17.シャボン玉に託された祈り
夢を見た。
幼い頃の私。
まあるいシャボン玉を緑あふれる公園で、吹いて遊んでいる。
丸く浮くシャボン玉。
子供の頃の私。
近くにあった駄菓子屋。
そこに住む老夫婦。
婦人の車イス姿。
断片的に焼きついたそれらを、私は現実の世界に求めようとした。
軽く息を吸い込んでぷくって息を吹く。まあるいシャボン玉がぷかりと浮き続ける。
高校生というのに、ブランコをのっとって大きくこぐ。
小さい頃、私がしていた頃をしてみる。
周りの大人たちはどうやら、私が高校生だとは思っていないようだ。
緑が、穏やかな風を揺らす。
五月の風が髪にかかり、頬にかかる。
駄菓子屋に行った時、老夫婦がいた。
ああ、そうだ。
ここの婦人は左足を悪くしていて、いつもびっこをひいていたんだ。
何でだろう、私には関係ないはずなのに涙がこぼれる。
だって。
知らない人じゃない。
私の幼稚園時代から、私を見守り続けてきてくれたような人だ。
転んで泣いていた時は、一個十円のコーラ味の大きな飴玉をくれた。
アイスが当たった時も、一個じゃ兄弟喧嘩するからと、おまけしてくれた。
そんなような人を、どうして他人のように思えるのだろう。
自分には何も出来ない。
この小さな手には祈ることしか。
どうか、どうか少しでも幸せを感じられますようにと。
だから祈りと共にシャボン玉を吹く。
この想い、天まで届け。
私の祈り、実らせて。
【終】
丸い玉に祈りをこめて。
私は明日もシャボン玉を吹き続けよう。
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《収録一覧》
2010年5月4日「ほのぼの」(初出※)
※ 2008年7月15日執筆。(再録短編集「ほのぼの」に書き下ろしとして収録)




