8.違う私
鏡の前に座って化粧をする。
ファンデーションを塗ってアイシャドウ、アイラインをひき、真っ黒いマスカラを塗り、再度ビューラーで持ち上げる。
ぱっちりとした目が出来上がれば、次は唇。紅をブラシで取って、薄くのばしていく。上からグロスを塗ってふっくら唇の完成。
私は特別、化粧が上手なわけではない。
けれど、元の顔が嫌いでも、化粧をすれば、多少は見れる顔になるから不思議だ。化粧をした私の顔は、それほど嫌いでもない。
なぜだろう? とふと考える。
過去にニキビのひどい時期があったものの、いじめられていたわけではなかったのに。
きっと、違う自分になりたいのだろう。
仕事でも、うまくいかないことが多かったり、
恋人ともすれ違ってばかりだった。
どんなに願っても、自分を変えることは簡単なことではなく、焦る想いだけが募り……。
でも、化粧は違う。ちゃんと自分のやり方さえ間違っていなければ、理想通りの自分に変身できるから。
現実世界もそうだろうか。
私の今までのやり方が、間違っていたのだろうか。
何が?
どこが?
誰も教えてはくれない。答えなんて、自分で探すしかない。
どうすればいい?
もしかしたら、答えなんて初めからないのかも知れないけれど。
薄暗い部屋の蛍光灯が、チカチカとなる。それを目で追いながら、自分の将来について考える。
化粧をして、少し変わったつもりでいても、それを落とせば、やはり今までとは変わらないのだ。
ただ、一時の夢。幻。
変わったと思えば、それが変われたということ。
化粧をした時のように。
いつか化粧をしなくても、変わったと思える自分になりたい。
そう思って、チカチカと光り輝く蛍光灯を換えるために、私は椅子から立ち上がった。
いつか私も、この蛍光灯のように変われたらいいと思いつつ。
そんなに簡単にいかないけれど、思うくらいは自由だよね、そう心に呟きながら、私は明日もまた化粧をするのだろう。
【終】
どんなに変わりたいと願っていても、
何の努力をしなければ
そこには何の価値もない。
「変わりたい」
それが、
すべての始まり。
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《初出》記録なし ※不明
2004年9月22日執筆




