「ルイーーー!!!!心配したのよ!?ごめんね!ごめんね!お母さんを嫌いにならないでぇぇぇぇぇ!!!!」
「う、わ!」
……誰だコイツ。見た目はそうだ、神獣(人間バージョン)だ。だが、今俺達の前でルイに泣きながら抱きついているのは誰だ。
ルイにとっての育ての親は神獣か。お母さん、か。
と、俺達のそばに魔獣が来た。チーターに似ているがフッサフサだ。
「神獣様はルイ様をとても心配しておられた。まぁ、神獣様は所謂親バカ……ゴホン。子煩悩な方なのだ。我の名前はウェン」
あぁ、そういうこと。
俺は二人を見た。神獣はまだルイに抱きついて、その本人は困りながらも神獣の頭を撫でている。
「どっちが子供だかわからねぇな」
「えぇ」
「そ、そろそろ放して!僕達、魔王退治に行くから!」
ルイがそういった瞬間、神獣の表情が変わり先ほどまでとは打って変わって真剣になった。
……切り替え早ぇな。
と、ウェンが神獣の傍に寄った。何かそいつに耳打ちをしてウェンはどっかに行った。
「分かりました。では、こちらに来てください。貴方達に渡したい物があります」
ウェンが行った方向に俺達も向かった。そこには大きな魔方陣と中心には丸い透明な石。
多分水晶だな。魔法に詳しくねぇから良く分からねぇけど、水晶と魔力は凄く相性が良いと聞いたような聞いていないような。
神獣はその水晶を持ち、何か詠唱を唱えた。すると、水晶から何かが出てきた。
幻覚か?あんだあれ。なんか写っているし。
「これは、英雄・ユウスト、夜叉が残した物。私は手紙と言っていましたがまぁ、似たような物です」
……作者しっかりしろ。
映し出されたのはナイトにとても似ている男と、グパ族特有の銀髪赤目の男。こちらは華僑にそれとなく似ている。
なるほど、たしかに英雄の子孫なんだな。そう思っているうちに映像から音声が流れた。
『これ、もう始まっているのですか?』
『……そうみたいだね。えーと、俺達の子孫はこれ見ているのかな?』
声も似てる。
にしても、こいつ等本当に英雄かよ?
『えぇ。ほら、早く話しなさい』
『分かったよ。俺の名前は夜叉。こっちはユウスト・リンガー。君達に残したい物があるんだ』
『それは、私達の力と知識。神獣様が持っているはずです。受け取りなさい』
『…あ!そういえば、イルナの子供もいるんでしょ?』
夜叉が言うとルイが反応した。
『ごめんなさいって伝えて、と言われました。ルイお嬢様、頑張ってください』
『魔王を再び封印できるのはルイしかいないんだ。真実を知って辛いと思うけど、よろしくね』
そこで映像は途切れた。
俺はふとルイの顔を見た。泣いていた。でも、笑っていた。
神獣は何処からか4つの飴らしき物を持ってきた。黄色、茶色、青色、白色。それぞれ、ルイ、俺、ナイト、華僑が食った。
すると、頭の中に誰かの記憶が流れた。恐らくシイク・アルスの記憶だろう。それと共に彼の戦い方なども流れてきた。勿論彼が持っていた知識も。
……記憶の魔王は少し前にみた魔王らしき魔物をまったく違ぇ。記憶の魔王が凄ぇ禍々しくて実際に見たわけじゃねぇのに、恐怖を感じた。こんなのと戦わなくちゃいけねぇのかよ。
そのあと、ナイトと華僑には武器が渡された。見た目は殆ど変わっていないが、切れ味は良いらしく華僑がうっとりと刀身を見ていた。
簡単に神獣から死の世界への行き方を教わった。何でも、月が重なったときじゃないといけないらしい。重なるのはまだまだ先の事。それまで自由にしてて良いらしい。
そしてまた魔法陣に乗って、元の世界に戻った。