表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/33

28.きよちゃんのダイエット大作戦


 明日からダイエットを始めると心に決めた。もうすぐ夏だし水着の季節。それに向けてダイエット開始だ!

 

 一日目


 まず七時起床。

 ねぼけまなこで体重計に乗る。昨日から0.2キロ太っている。ガーン。初日からこれか、と軽いめまいを覚える。ポテトチップスを食べたから? いやでも五枚だけなのに。

 それから顔を洗って着替える。

 OL二年目。制服は一応Мサイズ。標準だ。会社に行く時、なるべく目立たない服を好んで着るようになった。白いシャツに黒のタイト。無難な線だ。

 先輩たちは皆、細い。ちゃんと食事をしているのだろうか、といらん心配をしてしまう。

 軽く化粧をして朝食。角の丸い四角いテーブルの上に置いた、コーンスープとサラダだけ。前は、パン二枚食べていた。けれど我慢。あとはお弁当を作る。母がいたら叱られるな。おにぎりを握りながらそう思った。


  お昼

 午前中、お腹がすいて困った。デスクワークの仕事とはいえ、コピーしたり、それを配りに走ったり、結構会社内を歩くことを忘れていた。

 お弁当はおにぎり一個。……二個にしとけば良かった、と近くのコンビニでサンドイッチ追加。このぐらいはいいだろう。

 静かに咀嚼する。美味しい。昔からこんなに美味しかったっけ? お腹がすいてるせいかな。

 と、先輩に声をかけられた。

「あらきよちゃん、お昼それだけ?」

 いや結構食べてるんです、という言葉を飲み込み、

「ダイエット中なので」

 と答えた。そうしたら先輩も、

「私もよ」

 どこにそんな必要が? と思う。細い体なのにそれ以上痩せてどうするんだろう。

 定時に上がり、街灯の中を家路へと急ぎながら夜のメニューを考える。

 屋台の焼き鳥屋の前を通り過ぎるといい匂いが鼻孔をくすぐった。

 あ、レバニラとか暑さ対策にいいかも! 私ってばエライ! そうしようそうしよう。

 材料を買って調理し始めたら台所の暑さにバテそうになる。もともと狭い1LDK。クーラーはまだまだ使わない。

 レバニラ炒めと、玉ねぎの味噌汁、ご飯のおかわり。

 うん、まとも。ごちそうさま。上出来だ。一日の締めくくりにちょうどいい。

 明日の体重に期待する。明日はゆっくりしてよう。土曜だしね。


 二日目


 朝、トイレに行ってから体重を計る。それが一番いいらしい。ドキドキ。

 プラス0.5キロ増加。Why? なぜ? 何がいけなかったんだろう。夕食のおかわりかな。

 朝食はまたサラダ。あとバナナ一本に代えてみた。これで大丈夫なはず。

 午前中はまたまどろみつつ、腹時計でお昼に起きる。恐ろしい。

 面倒だったからインスタントの小さいカップヌードルにしてみた。久々だな。うん、美味しい。

 午後は両側が緑に茂っている道を通りながら、自転車で風を感じつつ図書館へ向かう。CDを何枚か借りてみた。

 CDを聴きながら、帰り際にコンビニで買ったアイスを口に運ぶ。冷たい物が口いっぱいに広がり、私は目を閉じて微笑む。これくらい平気だよね? 

 うん、平気だよ、ともう一人の私が言い訳する。大丈夫大丈夫。

 夕食。

 面倒なので、お惣菜でごまかす。牛肉コロッケ二個、チキン一個。ご飯少なめ。

 よし。今日こそ大丈夫だろう。楽しみだ。


 三日目


 さあ、体重を計るぞ。恐る恐る体重計に足を乗せる。片目をつぶりながら、こわごわと目を開く。見たら昨日からマイナス0.2キロだった。つまりプラス0.3キロのまま。

 うーん。どうしてだろう。ちょっと気分が落ちこんできたから、化粧もせず気分転換に近くの本屋に足を運ぶ。色んな本を見て、ダイエットの勉強をしたいと思ったからだ。

 外の日差しはもう強くなりつつある。そろそろ日焼け止めも必要だな、と空を仰いだ。空はどこまでも透き通って、少し湿気を帯びた風をなびかせる。

 本屋に着く。ふうと、一呼吸ついた。自動ドアで中に入る。

 店内はまだクーラーは入れていないものの、やはり外に比べるとずっと涼しく、ひんやりとした風と外からの生暖かい風が混じって、体を覆う。 

 さて、ダイエット関連の本はどこだろう。いつも見ないから探す羽目になる。たくさんの種類の本が棚に並んでいる。

 振り向いたとき、雑誌売り場に目がいった。女性誌だ。

 それらの一番最初に目についた表紙に愕然とした。

『朝ごはんは、しっかり食べよう。それが痩せるもと!』

 へ? と思って思わず手に取る。ずっしりとした重さを感じながら文字を追う。

『痩せたい人は、朝をしっかり、夜を少なく……』

 なんてこったい。……今さらかい。私は逆だったんだ。

 きっと、この雑誌に出会うのが遅すぎたんだ。




   【終】


《初出》

 2010年10月29日発行「本当の友達は輝ける宝石」収録

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ