12.愛にあふれた家
ねー聞いてよ。うちのお母さん、未だに新婚夫婦みたいなの。
買い物行くときもご飯作るときもいっつも楽しそうで、全然苦じゃないみたい。家事が好きなのかなきっと。
洗濯物も歌唄いながらパンパンと干しているし、アイロンもささっとかけちゃう。一度「大変でしょ」って言った事があったけど笑われちゃった。
「なんで? 好きな人のためにしてることよ? 大変だなんて思ったらお父さんに悪いでしょ。好きなのよ、することが。あの人に出会ってあの人を愛して、あなたを産んで本当に良かったわ。人はね、愛されるより愛する方が幸せなのよ、きっと。欲張っちゃダメ。あなたがそう思えるまでお母さんもまだまだ修行が足りないわね。思い上がっているのかしら? でも、そんなふうに考えられるようになってくれて、お母さんも嬉しいわ」
って。ちょっと誇らしげにそう言ったお母さんは、二十代に見えた。
理解できるー? もう十四年よ? 私中学生よ? 何よこのラブラブ感は。絶対変よ。ふつーだったら浮気してるわ、どっちかが。
お父さんも本当に、お母さんが大事って見て分かるしねー。
家事手伝ったり、そこをやんわりいいわよーなんてお母さんが言ってたりしてさ。料理にはいちいち褒めるし。娘の前でほっぺたにキスするのよ? どうなのよ、教育上。
世の中、不可解なことが多いわねー。
でもね、ちょっと羨ましいんだ。私、カレと上手くいってないんだもん。どうしたらああ心から人を愛せるんだろう。
可笑しいね、私。お母さんの子供なのにね。全然似てない。
あ、チャイム! 続きは後でね。って言っても愚痴だけどさ。
【終】
愛にあふれた家、
それが私の帰る場所。
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《収録一覧》
2006年2月発行「水面上の家族」(寄稿・初出)
2010年5月4日発行「ほのぼの」(再録・個人誌初収録)




