26.ビアガーデンの中で
秋の夕暮れの中、朋子とビアガーデンにいた。早い時間に仕事が終わったのでビアガーデンで飲んでいたのだ。時間が早いせいか、外のライトはまだまばらにしか点いてない。ビールのせいか風が心地よく感じる。
時間からして周りの客は少なく、私達や、他の人たちがぽつんぽつんといるだけだ。
「恋バナとかしたいねー」
私が言う。
もう二十四だ。落ち着きたい。
「ああ、そうだねー」
同意する朋子。パーマがかかっている肩までの髪を、細い指先で耳にかける。彼氏からもらったのだろうか、耳たぶのピアスがきらりと光った。
「男の人ってしないみたいね、そういう話。あと付き合ってても友達優先とか」
「うんうん」
分かる分かる、と私が頷く。説得力があるのは朋子にイケメンの彼氏がいるからだろう。美人の彼女とはお似合いだ。
「女の子は恋人優先だもん」
「そうなっちゃうねー」
自分はどうなの? といじわるく訊いてみたかったけれど、黙っていた。嫌な女にはなりたくない。
周りに目をやれば少しずつカップルが増えてきたのが分かる。お互い見つめあって幸せそうだ。羨ましいと思う。ライトの数も増えてきた。
と、朋子の携帯が鳴った。
「あ、ちょっとごめん」
彼女はいったん携帯を見てから、急いで立ち上がり端の方へ向かう。微笑む朋子。
彼氏からだな、と直感する。
さて、この後どうしようか。
一人で飲むのも寂しい気がする。朋子が彼の所に行けば一人になるから。そんなことを考えていたら、朋子が小走りで戻ってきた。
「ごめんね、待たせちゃって」
「彼氏でしょ? いいの?」
「あ、平気平気。どうせ夜からでも会えるし」
なぜかその一言に安心して、私は苦笑した。そして、そういう友達を持っていることを誇りに思った。
私を優先してくれたことに。彼女がどれだけ彼のことを好きか知っていたから。
ありがとう、と心の中で呟いた。
【終】
《初出》
2010年10月29日発行「本当の友達は輝ける宝石」収録(初出)




