1 はじまりの日
神に祈っても無駄。
何故なら神は神でしかない。
神は神様の手足に過ぎないからである。
「まさかこんな事になるとはな…」
ここは神様が治める世界。
所謂、天国というものだ。
此処の住人には2通りある。
1つは現世で死んでしまい、此処に辿りついたもの。
死んで此処に来たものに関しては、生まれ変わりか半永久に此処で過ごすかの選択肢が与えられる。
もう1つは元々此処で生まれ育ったもので、コッチに関しては必ず何か職業に就くことが義務付けられている。
ただし100年同じ職を続ければ、輪廻転生の流れに入ることが可能となる。
これは死んで此処で過ごすと選択したものにも適応される。
「さて、今日キミを呼んだのは他でもない。これからは神として仕事をこなしていってほしい…というのは建前で。
キミの力を隠すにはもうこうするしかないって感じだからさ。ま、よろしくね」
こんないい加減な形で大多数の奴らが目指している神になった俺は、神様の部屋から出て神見習所に向かう。
ん?意味がわからない?
神様は俺じゃないのかって?
まぁ、人間が信じて神って存在は喋っていた男。
何でもかんでも叶えられるが、何かと縛りがあり動きが取れない。
その神様の手足となって動き回るのが、今しがた俺が任命された神という存在だ。
突然だがこの世界にも通貨はある。
腹がすく事はないが、ここでの時間を過ごすには娯楽がいる。
娯楽の嗜好は個々さまざまであるが、それを満たすためには対価がいる。
その対価である通貨を得るための手段として一番の人気が神になる事。
「はぁ・・・神1人につき神補佐1人から2人。同じく準神補佐も1人か2人、班員は…最低3人か」
神になったからには「班」と呼ばれる集まりを作る事が絶対で、班員を神見習所から引き抜きにいかなくてはならない。
神見習所というのは神を目指す奴らが行く学校みたいな所だ。
「俺、昨日までここにいたのにな」
神になる方法も二通りあるが、その話は今のところ省くとしよう。
「あ、待ってたぞー。遅刻かと思ったら、まさか神になるとは…」
「ヤマト…」
神見習所でよくつるんでて、確か成績も俺の次に良かったはず。
頭から足までをじっと眺めると、ヤマトの奴は一歩下がる。
「な、なんだよクウカイ。視線が気持ちワリィ…」
「お前俺のトコの補佐な。はい決定」
「まてコラ、オレの意志は全無視か?」
「班員も決まったし帰るか」
「ちょっと待てぇええ!!?」
んだよ、うるせぇな。
他の探しに行くの面倒なんだよ。
あ?準神補佐は入れないのかって?
俺についてこれる神力持った奴が準神補佐レベルにいるわけねぇだろ。
バカかこいつ。
「わかった!準神は諦める!!だがしかし準神入れないならせめて、せめて同僚をください切実に!!!」
「ちっ…しゃーねぇな」
俺はヤマトと並んで所内を歩く。
俺が神になったことは既に広まっているらしく、色んな奴が班に入れてくれと声をかけられる。
ヤマトがどうすると顔を向けてくるが、毎回顔をしかめる俺。
「なぁ、もう18人目なんだけど。何?何が気に入んないわけ?」
「考えてもみろ。俺ら2人の中に入る最後の1人だ。男選んでどうすんだよ、むさ苦しいだろが。このバカ」
驚いてんなぁ…。
男を入れた方が体力的には使えるが…。
華がねぇよ、華が。
声をかけてきた中に女もいたが、明らかに色目使ってくる馬鹿しかいない。
「お?」
「んぁ?どうかしたー…ってライカじゃん」
「あれは、イジメか?」
「じゃね?アイツ周りからの受けいいし、頭もいいからな」
「ほー…」
はっきりとは聞こえなかったが、暴言を浴びせられ最後に平手くらったその女は周りにいた連中が消えると立ち上がった。
服についた汚れを払い、見なかった事にしたくなるような冷たい笑みを浮かべながら。
「よし、あいつにしよう」
「あんな同僚嫌だぁ!つかライカのやつあんなキャラだったのかよっ!!??」
「っ!?」
ヤマトの声で俺達に気付いたのか、あの笑顔のままこっちに向かって歩いてきた。
「何、盗み見してんのよ。見物料ふんだくるわよ、この変態共」
「お前俺のトコの補佐な」
「このタイミングで言う事かよ!?」
一瞬きょとんとした顔になった女は、一般的に言われるであろう可愛い笑みを作った。
「……よろしくお願いします、班長!」
やっぱ女って面倒なんだな…。
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