10話
僕は、何も知らなかった。神獣からは僕は普通の人間でこの魔島にずっと居たから魔力が大きくなりすぎただけって言われた。僕は信じていた。そのことを。
でも、違った。僕は数万年も前の人間で魔王を倒すためだけに僕はこの時代の人間に育て上げられた。
何なんだろう、僕は。僕が生まれた理由ってそれだけ?
きっと、ディ達は僕を怖がるのかな。嫌いになるのかな。
僕は起きた。気絶をしていたから。目の前には僕の顔を覗いているディ。
「お、やっと起きたか。心配したぞ」
僕を目が合った。ディはいつも通りにしている。
僕は上半身を起こした。多分ここは僕が育っていた小屋かな。見覚えがある。
「ルイ様ああぁぁぁあああぁぁぁ!!!!ご無事で何よりです!」
ナイトが泣きながら僕に抱き付いてきた。
「う、わ!ちょ、ナイトキモイ!離れて!て、テレポート!」
「ルイ様あああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
叫びながらどっかに行った。そこまで魔力が回復をしていないからあんま遠くに飛ばせなかったけどね。
……皆、いつも通りだ。凄く安心したな。
「……とりあえず元気そうで良かったよ。で、ナイトは戻ってくるの?」
「まぁ、多分。……ねぇ、何で前と変わらないの?」
「なんだ?テメェ態度が変わってほしいのかよ?あのなぁ、別にテメェが数万年前に生まれようと英雄
の子供だろうと怪物じみた魔力を持とうとテメェはルイと言う存在だからな。別に変わりゃしねぇよ」
僕の頬に何かが伝った。泣いている。
あぁ、そうか。僕は僕なんだ。兵器でもなんでもない、僕なんだ。
僕は涙を拭いてベッドから出た。体力も回復しているし問題はなさそうだね。
と、ナイトがフィナと一緒に戻ってきた。
「フィナが居て助かりましたよ……。おや、もう大丈夫ですか?」
「うん!(さっきまでのあれはなんだったんだろう)」
華僑がいつの間にかこの部屋を出たのかいない。そう思うと戻ってきた。手にはカップ。
それを僕に渡した。紅茶だ。あったかい。
僕はそれを飲んだ……
「あっつぃ!」
「当たり前だよ。ナイトー」
「はいはい。ルイ様、舌を出してください」
僕が言われたとおりにすると火傷した所にナイトが魔法を唱えた。その横ではディが笑っている。
だってさぁ、僕だってこんなに熱いとは思わなかったんだよ?
少し冷ましている間に華僑は他の人の分も入れてきた。ディとナイトにはコーヒー、華僑自身には緑茶、フィナには水。
全員が飲み終わるぐらいにディが話し出した。
「あー、神獣に言われた通りに魔王を倒しに行くのか、俺達は。アイツはそうしてほしいといっているしな」
ディが持っていたカップを近くにあったテーブルに置いた。
続いてナイトもその隣に置いた。
「ルイ様が寝ている間に私たち三人は行くかどうかを決めました。しかし、結局決まりませんでした。ルイ様の心情を考えると結果が出ないのですよ」
「そこで俺達はルイが決めることにしたんだ。別に無理に行こうとしなくても良いよ」
と華僑が言いながら僕のカップを持ってディ達のカップの傍に置いた。
三人とも僕を思っていてくれる。まだ旅をしてそんなに経っていないのにまるで何年も一緒にいたような絆がある。
きっと、僕たちには英雄の血が流れているからかなぁ。
僕は迷わずに答えた。もう、答えはとっくの前から出ていた。
「……よ」
「ん?」
「行くよ!いざ!魔王退治!」
僕はベッドから立ち上がってガッツポーズを決める。
ディは別に驚くことも無く当たり前と言う顔で、ナイトは驚いた後微笑んで、華僑はニッと笑って僕を見た。
「よし、決定だな。じゃあ、神獣に会いに行くか。ルイはどうするんだ?」
「へ?行くけど何で聞くのさ」
「あ?……何となくだよ(テメェを心配してとか言えねぇ!)」
そういったディの顔が少し赤いような気がした。気のせいかな。
と、ナイトが僕に近付く。身長差があるから僕はナイトを見上げてしまう。
「ルイ様は神獣に対して怒っていませんでした?それで、ディは気を使ったのですよ」
「あぁ!大丈夫だよ。ディのおかげでね」
ディは後ろを向いたまま歩き出した。華僑がディの顔を覗いて今度はニヤリと笑った。
僕達はディの後に続いた。フィナはお留守番。
と、僕はあることを思い出した。
「あ、ねぇ、ここから神殿はかなり遠いよ?」
「どれくらいだ?」
「さぁ?……へーんしん!」
僕は適当に魔法を唱えた。すると、僕の身体は黄色い鳥に変わる。
華僑が僕を見てあ!と声を出した。
そう、始めて魔島に来た三人が見たあの黄色い鳥は僕だったのだ!すごいでしょ。
僕は空を飛んで足でディと華僑をつかんだ。そして、ナイトはディにつかまった。
僕は三人をつれて空を飛ぶ。……流石に男三人はきついかな。
15分ほど飛んだだろうか神殿に付いた。僕はパッとディと華僑を放す。三人は普通に着地をした。僕も変身を解いて着地する。
「ルイ様に似ていると思ったら本人でしたか。にしても美しくなりますね……」
僕はナイトの言葉を無視して神殿に入った。
入り口のすぐ傍に人間の姿をした神獣がいた。