木乃伊岳(ミイラダケ)
800字の掌編怪談話です。
ビーケーワン怪談大賞に投稿しようかと思い、その習作になります。
初投稿なので勝手が分からず、四苦八苦しております。
自分が、広域消防本部の山岳救助隊に配属されたばかりの頃、先輩隊員から「木乃伊岳」なるものがあると聞いていました。
ごく稀に霧がチリチリと凍ってしまうような氷霧と呼ばれるものが、尾根付近で発生します。通常の霧と混ざると、視界は白一色になります。
ある時、先輩達が、遭難者の捜索のために山に入った時、ちょうどこの氷霧が発生し、救助を断念しようとしました。ところが、氷霧にうっすらと人影が映ったと言うのです。こんな時、心の中は湧き立つのですが、同時に気持ちを静めなければなりません。まずは呼び掛けるのです。それでも人影は微動だにしません。
何度声を掛けても返事が返らないので、もう少し近付いたそうです。100メートルほど離れていたと言う事ですが、その半分に達した時、はっきり見えたと言うのです。
枯れ木のようにしぼんだ四肢、穴のあいた眼窩に、叫び声をあげるように開き切った口。ミイラでした。氷霧を纏った髪がさらさらと揺れていたそうです。先輩たちは、離れた所からそれだけ確認すると下山しました。
翌日、霧が晴れ、ミイラの場所まで行ったのですが、ミイラなどどこにもなく、遭難者が、横たわっていたそうです。
木乃伊岳ではこういう事がよく起こるのだそうです。うずくまるミイラを見れば、うずくまった遭難者。直立したミイラなら真っ直ぐに横たわった遭難者。必ず見つかるのです。一度など、逆さまのミイラが出た時は、崖に引っ掛かった遭難者だったらしいのです。
それで、とうとう自分も見たのです。動かないミイラが、あちこちに立っていたんです。口を開け、霧に煙る髪をなびかせ、こちらを向いていました。先輩達が居た場所です。
自分の他には、誰も戻りませんでした。
夏も近い事ですし、少々肌寒くなるのもありかなと。
どうでしょう、ちょっとは寒くなる? それとも全然?
あまりに力量不足で、稚拙さは目に余るかもしれません。ご容赦のほどを!
その上、厚かましいことですが、感想など頂ければ幸いに思います。