ルシフェルを仲間に入れやう
〈かじかんだその手で探るスマホ哉 涙次〉
【ⅰ】
「魔界健全育成プロジェクト」會議室にて。佐々圀守キャップ。「みんな聴いてくれ。この度、『魔界壊滅プロジェクト』からこの『魔界健全育成プロジェクト』に編成替へがあり、大幅に組織はスリム化された。云ふなれば、我々は撚りすぐりのメンバーになつたつて事だ。その諸君に云ひたい。初回我々は失敗をした。カンテラ氏の果野睦夢斬殺で、余計な死者を出してしまつた(前回參照)。我々の職務は【魔】一人一人の醇化と云ふ事に盡きる。然し、カンテラ氏はカンテラ氏なりに、耐へるべきところは耐へてくれたと思ふ。教訓が一つ殘つた。決して結果を焦らず、その時どきのプロセスを重視しやうではないか。優秀な諸君には分かると思ふ。俺からはそれだけだ」-彼の後ろの席に陣取つてゐた、仲本担当官が拍手した。佐々は一禮すると、自分の坐席に戻つた。
【ⅱ】
當該シリーズ第190話にて、ルシフェルは鰐革Jr.と共倒れの形で、カンテラに斬殺された。彼の遺骸は荼毘に附され、成佛を一味に願はれたのだが、生前愛用の水晶玉一つと一緒に墓(無銘の)に葬られた彼は、まだ冥府には下つてゐなかつた。骨となつた彼だが、地底で水晶玉を覗いた。
「魔王は神と冥王の間に咲いた徒花である。何度でも『惡』をなす為に蘇る。私自身の生命を、私が長らへる為に、私は魔王を利用出來ぬものかと考へたが、彼(若しくは私、私の思考は飛んで、彼と私を結束する)はニーチェの云ふ『善惡の彼岸』にゐる。彼が『惡』をなすのは容易い。然し何が『善』なのか、何が『惡』なのか、それを考へると私の意識は朦朧とする。謂はゞ私の考察は、彼に拠つて壊滅する。考へるな、感じよ。魔王はさう云つてゐるかのやうだ。こゝに來て私は初めて死に恐怖する。が、着々と進行する私の體内の癌を、彼は一切オペレイトしないのだ。ゲームではないが、『放置プレイ』を彼は樂しんでゐる...」
これは勿論、テオ=谷澤景六の*『或る回心』の一部である。テオがPCに打ち込む様を、ルシフェルは見てゐた。そして、「やるな、坊主(テオの事)」と、心の中でにやりとした。
* 當該シリーズ第185話參照。
【ⅲ】
(ルシフェルさん-)-(おゝ、君繪か)-(テレパシーで探つたところ、生體叛應があつて。あなたまだ生きてゐるのね?)-(骨だけだがな。余計な肉が取れて身が輕いわい)-(まあ。負け惜しみね)-(儂がいつ負けた)-(ほんの言葉の綾よ。あなた「旧魔界」に帰る積もりはあるの? シンパの人逹が待つてゐるやうだけど)-(別にそんなの儂の勝手だ)-(『魔界健全育成プロジェクト』が五月蠅いわよ。彼ら魔界住民を虱潰しに説得工作しやうとしてるの)-(...)-(それより私逹一味の仲間になりなさいよ。パパからのお願ひよ)-(パパとはカンテラか?)-(他に誰がゐるのよ。お墓の下からでいゝから、大處髙處からの意見が聴けたら、つてパパ云つてるわ)-(アドヴァイザリー・スタッフか。それもいゝな)-(まあ考へといて)-
※※※※
〈病院ぢやお洒落と云はれる俺はねえロン毛に髭のをぢさんなのよ 平手みき〉
【ⅳ】
よもや(魔界盟主最髙の蘇生數を誇る)自分が、こんな小娘(まだ1歳になつたばかりだ)に説得されやうとは、思つても見なかつたルシフェルだつた。で、彼、君繪の説得に應じる事にした。テオにせよ、君繪にせよ、痛いところを突き過ぎで、こんなメンバーに惠まれてゐるなら、どの道カンテラ一味には勝てつこない。
【ⅴ】
「仲本さん、ルシフェルなら君繪とテオで、説き伏せた。あんた方の出る幕はないよ」とカンテラ。-仲本、半信半疑だつたが、さりとて「後の話」を聴かないルシフェルである。「よくぞやつた。君繪ちやんとテオくんは、『プロジェクト』特別補佐官に任命しやう」-「そんな事より、カネ、カネ」(笑)。
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〈ゴミ出しのおはよつスもまた息白く 涙次〉
【ⅵ】
なんとルシフェルが仲間に!! この後の事は、また後日。では、今回の『カンテラ』物語、こゝ迄。バイナラー。




