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「村木さん、思い出したくもない事を語らせてしまってごめん」


「いいよ、如月君、起きてくれたし。少し落ち着いたかな」


 すっかり気落ちしている様子だけど、無理して笑ってくれた気がした。


「そんなつらいところ悪いけど、そろそろ俺達も動こうと思うんだ」


「えっ? どういう事? 動くといっても何を……外へ出るの?」


 まあ、そういった反応になるだろう。だがそこへイリアが口を出した。


「あの、いけません。外は危険です。この平原は四方を魔獣の森に囲まれているんです。特にこの地域は濃霧に覆われやすく誰も寄りつかず、入ったら最後とまで言われている人食い魔境なんです。凶暴な魔物に見つかってしまう恐れがあります」


 イリアが狼狽している。外はよっぽど危ないってことか。じゃあイリアはどうやってここまで来たのか、あとここら辺の状況を詳しく聞き出す必要があるな。

 ただし、今は覚醒し意思をもつ人間を増やす方が先決だ。


「まずは佐伯先生を起こして落ち着かせようか」


「3人なら先生がもしパニック起こしても押しとどめられるもんね」


「佐伯先生。そんな恰好で寝ていたら、風邪ひきますよ」


 肩を揺さぶってみた。これ23歳か? 制服着たらここのクラスメート達(17歳)に交じっても違和感ないだろう。間近に見ても15歳くらいにしか見えない。

 なかなか目覚めない。まあ何回か揺さぶったり顔ぺちぺちすれば眼覚ますかな?


「う……ううん」


「佐伯先生! 大丈夫ですか?」


「えっ? ここは……嘘? 相沢美香さん……」


「どうか落ち込まないでください。先生はちゃんと最後まで彼女を守ろうとしていました」


 佐伯先生が相沢さんを止めたせいで、彼女は死んだなんて認めさせたくないし、先生の心が折れてしまわないよう村木さんが優しく声をかけた。


「こんな事って。教師のわたしが守るべきだったのに……どうして……」


「佐伯先生。気を確かに持ってください。今俺達も死ぬ間際なんです。まあまあやばいピンチですね。覚悟しましょうか」


「如月君、もう少し言い方が」


 この先生は下手にごまかすよりは、現状を理解してもらう方がいいと判断した。


「ここにいれば今は安全だけど、餓死を待つばかりで、でも外に出ればどうやら魔物に食われるかもしれないって言う地球じゃ滅多に遭遇出来ないピンチです」


 佐伯先生は意外に落ち着いていた。相沢さんがこんな事になってぴーぎゃー騒ぎ立てるかと思っていたのだけど、そこんところは肝の座った教師という事だろう。

 落ち着いてないと正確な判断が出来なくなる事を分かっている様だ。


「如月英多君! 君起きてくれたのですね。無事で良かったです。先生は知っていますよ。君がいつも授業中ずっと寝ていた事を。駄目じゃないですか! まだこれからが大事な時期なのですから。学生は学業が本分なんですよ。先生はあなた達がしっかり勉強して将来立派な……」


 あれ? 今懸念するべき話題から逸れてきた。真っ当な教師と言えばそうなるけど、今は真っ当でなくてもいい。使える頼れる人でいて欲しい。


「先生。そういう小言は無事元の世界に帰れたらいくらでも聞くので、今の状況を説明していいですか?」


「如月君が無事だったんで佐伯先生は嬉しいんだよ、きっと」


 村木さんの顔色もだいぶ良くなっている。話し合える人数が増えたからな。


「村木紗枝さんも無事なのですね、良かったです。でも他の生徒の皆さんは? それと……えっと……」


 佐伯先生がイリアへ振り向いた。イリアが首を傾げる。


「申し遅れました。わたくしはイリア・アルフ・シャリオット・フォンデンブルグ・シャーディーと申します」


「えっと、イリア・アルフ・シャリオット・フォンデンブルグ・シャーディーさんですね。わたしはこのクラスの副担任の佐伯麻衣です。よろしくお願いします」


 佐伯先生は生徒達全員をフルネームで呼ぶ癖がある。新任なので名前を覚える事に注力した結果だろう。

 イリアに関しても間違えずに言えた。


「佐伯先生、彼女は略してステファニーでいいらしいです」


「もうステファニー止めなさい!」


「わたくしはステファニーで構いませんが」


「もうその論争止めようか? 時間がもったいない」


「元はあなたが原因でしょ!?」


「それじゃあ、イリアさんにしますね。あなたはすごく可愛らしくてお姫様みたいですね。帰国子女ですか?」


「うん、可哀そうなことにコロラドで雷に打たれて記憶喪失に……」


 バシッ!


「くどい!!」


 村木さんに頭をはたかれた。


「とはいえ、イリアには聞いておくべき事があるんだ。分かるよね? イリア」


 俺はイリアへ視線を向けた。若干もじもじしながらもイリアは俺を見返した。若干話し合う必要があると判断した俺は机を4つ寄せ合って座る形にした。小中学校の給食時を思い出す。円卓会議のような形だ。


「はい、何故わたくしが王女でなくなったか? という事ですね」


「それもあるけど、どうやってこの危険な辺境にたどりついたのか? だね」


 王女という言葉を聞いて、佐伯先生が驚いた顔をした。


「イリアさん、本物のお姫様だったんですね」


 眼を輝かせているところを見ると、佐伯先生は童話に出てくるようなお姫様を想像していたのだろうけど、イリアはどうやら期待以上だったのだろう。


「姫ではあったのですが、わたくしはリブレ―王国の王太子殿下の婚約者でした。政略結婚の為でしたが、突如、王太子殿下から婚約破棄を告げられたのです」


 リブレ―王国!? アリシアの国じゃないか!?


「君はシャーディー王国の王女……リブレ―王国とは国交成立の為、リブレ―王国の王太子殿下に嫁ぐ予定だった。だけど、何らかの理由で婚約破棄されたと? でももし君にとってそれが愛が介在しない政略結婚だったというのなら破談になったとしても周りは看過するんじゃないか? 君の父親であるシャーディー国王はそれを以って君を国外追放にまで追い込んだのか?」


 イリアにとっては答えにくい質問だとは思ったが、どうやらアリシア、リブレ―王国という絡みからして、イリアの国外追放というのは何らかの関係があると考えざるを得ない。

 イリアは俯き逡巡するが、やがて顔を挙げて、俺の眼を見た。


「……分かりました。英多様、紗枝様、それに麻衣先生様。わたくしはあなた方のおかげで今現在生きながらえております。いわば命の恩人でございます。全てをお話しましょう。もしかしたら、紗枝様のお話にあったアリシアという者の勇者擁立の話について繋がる可能性があり……」


 ――その刹那。イリアの話を遮りたいとばかりのタイミング。


 寄せ合った4つ机の真上の空間に突如禍々しいオーラを纏った魔法陣が現れた。


 まさか!? アリシアなのか?……村木さんと佐伯先生が脳裏に悪魔を浮かべ驚愕する。

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