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11 だんだん(愛媛の言葉のお話)

 さて、松山編の最後は愛媛の言葉のお話をしましょう。


 愛媛には「だんだん」という言葉があります。

 発音としてはだん↗だん↘という感じでしょうか。


「ありがとう」という意味の言葉だそうで、語感としては関西弁の「おおきに」に近いのではなかろうか? と勝手に感じております。


 私が初めてこの言葉を知ったのは、初松山旅行で松山城へ向かうロープウェイに乗った時。


 ガイドのお姉さんが、この言葉を紹介してくださって、最後に「だんだん」と言って送り出してくださいました。


 今回はこの、なんとも温かな言葉にまつわるエピソードを紹介したいと思います。






 これは、まだ私が学生時代の頃。愛媛県、というより一人旅にハマりだした頃のお話です。


 その時はアルバイトと大学の講義の間を縫って、岡山と愛媛を旅行したのですが、生憎最終日に台風が重なってしまいました。


 私はこの時関西に住んでいて、帰り道はバスを予約していたのですが、あまり風が強いと本州と四国をつなぐ橋が通れなくなってしまいます。


 そんな訳で私は急遽旅程を切り上げ、朝一番のバスに予約を変更して関西に戻ることにしました。


 ただ、いざバスの予約を終えてみると、乗車時間までは少し時間があります。


 もちろん雨が振ってますし、乗り遅れなんてしたら一大事ですから、あまり遠くには行けません。

 そんな訳で、私は乗車予定の大街道の近くで朝ごはんを食べることにしました。


 ほとんど初めての旅先でのイレギュラーに不安を抱えつつ、まだ当時は土地勘もなかった松山の繁華街を歩く私。


 まだ8時ごろで、流石に空いているお店もまばら。いっそチェーン店で済まそうか、と思っていた私が見つけたのは1件の小さな定食屋さんでした。


 なんとも古そうな店構えで、お店の前のショーケースにはこれまた年季を感じる食品サンプル。


 お店に入ってみると、優しそうなおばあさんと職人っぽい寡黙そうなお爺さんが迎えてくれました。


 朝はメニューも少なかったはずで、私が頼んだのは卵焼きの定食。


 ホカホカのご飯に、麦味噌を使ったお味噌汁、そしてお爺さんが焼いてくれたふんわりとした卵焼き。


 お膳からは、お出汁の良い香りが広がります。

 うどんみたいな香りだな、と思った覚えがあるので、おそらくいりこを使われていたのだと思います。


 とっても美味しい朝ごはんをいただいたあと、少しばかり台風の話などをお二人とした私。


 そして、お店を出る時におばあさんがかけてくれたのが「だーんだんっ」という言葉でした。


 ロープウェイで聞いたときよりも、さらにゆっくりでどこか可愛い(という言葉が適切かはわからないのですが)とても不思議に魅力的な言葉です。


 定食屋さんのお二人に見送られてバス乗り場へと向かった私。


 結局、バスは予定通りの道を走ることが出来ました。

 横風に弱い大型バスですが、安全に私たちを送り届けてくれた、JRバス四国の運転手さんにも感謝です。






 そんな訳で、松山の方々の暖かさに触れたこの時の旅行。

 それ以来私はますます愛媛、そして松山にハマり、そして「好きやねぇ」と母に笑われるくらいには愛媛を訪れるようになったのです。


 ちなみにその定食屋さんなのですが、もう一度訪れたいと思いつつ再訪することは出来ていません。


 と、いうよりも現地を歩いても、ネットで調べても一向にそれらしきお店が見つからないのです。


 もしかしたら、お二人共かなりご高齢だったので、お店を畳んでしまわれたのかもしれませんが、お元気に過ごしていらっしゃれば良いな、と心から思います。


 素敵に温かい「だんだん」という言葉と共に、私にとって忘れられない思い出となっています。



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― 新着の感想 ―
「だんだん」は、ドラマ『坂の上の雲』で知りました。 ドラマだと発音は平坦だったように思います(放送は約15年前なので記憶曖昧です) 愛媛県のなかでも地域によってイントネーションが違うのかもしれませんね…
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